118 唯、とりもつ。
「えっと…はい。これで、以上になります。」
苦笑いのお姉さん。
「ありがとうございました。」
「いえ、ユイさんとガーネットさんのおかげで…漁師さんたちも助かりました。ありがとうございました。」
やっぱりお礼を言われると…なんだかむずがゆい気持ちになる。
もちろんうれしいんだけど、気恥ずかしいというか…なんというか。
ちなみにシヤークが入ってる特製「生け簀」は、しばらくそのままということになってる。
無限の魔法、こういうときも役に立つ。
一応、船いっぱいにとってもらったんだけど…7割ほどはまだ海のなか。
必要なタイミングで漁師さんたちが獲って、出荷してくれることになった。
―――あんまりとりすぎても…消費が追い付かないもん。
食いしん坊な私でも、あの量はさすがに食べられないし。
それに…魔法で鮮度維持はできるとはいえ、やっぱりとれたての付加価値ってすごいもんね。
『ぴよ!?』―――ユイちゃんが…ムズかしい言葉使ってる!?
「…。」
なんだか失礼なこと言われた気がするけど、いつものことだし…ジト目で返しといた。
「ユイ…あの…そろそろ…?」
「?」
チラッチラッと外の方を見てるガーネット姫。
「あ、そっか。じゃあすみません、また来ます。」
そのままドタバタとギルドを後にした私たち。
そのままキャンプ場の倉庫に一直線。
倉庫を開け、なかのカゴをガサガサとあさるガーネット姫。
―――こんなにソワソワしてるガーちゃん…初めて見たかも。
いつも冷静沈着なガーネット姫を焦らせる存在と言えば…そう。
「プラちゃん!」
『…ぷや…』
あ、拗ねてる。
「うぅ、ごめんね。よしよし…ほら、おやつですよ?」
『ぷや…』
「ユイ…どうしましょう…。」
食べ物でごめんなさい作戦が失敗し、おろおろと半泣きのガーネット姫。
ぷにぷにのスラ○ムに向かって、必死に話しかけてる。
―――かわいい…。
プラちゃん、海はさすがに危ないということでお留守番になったんだけど…ちょっと寂しかったみたい。
口をとんがらせて、さっきからガーネット姫の方を向いてくれない。
そのうち元に戻るとは思うんだけど、半泣きのガーネット姫を放っておくのも気が引けるし…。
「プラちゃん?」
『ぷやや?』
私が話しかけると、ちゃんとこっち向いてくれる。
別に私がガーネット姫より信頼されてるってことじゃなくて、シンプルにガーネット姫に構ってもらいたいんだと思う。
要するに、あまえんぼうさんなプラちゃん。
「よいしょっと…。はい。」
『ぷや?』
そのまま優しく持ち上げて、ガーネット姫の手のひらへとお引越し。
「プラちゃん…。」
『ぷや…ぷやっ!』
胸のなかへとびこんでいったプラちゃん。
ゆっくりと抱きしめて、思いっきりよしよししてるガーネット姫。
もうしばらくこの町にいることになりそう、そう思ったある夏の日。
■
荷物の片づけを済ませて、もう一度ギルドにやってきた私たち。
目的はみっつ。
まずは、今日泊まるためのキャンプセットを借りること。
―――よいしょっと…。
これは数分で終了。
次は…ギルドと相談タイム。
プラちゃんのこと…どうするか考えなきゃいけない。
本当は連れていけるのがベストなんだけど、出現エリアという制限のため…やむなく断念。
―――バグステータスも万能じゃないか…。
フリルさまも一生懸命考えてくれてたみたいなんだけど、やっぱり無理そうと伝えられた私。
ガーネット姫には言いづらかったけど、言わなきゃだもんね。
友だちだもん。
「このプラちゃん…いえ、プライアントを預かっていただけないかと思いまして。」
そう切り出したガーネット姫。
受付のお姉さん、目が点になってる。
「えっと…モンスター…ですよね?」
「はい。でも、とっても優しくてかわいいですよ?」
「しょ…少々お待ちください。」
そう言って後ろの「のれん」をくぐっていったお姉さん。
…営業スマイルがひきつってた。
―――さすがに無理かな…?
フリルさまの羽とガーネット姫のペンダントを持ってるプラちゃん。
モンスターに対しては「フリルさまの加護」で、冒険者に対しては「権力」で対応できる…ある意味最強のプラちゃん。
いろんな意味で安全だとは思うんだけど、もしものことがあると困る。
それでギルドに預かってもらおうってことになったんだけど…やっぱり難しかったかな。
「えっと…モンスターを預かってほしいと希望されているのは…?」
「私です。」
奥から登場、偉い人。
紺のスーツでビシッと決めてて、クロックさんとはまた違った威厳を感じてる私。
王城で出会ったお役人さんに雰囲気似てるかな?
―――…ん?お役人さん…?
それ、まずくないかな。
「…!?」
ほら。
「…あの…大変に失礼かと存じますが、お会いしたことが…?主に王城などで…。」
やっぱり。
「い、いえ!気のせいだと…思います、はい。」
テンパりまくってるガーネット姫。
どうやら面識あったみたい。
私は苦笑い。
受付のお姉さんはきょとん。
偉い人は冷や汗。
「わかりました。謹んで…いえ、責任を持って、お預かりさせていただきます。」
「ありがとうございます!」
「し、支部長!?よろしいんですか?」
「何も問題ない。何も。」
よかった。
権力は強かった。
『ぴよ…?』―――権力の濫用…?
「こほんっ!」
ちょーっと静かにしてようか、フリルさま?




