表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/156

117 唯、報告する。

 砂浜を抜けて、街道までたどり着いた私たち。

 目指すはハナミズキ・タウンのギルド支部。

 大きな一歩を右へ。


「ユイ!ギルドは…こっちです。」

「あ…あはは…。」


 …左へ一歩。


 しばらく歩くと「ギルドはコチラ」って書かれた看板が見えてきた。

 ここまで来ればわかる。

 もう迷わない。

 さっきは…逆から来たからわかんなかっただけだもん。


―――…。


 そんな適当な言い訳をしつつ、サンダルについた砂をパサパサと払う。


「よし…おっけ。」


 ゆっくりとギルドのドアを開ける。

 慣れてはきたんだけど、やっぱりまだまだ緊張するこの瞬間。

 例えるなら…そう、職員室に入るときみたいな感じ。

 怒られるわけじゃなくても…なんか緊張したよね、あの空間。


「こんにちは。」


 ギルドに入った瞬間、受付のお姉さんと目が合った。

 一拍の静寂。

 次の瞬間。


「ユイさんにガーネットさん!」

「は、はいっ!」


 勢いにおされてすっごく元気な返事。

 それこそ中学生以来な気が。


「大丈夫でしたか!?海にモンスターがっ!」


 てんやわんやのお姉さん。

 よくみると…持ってる資料も上下逆だし、必死に何か書こうとしてるペンの先は出てない。


「あの!大丈夫です。解決しましたので。はい。」


 報告のタイミングを失った私にかわって、ガーネット姫が割って入ってくれた。


「そ…そうでしたか…。よかったです。カエデの町のギルドに連絡したんですが、ユイさんという名前を出したとたん『任せておけば大丈夫』の一点張りで…。」


 困惑のお姉さん。

 てんやわんやの原因、私だった。

 今回の件で残業になっちゃったみたいだし、なんだか申し訳ないです…。


「なんだかすみません…。」

「いえ、仕事ですので。」


 というわけで結果を報告。


 報告…とはいっても「シヤークがいっぱいいて、それを捕まえました。お魚もきっと戻ってきます。」で終わりなんだけど。

 詳しいことは漁師さんたちにお任せせざるを得ないし、私たちから言えることはこれくらい。


「な…なるほど…。つまり…数百匹のシヤークがいて…?」

「はい。」

「あんな狂暴なモンスターを、ユイさんがたったひとり魔法で追い回して…?」

「はい。」

「あんな広大な海で、魔法の生け簀に閉じ込めたと…?」

「…はい。」

「それを…漁師さんたちが獲ってみえたと…?」

「…はい。その通りです。」


 特に間違ってない。

 事実そのもの。

 みんなで海の上歩いて帰ってきたことは…言ってないけど。


「任せておけば大丈夫の意味…今わかりました…。」

「あはは…。」


 苦笑いを返すしかない私。


「えっとですね…シヤークの捕獲ということなんですが、依頼が公開されていないので…ギルドとしては依頼外基準の報酬しかお支払いできないんですが…。」

「そうですか…。」


 そりゃ残念。

 依頼外の報酬は、普通に依頼が公開されている場合の…3分の1ほどになっちゃうらしい。

 まぁ…シヤークいっぱい獲れたし、お魚さんの住処も守れたし。

 それだけで十分。


「ミヨさん!今日の伝票(でんぴょう)です!」

「あ、コウスケさん。お疲れ様です。ありがとうございます。」

「今日はすごいですよ!じゃあ!」


 突風のごとくギルドを駆け抜けていった男の人。

 その風圧でいろんなものが飛び散ったんだけど、きっと気にしてはダメなんだと思う。


「あ…すみません…。コウスケさん、いつもあんな感じなんです…。市場の経理担当の方でして。取引の日計を届けてくださってるんですけど…。」

「そうなんですか…あはは。」


 何もしないのも変なので、散らばった資料を集めるガーネット姫と私。


「すみません、あとはこちらでやりますので…。」

「いえ、大丈夫ですよ。」

「…えっ!?」


 なんか予感がする。

 びっくりに備えよう。





「あの…ユイさん?」

「はい。」


 生唾(なまつば)ごくり。

 ちょっと緊張の瞬間。


「えーっとですね…シヤークの捕獲名義(ほかくめいぎ)がユイさんになってまして…。」

「?」


 さぁさぁ皆さんご一緒に。

 ちーんぷーんかーんぷーん。


「あっと…捕獲名義というのはですね、モンスターを無力化した人を示すものです。つまり、ユイさんが今日市場に運び込まれたシヤーク121匹、ユイさんが捕獲されたシヤーク107匹…しめて228匹分の捕獲者になっているということなんですが…。」

「えっと…?」


 説明してもらってあれだけど、やっぱりよくわかんない。


「つまり…えっと…こういうことです。」

「へ?」


 机にドカッとおかれた金貨。

 こういうときだけ目ざとい私。

 ざっと…7万ゴールドくらいかな。


「取引価格の1割が捕獲者に支払われますので、こちら…7万5231ゴールドになります…はい。」

「…。」

『ぴよよ…』―――ユイちゃん…。

「ユイ…。」


 この世界に銀行はないので、もちろんにこにこ現金払い。

 さて、またしても大金を手に入れてしまった私。

 実は…使うあて、もう決めてるんだけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ