116 唯、お詫びを考える。
漁師さんたちの「アップテンポな歌」につつまれて、テンションあげあげで歩く海の上。
もちろん忍者みたいに水の上を歩いてるわけじゃなくて、氷魔法で道を作ったわけだけど。
「ガーちゃん、暑くない?」
隣を歩いてるガーネット姫に声をかける。
私はバグステータスのせいというかおかげで、暑さがよくわかんない…かもしれない。
ひんやり冷たい氷の上ではあるけど、空からは猛烈すぎるくらいの日光がそそいできてる。
無理させてたら大変だし…さっきから定期的にこの質問をしてる。
「大丈夫ですよ。帽子はちゃんとかぶってますし、フリルさまがひんやりして気持ちいいですし。」
『ぴよよ!』
「そっかそっか。」
いつも通りな優しい笑顔のガーネット姫。
かわいい。
そんなガーネット姫の腕のなかにすっぽりうまって、えっへんなポーズをとるフリルさま。
かわいい。
はぁ…もふもふしたい。
「ユイさん…すいません、帰り道まで用意してもらって…。」
後ろから声をかけられた。
ユウサクさんだ。
「いえ。即席ジェットコースターでひとっとびも考えたんですけど、こういうのも良いかなって思いまして。」
「えぇ…まさか海の上を歩くことになるとは…。」
苦笑いを浮かべ、後頭部をポリっとかいたユウサクさん。
今みんなで歩いているのは、砂浜まで数百メートル続く氷の道。
船で来てもらったから、帰りは船に乗せてもらう予定だったんだけど…それができない事情が発生。
―――…。
「シヤーク捕獲大作戦」が終わった後、その喜びも束の間…突然始まったのは漁師さんたちの緊急会議。
議題は「シヤークとりすぎて船いっぱい…どうやって帰る?」という…。
それでいろいろと考えてはみたんだけど、100人近い漁師さんたちと一緒だと…この方法しか無理そうだった。
―――説明が大変かなって思ったけど、結構すんなり受け入れてもらえたし。
また世界の終わりだとか、天変地異だとか言われるかと思ったけど…。
私のバグっぷりに慣れてもらえたみたいで、こんな道をつくってもあんまり驚かれなかった。
『ぴよ…』―――それは…ツッコミを放棄されただけだと思うけど…。
そ、そんなことないもん。
皆さんうつむき加減だったけど、きっと水面に反射した光がまぶしかっただけだもん。
「しかし本当に助かりましたよ。シヤークが襲ってこないとわかれば、魚たちも帰ってきてくれると思いますし。本当にありがとうございました。ガーネットひ…ガーネットさん、ユイさん。」
「いえ…冒険者としてお仕事しただけなので…。」
ギルドから報酬ももらえるみたいだし。
そもそもくいしんぼうな私…お魚が食べられなくなるなんて、耐えられないもん。
そう、これは全部私の食欲のためにやったこと。
えへへ。
「いやー、そんなことないさ。それにしても最近の冒険者はすごいんだな。俺の孫も冒険者になりたいって言ってるが、こりゃ…将来がますます楽しみだな!わははっ!」
おじいちゃんの目になったゴウゾウさん。
ゴウゾウさんは漁師さんたちのリーダー格。
ちょっと…強面だけど、親分肌でとっても優しい人。
「そうそう、うちの孫もおんなじだ。ユイさん、ガーネットさん、今度稽古つけてやってくれよ!」
「おー、そりゃ良いな!お?俺たちも教えてもらっといたほうが良いんじゃないか?またシヤークが出てきたとき、どうにもならないんじゃあれだし。」
「そうだな…。」
急に視線が集まっちゃった。
どうしよう…人に教えられるようなことなんてない。
だって私、バグなんだもん。
―――でも。
私はこの展開に慣れてる。
そして受け流し方も知ってる。
「えっと…実は、ヒマワリの町で訓練が行われてまして。そっちだと冒険者の基礎からいろいろと教えてもらえるので、おすすめです。はい。」
優しい笑顔を添えて。
そう、丸投げ。
「ヒマワリの町か…。そこで教えてくれる御仁は、ユイさんやガーネットさんみたく強いのかい?」
えーっと…。
「クロックさんというギルドマスターです。それにハゼンさんというとっても強い門番さんもいますので、訓練のレベルも高いですよ。」
なんてったって魔法軍の元幹部だもん。
強い…はず。
「それは良いな!そのクロックさんとユイさんが師弟関係ってわけか!」
「えっと…はい。」
多分、想像されている師弟関係じゃないと思うけど。
主に「師」と「弟」の立場が…。
「魚が戻るまでしばらくあるだろうし…これは何人かずつで稽古つけてもらいに行くか!」
「おう、それが良い!この町には冒険者がほぼいないからな。俺たちでなんとかできること…増やしとかないとな。」
どうやら話がまとまったみたい。
よかった。
そして。
―――クロックさん…ごめんなさい…。
お詫びにシヤーク1匹おくります。
…2匹…いや、3匹おくります。
■
そんなこんなで歩くこと数分、無事に浜辺へと到着した私たち。
漁師さんたちは出荷の準備にてんてこまいということで、ここで一旦のお別れ。
「夕方には終わるはずだから、その頃に浜辺に来てくれ。今日は祭りだ!わははっ!」
「はい。お邪魔します!」
なんと砂浜でバーベキュー大会を開いてもらえることになっちゃった。
町の人たちも参加しての、とっても大きなものになるみたい。
―――これは…おなか空かせとかないと!
もうよだれが止まりません。
どうも、食欲は正義。22歳のユイです。
「ユイ、何か…言いましたか?」
「へ?あ、なんでもないよ。ギルド、行こ!」
「はい。プラちゃんも待ってますし。」
砂浜のもきゅもきゅ感に海を感じながら、町の方へと歩きだした私たち。
お魚いなくなっちゃった事件は一応の解決をみたわけだし、冒険者としてギルドには報告しとかなきゃいけない。
お留守番のプラちゃんも首を長くして待ってるはずだし。
―――ところで、スラ○ムに首って…あるのかな?
わかんない。




