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110 唯、道具を取りに行く。

「よい…しょっと。」


 とりあえず座席を回収して、コースの上へとよっこらせ。

 座席の間には海水も入っちゃってるし、結構重たいと思うんだけど…そこはバグステータスのなせるわざ。

 そのまま私も座席に戻る。


「しかし…困りました。この海域(かいいき)に シヤーク は出現しないはずなのですが…。もう少し沖の方ならあり得ないことも…いや、あの数はまず…。」


 困惑の表情を浮かべるユウサクさん。

 ガーネット姫も(うつむ)き加減で頬に右手を当ててる。


「お魚がいなくなっちゃったのも、やっぱり シヤーク が原因ですか?」

「そう思います。 シヤーク は荒くれものと呼ばれる狂暴(きょうぼう)なモンスターですから、魚も安心して住めないでしょう。」


 お魚さん、追い出されちゃった感じか…。


「しかし困りましたね…。海の中で戦うのは難しいですし…。」

「そうですよね。 シヤーク もとれないことはないのですが、あれだけの数がてんでばらばらはびこっているとなると…。」


 探知魔法(たんちまほう)の画面を出しなおしてみたけど、さっきよりも数が増えてる気がする。

 そこらじゅうにモンスターを示す赤色のマーク。

 これであっちゃこっちゃ泳ぎ回ってるみたいだから、捕まえるのも大変な気がする。


―――ん…?とれる?


 私のセンサーが急反応。


「ガーちゃん…あのさ…食べ…れるの?」


 首だけのばして、ぼそぼそ小声で聞いてみる。


「?」


 コホン…伝わらなかったみたい。

 距離を縮めてくれたガーネット姫。


「 シヤーク って…もぐもぐできる?」

「えーっと…どうなんでしょう?ユウサクさん、 シヤーク っておいしいですか?」


 わぁお、どストレート。


「はい姫さま。 シヤーク は見た目こそ…あれですが、臭みもなく焼くと絶品だそうですよ。」

「だそうですよ、ユイ。そういえば…昔食べたことがあったような気も…。」

「!」


 そうとわかれば作戦変更。

 魔法でもって海中どっかんどっかん作戦が(ひらめ)いてたけど、食べられるとなれば話は別なのです。

 現作戦を破棄、すぐに作戦を再構成。


「あの…うまく誘導すれば、とっていただくことってできますか?」

「それはもちろん。 シヤーク はかなり高値で取引されますからね。シヤークがいなくなれば、魚も戻ってくるはずですし…漁師としては願ったりかなったりではありますが…。」


 誘導なんてできるんですか?みたいな視線を返された。

 それができるのが、そう、バグステータス。

 というわけで。


「ちょっと試してみたい方法があるんですけど…。」


 というわけで新しい作戦の説明開始。

 さっき海に飛び込んじゃったときも氷魔法が使えたってことは、海中でも魔法は使えるはず。

 幸か不幸か、この辺のお魚さんたちは一匹残らず追いやられちゃってる現在。

 残ってるのはモンスターだけ。


―――となれば。


 バグステータスでもってやりたい放題できる。

 えへへ。





「…という感じなんですけど、どうですか?」

「そ、そんなことができるんですか?いえ、できるとすればありがたいのですが…私ひとりではなんとも。漁師仲間とモンスター専用の道具も必要ですし…。」


 うーん、論より証拠ということで。

 いざ氷魔法を展開して、桟橋(さんばし)へ向かってコース作成。

 座席も改良してあるので、何人で乗っても大丈夫。


「道具、取りに行きましょう。漁師の皆さんにも協力していただいた方がありがたいですし。」


 ノリノリなガーネット姫が、ユウサクさんの背中をポンポンと押してる。


「えっ!?」

「ささ、乗ってください。あ…船は…私持ちますね。」


 私も流れにのって、ノリノリな感じで。

 よっこらしょっと船を持ち上げて、操縦席に座った私。

 船の幅的に、コースを筒状にするのは諦めよう。

 旧式のコースに戻して再構築。


 こういう計画性のなさが私の真骨頂(しんこっちょう)なのです。

 えっへん。


「ユイ、お願いします。」

「うん。ゆっくり行くから安心してね。」

『ぴよよ…』―――ボ、ボクは空から行くよ…。


 すーっと離れていったフリルさま。

 しっぽを(つか)んじゃおうかと思ったけど、さすがに突っつくだけでやめといた。


「さ、さっきのですよね!?これ!?じぇっとこー…。」

「そうですよ?」


 方向よーし。

 進路クリア。

 海にじゃぼんしたことをすっかり忘れてる私、軽やかに流れるように出発準備完了。


「では、出発しまーす!危ないですので、しっかりおつかまりください!」

「あのっ…!?」


 風魔法を発動してゆっくりと加速してく。

 ビュンという風をきる音、氷の上を(すべ)るシュンという音。

 潮風(しおかぜ)の匂いにつつまれて、なんだかもとの世界でのランデブーを思い出した。


―――懐かしいなぁ…。


 まだ写真とかとってたっけ。

 なんかその…捨てられないんだもん。


「これは夢…これは夢…これは夢…。」


 呪文(じゅもん)のように繰り返してるユウサクさん。

 さすがに悪かったかな…。


「ユウサクさん?安心してください。私も何度も乗せてもらっていますから。」

「ひ、姫さまがですか!?…では…。」


 今回はユウサクさんも乗せてるので、自転車よりもちょっと速いくらいを維持(いじ)してる。

 場所が場所なので見渡すかぎりの海、海、海だけど、異世界の海…非現実感があって結構好き。

 ちらっと振り返ってみると、ユウサクさんが恐るおそる目を開けてた。


「す…すごいですね!これ!なんでしたっけ?」


 声のトーンが三段階くらい上がったユウサクさん。

 どうやら楽しんでもらえてるみたい。

 というわけで。


「私特製の即席ジェットコースターです!」


 鼻高々に宣言。

 …座席を作ったのは、クロックさんだけどね。

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