109 唯、島をつくる。
素直に褒められたと解釈するのかはさておいて、とりあえず海中に潜むモンスター「シヤーク」の詳細情報を読んでみることにした私。
―――狂暴…か。
鋭いキバを持ってて狂暴な性格…ちょっと怖いけど、バグステータスな私にとっては何の問題もなし。
キバだろうがツノだろうが、どんとこい。
「ん…?なんかある。」
探知魔法のバーを動かしていると、正方形の…なんだろう、模様みたいなのが表示された。
ほぼ海底くらいの深さで、場所はここから数百メートルくらい北西。
大きさは…そうだね、私の感覚だと10メートル四方くらいかな。
結構大きい。
―――あれ?
ポチポチとタップしてみたけど、詳細がちっとも表示されない。
なんかオレンジの警告マークみたいなのが出てくるだけで、肝心かなめの情報が出てくれない。
『ぴよ?』―――どうしたの?
「いや、ほら…これさ、何だろうと思って。」
『ぴよ』―――どーれ?
画面をゆっくりと覗きこんだフリルさま。
アホ毛がポヨンポヨン動いてて、無性に突っつきたくなる。
―――嫌だろうから…しないけど。
私もそうだからわかるけど、アホ毛を触られると…なんていうか変な感じする。
足の裏を触られたときみたいな、ソワソワってする感じ。
『ぴよ…』―――なんだろうね…?
「フリルちゃんも知らないんだ。」
『ぴよぴよ』―――聞いたことない。でもさ、絶対自然にできたものじゃないよね。
「うん。思いっきり正方形だもん。」
目で見る限り、直角もちゃんととれてる。
『ぴよ…』―――正方形…。ユイちゃんが…正方形…知ってる。
なんかまた良くないことを思われてる気がする。
さっきまでの甘えん坊フリルさまはどこへやら。
―――うーん…ハラグロなフリルちゃんもかわいいけどね。
どっちかなんて選べない。
そう、パフェのアイスと生クリーム…どっちから食べるか問題みたいな感じなのです。
「あ…この動いてるのって。」
『ぴよ!』―――あ、ガーネットちゃんだ!
どんどんと近づいてくる船のマーク。
画面をタップしてみたら、ちゃんとガーネット姫の詳細情報が表示された。
―――…。
その…えっと…女の子にはヒミツがたくさんあるんです。
フリルさま、見ちゃダメだよ。
『ぴよ?』
私もがんばって忘れるから。
■
フリルさまをももふもふすること数分、ギコギコという音が近づいてきた。
ノリノリで振り返ってみると。
「ガーちゃん!」
船首に乗って、むぎわらぼうしをぎゅっと掴んでいるガーネット姫。
ふぁっさぁって感じで風に髪が揺れてて、不意に飛び上がった水しぶきもまた…。
―――良き。
こほん。
かわいいは正義だよね。
うん、かわいいは最強、無敵。
「…ユイ!大丈夫ですか?」
船がスピードを落として、私の隣にぴったり停止した。
フリルさまはというと、船に興味津々なご様子…船の上をあっちへこっちへ飛び回ってる。
木製なんだけど、ところどころに金属の補強がされてる船体。
そうだね…小型の屋形船くらいの大きさかな。
「うん。あ…えっと…?」
操船してくれてるおじさんと目が合った。
スキンヘッドにハチマキ姿、海の漢感満載のダンディ。
ぺこりと頭を下げて、ガーネット姫に視線を送る。
「ユイ。こちら、漁師のユウサクさんです。」
「はじめまして。漁師のユウサクと申します。」
「は、はじめまして。冒険者のユイ…と申します。」
敬語の波に乗って、慣れない挨拶をした私。
噛まなかったの、ほんと奇跡。
「ユウサクさん。私が言うのも変ですが…もう少し柔らかい感じで大丈夫ですよ?」
「し、しかし…姫さま…。」
「…?」
今、姫さまって呼んだよね。
「ユウサクさんは、お城に出入りされてる漁師さんなんです。」
「あ…そうだったんですか。」
よかった。
いつの間にか正体ばれたのかと思って、ちょっとひやひやしてた私。
「はい。姫さまのお誕生会の時には…。」
「コホン!」
「…すみません。」
なになに、めっちゃ気になる。
聞かないけど。
「それで、何か…わかりましたか?」
「うん。シヤークっていうモンスターがいるみたい。」
「シヤークが…ここにいるのですか!?」
ユウサクさん、びっくり仰天。
やっぱり異常事態なんだ。
「は、はい。さっきまでこの下に…えっと…。」
探知魔法の画面をあっちゃこっちゃ操作して、海中の様子を表示する。
ちょっと移動はしてたけど、シヤークの群れを見つけた。
「本当だ…しかし、これすごいですね。さすが姫さまのご友人…。」
「そうです!ユイはすごいんですよ!」
「あ…あははは…。」
さすがにバグステータスの自覚はある私。
否定もできず、苦笑いを返すしかなかった…。
「ユイさん…あの…さっきから気になっていたのですが、これは…?」
「これ…?あ、これは私特製のジェットコースターです。」
そういえばジェットコースターの上だった私。
最初は壊れたドアを座席にしてたけど、今ではすっかりそれっぽくなってる。
―――ほとんどクロックさんのおかげだけど…。
座席の増設とか…全部丸投げしたもん。
「じぇっと…こーすたー…?」
「えーっと…空を飛ぶ船みたいな感じですね。ほら、こんな感じで!」
そのまま風魔法でもって急加速。
えっへんと鼻高々で…海に飛び出した。
「ほぎゃっ!?」
「ユ、ユイ!?大丈夫ですか!?」
『ぴよよ!?』―――ユイちゃん!?
コース途中までしか作ってないの…忘れてた。
ロケットみたいに発射されちゃった私。
おっちょこちょいもここまでいくと…悲劇でしかない。
「だ、大丈夫!」
海にじゃぼん。
もとの世界なら焦りまくりなとこだけど、今は魔法が使える私。
冷静に魔法を使って、氷の島づくりをえっせらほっせら。
投げ入れてもらえた浮き輪にしがみつきつつ、そのまま島の上へ。
「ほへ…危なかった…。」
「ユイ…。」
『ぴよよ…』―――よかった…。
「大丈夫でしたか?気をつけてくださいね。」
かけつけてくれた皆さん。
ごめんなさい。
「心配かけてごめんなさい…ん?あ、そうだ!」
氷魔法を使って、ひらめいた。
怪我の功名ってやつかな。
えへへ。




