78. レンガの洞窟Ⅴ~秘宝~
〇前回のまとめ
・隠し部屋の中でポイズンスネークと遭遇し、戦闘に入った。
・強敵を前に、仲間たちは次々と倒されていく。
・最後は両パーティーの連携で、ポイズンスネークを倒すことができたのだった。
激闘の末に何とか倒したポイズンスネークをエリンがハンターバッグに収納すると、ゴゴゴゴゴゴという音と共に隠し部屋の扉が再び開かれた。
ハンターバッグは複数の物を同時にいれた場合、所有者の意志次第では分離して取り出せるようなシステムになっていた。
そこで、ポイズンスネークの咽喉に突き刺さっていた槍だけを取り出し、エリンはラカムに渡した。
「はい、これ。お返しします」
「お、おう。…………でも、ちょっと触りたくなかったりして」
「ハハハ…………」
そりゃあ一度大蛇の口の中に入ったものだ。エリンは念力で操作したから直接は触れていないものの、魔法使いでない槍士のラカムは素手で握ることになる。
とてもじゃないけど触りたいとは思えない。
「そういえば、宝箱はどこにあるんだよ~?」
「お、そうだったり! 忘れるところだったりして」
槍に触れるのを躊躇っていたラカムだが、トルペの言葉を聞くと即座に手に取った。
「たしかにそんなことを言ってた気がするわ。宝箱、一体どんな物が入っているのかしら?」
「お宝、すごく興味があります!」
ダーシャとジェイラも興奮している様子。
エリンはというと、スケボーで部屋を飛び回って探し始めていた。
「ガウガウッ!」
「あ、チェレンが何か見つけたみたいです。行ってみましょう!」
チェレンがいたのは、ポイズンスネークがずっと座り込んでいた場所だった。長い間動いていなかったのか、周囲とは色が変わっている。
ジェイラたちが駆け寄る間にもチェレンは地面を掘り始め、やがてその手は何か硬い物にぶつかった。
「あ、これは…………!」
チェレンに促されてジェイラが埋まっていた物を拾い上げた。
それは、オルゴールケースのような小さな箱だった。
「あれれ、何だか小さいよ~」
「無駄骨」
「まだ分かんなかったりして。実は白金貨が詰まってたりして」
白金貨。それ1枚で金貨100枚の価値がある。高位貴族などの超富裕層以外はまず目にすることもない。まあ、100万円札があったところで使う人はそうそういないよね。
「ジェイラ、開けてみてちょうだい」
「は、はい…………」
恐る恐るといった感じで、ジェイラは箱の蓋に手を当てた。
鍵はかかっておらず、ジェイラの小さな力でも箱は簡単に開いた。
「「「「「おおっ!!」」」」」
開かれた箱の隙間から、眩い光が放たれる。
白くて青っぽい光に、一同は驚嘆の声を上げた。
「こ、これは…………?」
「何だか、すごく綺麗ね…………」
そして、中にしまってあったものをジェイラが手に取った。
小さな水毬のようなペンダントだ。この部屋を作り出した人が隠しておいたのだろうか。
「なんなんだよ~、これはよ~」
「ハズレ」
『トリコロール』はそのアクセサリーに見惚れてしまった。ところが、少女たちとは対照的に『ブラック・ネイル』はウンザリといった表情。
彼らにとっては価値のないものらしい。
「……ねえ、これは何なの? アンタたちはなにか知っているみたいだけど」
「あー、これは『アプサラスの涙』だったりして」
「「「アプサラス?」」」
エリンたちは異口同音にラカムの発した単語を繰り返した。
ラカムは肩をすくめながらも説明してくれる。
「水魔法の効果を上げちゃったりするって言われたりして。ま、俺様たちのパーティーに魔法使いはいないからな、オークに金貨だったりして」
「でも、王都の魔法使いなら高値で買ってくれるかも――」
「そう。それなら、これはエリンが持つべきね」
トルペがペンダントに手を伸ばしたが、ダーシャはそれよりも早くジェイラからひったくった。
そして、エリンのところへ行って首にかけてやった。
「どうかしら、エリン。何か力が湧いてくる感じとかある?」
「う~ん。あんまりよく分かんないや」
「せっかくですし、試してみたらいいんですけどね」
「うん。今度モンスターと出くわした時にでもやってみるよ」
エリンは水毬を撫でたり光にかざしてみたりした。
女の子っぽいことしてる自分に気分が高揚してるのはナイショ。
「ちぇ、結局俺たちは損しかしてないのかよ~」
「骨折り損」
「アンタたちは何もしてないでしょ。アタシたちが闘っている間だって、ずっとこそこそ隠れてたじゃないの」
たしかにポイズンスネークのトドメを刺したのは『ブラック・ネイル』のラカムだ。だからといって、その手柄をトルペたちが語るのは筋違いだとダーシャは思っていた。
「ところで皆さん。私たちがこの洞窟に来た本来の目的を忘れていませんか?」
「「あ!」」
ポイズンスネークを倒したことで気が緩み、アプサラスの涙に心を惹かれていたせいで、すっかり頭から飛んでいた。
かく言うジェイラも同じだったようで、チェレンだけがやれやれといった顔。
「そうよ! アタシたちはラルスを助け出すためにここへ来たんだわ。ジェイラ、エリン、急ぐわよ!!」
「おーっ!!」




