↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
73/110

73. 悲劇の足音

〇前回のまとめ

・帰路、黒装束の連中に襲われた。

・ジェイラはエリンを狙った児童誘拐犯と予想。

・機転を利かして何とか逃げ出した。


 ソフィー誘拐未遂事件から3日後。

 あれから大した出来事もなく、世間はまた元の日常へと戻っていた。


 この日もいつもと同じようにモンスターと闘い、ギルドでお金をもらってから『森の妖精』へと食事に来ていた。

 せめて少しでも売り上げに貢献することで、働いているソフィーが借金を返済するための資金を増やしてほしいとの思いもあった。


「やあ、みなさん。今日も来てくれたんだね」

「こんばんは、マスター。ソフィーさんの調子はどうですか?」


 こちらとしては、天気の話をする感覚で尋ねただけだった。

 しかし、マスターは即答しなかった。なにか躊躇っているように見えたが、やがて話してくれた。


「…………それが、今日はまだ店に来ていないんだ。いつもならとっくに働いている時間だというのに。

 以前にもお母さんの体調が優れずに休んだことがあったのだが、その時は事前に連絡があったんだ。何か、良くないことが彼女に起こったのかもしれない」


 マスターの言葉に、エリンたちも思わず顔を見合わせた。

 先日誘拐されかけたばかり。またアイツらが現れたのかもしれない。

 そう思っていた矢先だった。


ガチャン

「マスター、大変です!!」


 カフェのドアが勢いよく開けられ、ソフィーが駆け込んできた。

 走ってきたのか肩で息をしており、顔色は優れない。その手には、彼女のものよりも小さな帽子があった。


「ソフィー、遅かったじゃないか。君に何かあったんじゃないかと心配していたんだ……。それで、“大変”って一体どうしたというのかね?」

「お、おと……が…………」

「落ち着きなさい。これでも飲んでから……」


 マスターはエリンたちに出すはずだった水を渡してソフィーを落ち着かせようとする。しかし、ソフィーはそれを拒んで叫んだ。


「弟が、弟がいなくなったんです!!」

「な、何だって!?」




   ♦




 話は少し(さかのぼ)り、フェヘールシティでの一幕。


「おいお前ら、こんなとこにいたのか。さっさと行くぞ」


 それが少年の第一声だった。

 喫茶店でくつろいでいた仲間たちは、駆けつけてきた少年の言葉にポカンとした顔。


「……行くってネストル、どこへ行くでやんすか?」

「ケークだ。さっきギルドに行ったら、ケークから来たハンターが、白、赤、青の3人娘を見たって話してた。白ってのはエリンに間違いない。銀髪だって言ってたからな」


 眠そうな顔をした少年は、耳をかきながら天を仰ぐ。


「またあの子のことなの~。やめときなよ~、どうせもっと嫌われるだけだよ~」

「何言ってんだエフィム。アイツが俺のことを嫌ってるわけがないだろ」

「「え……」」


 大柄な少年の言葉に、座っていた2人は顔を見合わせて目をパチクリ。


「……ネストルも見たでやんしょ、エリンさんがあっしらを見た途端に逃げ出したところを」

「ああ、いきなりモンスターが現れてエリンを連れて行きやがった。あの野郎、今度見つけたら俺が真っ二つに叩き斬ってやる!」

「がんばってね~。オラたちはもう少しフェヘールでのんびりするよ~」


 ところが、大柄な少年は仲間の襟をつかみ、椅子から引きづり下ろしてしまった。

 テラス席にいた2人は、そのまま店前の道へと連れ出される。


「な、何するでやんすか!?」

「うっせー。お前らは黙って俺に付いてくればいいんだっ」


 強引すぎる仲間に、巻き込まれた2人はそろってため息をこぼす。


「きっと他人の空似だって〜。銀髪の女の子なんて他にもいるよ~」

「違ったらまた探し出すだけだ!」

「まったく、エリンさんは傾国の美女でやんすね…………」

「ちょっとお客さん、お会計~!」


 わき目も振らずに熊獣人たちは店を飛び出し、店員が慌てて追っていく。

 ちょっとしたドタバタ劇を、店内の周辺にいた通行人たちは見送った。






「…………聞きましたか、坊ちゃん」

「ええ。銀髪の女の子…………。可能性はすこぶる高い」


 尋ねられた少年は、隣に立つ壮健な男に言った。

 スパイラルパーマが特徴的な男の襟もとでは、(あかがね)色のバッジが輝いている。


「たしかに銀髪の子ってのは珍しい。だけどよ、俺たちが探してる子と名前は同じだったんだろ」

「そうだね、間違いない」


 今度はオールバックの言葉に頷く少年。年齢は10代半ばといったところだろうか。

 お次はバッハみたいな髪型(ただし黒髪)の男が口を開く。


「それだけでも行ってみる価値はある。決まったな、次の目的地が」

「…………ケークタウン、か」

「移動にも時間がかかる。出立は早ければ早いほどいい。お前ら、すぐに支度して北門に集合だ!」

「「おぉっ!!」」


 スパイラルパーマの言葉に、黒髪バッハとオールバックが声をそろえた。

 一同はそこでいったん解散し、スパイラルパーマだけが少年のもとに残る。


「フフッ、やっと会える。待っていてくださいね、エリンさん」


 少年は、隣のスパイラルパーマには聞こえないように、口の中で呟くのだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。