↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/110

46. ダーシャの挑戦

〇前回のまとめ

・依頼の途中で、エリンたちは【リラの森】に立ち寄った。

・そこで再び魔族のサーモクが現れた。

・サーモクはエリンを尊崇しており、2人はもてなしを受けた。

「あと、この前のお詫びといっちゃなんですが、姐御が望む物を差し上げます」


 デビルウルフを出動させ、魔族のサーモクはエリンに申し向けた。


「…………ほほう」


 もらえるものはもらっておく。エリンの貧乏人根性が発揮され、その目が怪しく光る。

 ダーシャがエリンに、もらうものを相談しようとしたが、エリンは悩むことなく即断した。


「サーちゃん、この家がほしい」

「いや、アンタ家って……」

「いっすよ」

「いいんかいっ!」


 サーモクは、かなり気前が良かった。

 ただ、家をもらうとなっては問題がある。


「でもねエリン、アタシたちここに住むわけじゃないのよ。家なんかもらっても、しょうがないじゃない」

「う~ん。このバッグに入らないかな?」


 エリンは膝の上に乗せてあった自分のハンターバッグを、ポンと叩く。


「いや、さすがに家は……」

「いけると思うっすよ」


 ダーシャの動きがピタリと止まる。

 その様子を見たサーモクは眉をちょいと上げ、話を続けた。


「そのバッグって、ちょっと昔に魔族の男が作ったんですよね。確かそれ、元の素材だけじゃなくて、持ち主の魔力とか相性とかで容量が変わるんすよ」


 魔族は人間と敵対する存在だとエリンは思っていたが、少数民族の1つに過ぎない。

 ただ、調子に乗って犯罪やっちゃう人が多いだけなんだって。もともと魔法が得意な種族で、いつもやり過ぎちゃうとか。うん、何事もほどほどが一番。


「んで、姐御の場合、ビックリするくらい条件がそろってるっす。おかげで家くらいなら余裕で入るんすよ」


 しかし、エリンはリラタウンで町全体を凍らせた際に気を失った。

 それは魔力の使い過ぎだと自分で判断していたのだが、サーモクの見解とつじつまが合わないのではないか。と思い、サーモクに質問した。


「ああ。それは魔力がなくなったんじゃなくて、単に姐御の体が耐えられなくなっただけっすよ。魔法を使いまくるのに、あんま慣れてないみたいっすね。中身じゃなくて器の方の問題っす」

「なるへそ。納得したよ」


 遠回しに貧弱だと言われているようだが、それは事実だし、なにより発言した本人にエリンを蔑む意図がないのは明らかだった。

 ここで、サーモクが思い出したように口を開いた。


「あ、そうそう。家を差し上げるといっても、わても住むとこがなくなっちまいますんで、これと同じものを作るということでどうっすかね。そのバッグに入るようにも調整しなきゃいけやせんし」

「オッケー!」

「…………アンタたち、ちょっと軽すぎない?」




   ♦




「姐御、今いっすか?」

「ん? なに~?」


 2人の少女は、すっかりサーモクの家の中でくつろいでいる。エリンなんか、日曜日のお父さんみたいにゴロゴロと寝転がっていた。

 木の家の中は、マイナスイオンで溢れる癒しの空間だ。しかも適度に暖かい。

 快適な環境は、かえって人をダメにすることもある。


「へい、わての考えた問題をみてほしくて……」

「どれどれ、お姐さんに見せてごらん」


 いつしかエリンとサーモクは意気投合し、問題作りに(いそ)しんでいた。


「あー。これはこうで、こうなるのかな?」

「さすがっす!」

「じゃあ、これなんかどう?」

「うわっ、何すかこれ。めっちゃムズイっすよ」


 エリンも前世で得た知識をここぞとばかりに活かしてやろうと、ノリノリで応じていた。


「うーん、……はっ! エ、エリン? もうこんな時間よ!」


 ずっとお昼寝していたダーシャが目を覚ませば、窓の外はすっかり暗くなっていた。

 依頼のことなんか、すっかり忘れ去っていた。


「どうしやす? 今晩よかったら泊まっていきませんか」

「そうだね。日程にもまだ余裕があるし」

「なな何言ってるのよエリン。相手は魔族なのよ。その家に泊まるなんて……」


 おっさんたちと雑魚寝はオッケーなのに、魔族の家に泊まることは躊躇われるらしい。

 難しいお年頃だ。


「その魔族の家でぐっすりと眠りこんでいたのは、どこのどなたでしょうね?」

「うぐっ」

「それに、もしサーちゃんが私たちを害するつもりなら、とっくに襲ってるよ」

「そっすよ。姐御の言う通りっす。こんな偉大なお方に仇成すなんて、わてにはできやせん」


 サーモクはエリンに高校数学などの知識を教えてもらい、完全に心酔していた。

 今となっては危害を加えるどころか、むしろ守ってくれるだろう。


「仕方ないわね……。お言葉に甘えさせてもらうわ」


 2人は奥にある客間に案内された。

 初めてこの部屋を使う時が来たと、サーモクは感涙にむせんだとか。


ガチャガチャ

「…………ちょっと、開かないわよ」

「ああ、その部屋は暗証番号を押さないと開かないっす。忘れてたっす」

「まったく、ちゃんとしなさいよね……。で、何番なの?」

「忘れたっす」

「はあ!?」


 突然ダーシャが顔の近くで大声を出し、エリンは耳を塞いだ。

 ダーシャの憤りなど些細なことと言わんばかりに、サーモクは悪びれることなく悠然と構えている。


「そこのパズル解いたら分かるっすよ」

「じゃ、ダーシャやってみて。私もう飽きちゃった」

「う、分かったわよ……。見てなさい、華麗に答えてみせるんだから!」


 0から9までの数字が書かれたボタンが、ドアノブの横に並んでいる。正解の数字のボタンを押せば、鍵が開く仕組みのようだ。

 ドアスコープの下に、問題が書かれているボードがあった。



『DIAMOND  → 4  GOLD → 2 

 BLONZE → 3  NORMAL → ? 』



「サーちゃん、これは簡単すぎでしょ」

「そっすね。でもでも~、入れなかったら困るっす」


 ところが2人とは対照的に、ダーシャは頭を抱えている様子。


「……な、なんなのよ、これ。ゴールド、ダイアモンド……って、ハンターランク.......よね? 順番なら上から2,3,4となるはずなのに、なんでゴールドが3なのよ!? 文字とか母音の数? いや、違うわね……」


 エリンは、他人の悩む顔を見るのが楽しいというサーモクの気持ちが分かる気がした。

 だが、いつまでも待っているわけにもいかないので、頃合いを見計らってヒントを出す。


「ダーシャ、文字の形をよく見て」

「文字の形?」


 言われて、さらにボードをしげしげと見つめる。

 そして遂に――


「…………あ、分かったわ!」


 ようやく答えを導き出したダーシャは、ドヤ顔でエリンを見てくる。


「これは〇の数を指してるんだわ。答えは“3”よ!」


 ダーシャは、2と書かれたボタンを押した。

 すると、ドアからガチャンという音がした。


「やったわ!」

「正解っす!」


 ダーシャは満面の笑みだ。サーモクも賞賛の拍手を送る。


「フフン! アタシにかかればこのくらい朝飯前よ!!」

「はいはい、すご~いすごい」

「……アンタ、絶対バカにしてるでしょ」


 ドアの向こうは、高級ホテルのスイートルームかと思うくらい豪華な部屋でしたとさ。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。