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やどりび  作者: ファット爺
第二章
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16/81

炭鉱村

 ダンジョンクエストを求めて、旅立った翌日。

 二日かかると言われた現地には、昼過ぎには到着した。

 森を抜けたら早かったらしい。

「ここかぁー」

「そうらしいな」

 現在、使われていないという炭鉱への入り口。その様相は、おどろおどろしい。

 暗く、冷たい風が誘うようだった。

「よっしゃ! 行こうぜ!」

「待て」

 予想通り、と言わんばかり。早速中へ入ろうとするトリューの肩掛けを掴む。

「なんだ?」

「まず、情報収集。中の地図も欲しい」

 危険だとは聞いている。入り口を見れば、踏破が容易でない事は、素人でもわかる。

 それでも進もうとするトリューは、やはり危機感が足りないのだろうか。

「おー。ティファ頭いいな」

 お前の頭が悪いんじゃないのか。

 口に出そうになった言葉を引っ込める。これは悪口だ。

 酒場の店主に貰った地図には、近くに村が描いてある。そこに依頼主もいるらしい。

 まずはそこを訪ねようと、トリューの先を歩いた。



 村というには大きく、町というには小さな集落だった。

 元は鉱山村として栄えていたのだろう。あちこちに倉庫や荷車がある。炭鉱夫らしい村人達は、皆逞しい。

 ティファは村人に炭鉱について聞くと、皆肩を落として口々に困っていると言う。

「俺達は石で飯食ってるからよ。炭鉱に入れねえんじゃ商売にならねえ」

「その炭鉱の調査依頼で来た。依頼主と話がしたい。場所わかるか?」

 その言葉を聞いた村人は、驚いてティファを見る。続いて、トリューにも目を向ける。

「あんたら冒険者か! そりゃあありがてえ!」

 村人は、喜んで依頼主の元へ案内してくれた。

 村の中では、一際大きな家だった。家の脇には荷車にツルハシ、木材が積まれている。

「親方! 冒険者が来てくれたぜ!」

 ドアを叩くと、更に体格のいい男性がぬっと顔を出した。

「なんでえ。随分ひょろっこいな」

 親方と呼ばれた男は、ティファとトリューを睨むような視線で見る。その眼光は鋭い。

「詳しく話を聞きたい。いいか?」

 ティファは怯む事なく、男を見上げて告げる。トリューも横で男を見ている。

 親方はじっと二人を見つめた後、「ついてこい」と酒場に案内した。

 酒場は、炭鉱夫達で大層賑わっていた。

 しかし、皆どこか表情が暗い。

「おう、まぁなんか飲めや」

「いいの!? ありがとう!」

 親方が二人にそう言うと、トリューはすかさず食いついた。懐いたようだ。

 トリューは早速黒麦茶と料理を注文している。

 ティファも適当に飲み物を頼むと、親方に向き直る。

「まずは地図が欲しい」

「おう、ほらこれだ」

 親方は炭鉱内を記した地図を広げた。

「まず、明かりはねえ。ガスが溜まってるかもしれねえから、火は使うな」

「うん、わかった。でも…暗闇じゃ探索きついな」

「安心しろ。これ使え」

 親方は、どん、と袋をテーブルに置いた。中からは石の音がする。

 トリューはそれを見ながら、食事を頬張っている。

「発光石だ。暗闇で光る。これを目印に使ってもいい」

「ありがとう。便利だな」

「すげー。こんなんあるんだ」

 袋から石を一つ取り出し、まじまじと眺める。今は、ただの黒い鉱石のようだ。

「うちの主な収入源だったからな。中に入りゃ、まだ掘れる場所もある」

 つまり、その場所なら明かりは確保できるわけだ。

 ティファはうんと頷いた。

「なぁなぁ、魔物ってどんな奴?」

 食事を終えたトリューが尋ねる。ジョッキに注がれた黒麦茶エールのように飲んでいる。

「全部は確認できてねえ。仲間がやられたのは主にゴーレムだ」

 ゴーレム。なんとなく想像しやすい魔物だ。

「生態は俺もよくは知らねえが、奴らはとにかく硬え。矢はまず通らねえぞ」

 親方はティファが背負う弓を見る。気がついたティファも自分の弓を見た。

「でも無敵ってわけじゃねえだろ?」

「うん。どっかに体を形成してる魔核があるはず」

 二人は冷静だった。

 親方は細い目を見開いて、手に持ったジョッキを揺らした。

「若えのに大した度胸だ」

 ふ、と口元を緩めて、エールを飲み干す。

「あとは、しばらく使ってねえから崩落に気をつけろ。穴にもな」

「うん、十分だ。ありがとう」

「あ、そーだおっちゃん!」

 情報を聞き終えたところで、トリューが声を上げた。まだ聞きたい事があるらしい。

「報酬の秘宝ってどんなやつ?」

 意外と抜かりないな、とティファは思った。探し物をしていると言っていたから、きっとその事だろう。

「そりゃあ、依頼を達成してからのお楽しみだ。珍しいもんだから期待しとけ」

「ちぇー。けちー」

 意地悪そうに笑う親方に、トリューは口を尖らせた。金貨の支払いも約束してくれた。

 炭鉱が取り返せれば、この村は再び活気に満ちた鉱山村となるのだろう。

 報酬目的ではあるのだが、その副産物としてこの村の未来が明るくなるのなら。

 正義感など欠片も持ち合わせてはいないが、ティファは胸に火が灯るのを感じていた。

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