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やどりび  作者: ファット爺
第二章
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13/81

パーティーを組もう

「っし、これで終了!」

 最後の届け物を渡したトリューは、空を見上げて大きく伸びをした。日はすっかり落ちて、星が出ている。

「あいつちゃんといるかな…」

 依頼を譲ってくれた、銀髪の少女を思う。人を騙すようには見えなかったが。

 そこで一旦顔をしかめる。

『任せとけ! 換金してくる!』

 あの男も、そう言っていなくなった。

「ま、いなかったらいなかったでいいか」

 またツケが溜まるだけだし。開き直って、もう一度伸びをした。

 そろそろ空腹も限界だ。幸い、脚力には自信がある。

 トリューは勢いよく地面を蹴って、走り出した。



******



 月が顔を出した夕飯時。酒場は仕事帰りの職人や旅人で大層賑わっていた。

 カウンター席に腰掛けたティファは、キノコのパイ包みを小さく口に運んでいる。バターの香りが湯気と共に立ち上る。

 活気のある村だな、と思いながらキノコを咀嚼する。なんのキノコだろう。

 そんな事を考えていると、突然酒場の扉が勢いよく開いた。同時に大きな声が室内に響く。

「ほんとにいたーーー!!」

 聞き覚えのある声に肩を震わせる。眉をしかめながら恐る恐る振り向くと、やはり昼間の男が自分を指差していた。

 男は大層安心した様子で、にこにこと駆け寄って来る。

「良かったー、ちゃんと待っててくれたんだな!」

「うん…まぁ…」

「ありがとうな!」

「とりあえず…食べれば」

 ティファが料理を勧めると、男はきらきらと目を輝かせた。

 約束したのだから、そんなに喜ぶ事でもないだろうに。

「いいのか!」

「いいよ」

「ありがとう! おっちゃーん!」

 相変わらずの声量で、店主を呼ぶ。次々に料理を注文する様を見て、ティファはふと考える。

(こいつ…金がないの飯代のせいじゃないのか…)

 男に食事を奢る約束をした事は事前に店主には伝えてあった。その時店主は、安心したような呆れたような顔で笑っていた。

 そのおかげなのか、料理は待たずに次々運ばれてくる。

 男は大層喜んで、食事をかっ込んだ。皿は瞬く間に空になっていく。

「ほんとありがとな! 腹減って泣きそうだった!」

「どういたしまして」

「お前名前は!?」

「…ティファ」

「そっか! 俺トリュー!」

 忙しない奴だな、と思いながら食事風景を眺める。依頼を奪ってしまった罪悪感からとはいえ、素直に感謝される事に悪い気はしなかった。

 少しだけ昔を思い出して、眉が下がる。

「うまかったー! ごちそーさん!」

 大量の皿は、あっという間に平らげられていた。

 トリューは水を一気に飲み干し、ティファに向き直る。

「でさ、ティファ!」

「なに?」

「俺とパーティー組まねえ!?」

 はい?

 まず耳を疑い、次に目を疑った。目を凝らしてみても、トリューの目はきらきらしている。

「えーっと…なんで?」

 目的がわからない。一度食事を奢っただけで、ヒモにされるのは御免だ。

「行きたいとこがあんだけどさ、一人じゃ難しいらしい」

 …割とちゃんとした理由だった。曇りのない眼差しを疑ってしまった事に、やや胸が痛んだ。

「行きたいとこって?」

「ダンジョンクエストってやつ!」

 だんじょん。聞き覚えのあるような単語だ。迷路とか、そういう類のものだろうか。

 ティファが首を傾げていると、トリューも同じように首を傾げた。

「知らないのか?」

「知らない」

「あれ? ティファって旅に出てどんくらい?」

「まだ二週間だよ」

 路銀を貯めていたんだ。金はあって困らないから。そう続けると、トリューはにかっと笑った。

「じゃあ俺の方が先輩だな!」

「オメーだってまだ一ヶ月のド素人だろうが」

「先輩は先輩だ!」

 店主に口を挟まれるくらいには、仲が良さそうだ。人柄だろうか。

 そんな観察していると、トリューは改めてティファに向き直る。

「そう、んでな。ダンジョンクエストってのは、遺跡とか洞窟とか、広い場所の調査探索依頼の事なんだと」

「へえ」

「建物に魔物が棲みついたりとか…そういうのを取り返してほしいとか、そういう依頼も含まれる」

「なるほど」

 記憶が曖昧なのだろうか。トリューは時折空を見上げながら、言葉を探している。

「で、今炭鉱に魔物が棲みついてるから、排除奪還してほしいって依頼があんだよ」

「そんなのあった?」

 ティファは店主を見る。気がついた店主はひとつ息を吐いて口を開いた。

「旅に出て二週間のルーキーに、そんな依頼見せねえよ」

 それもそうか、と納得した。単独踏破は難しいと、トリューも言っている。

「報酬は伝説の秘宝って話だ! 俺はそれが探してるもんか確かめたいんだけど、一緒に行ける奴いなくてさ」

 この前は騙されたし、とトリューは肩を落とす。

 ああ、それで金がなかったのか。

 ティファは一人納得した。

「俺の探しもんだったら譲ってやれねぇけど…金貨も出るしそっちはやるよ。悪い話じゃねえだろ?」

「ふむ…」

 腕を組んで天井を仰ぐ。

 確かに、報酬が出るなら悪い話ではない。危険は伴うのだろうが、これからの旅を思うと、経験は多いに越した事はない。

 その思考に至ったティファは、ついに結論を出す。

「よし、乗った」

「よっしゃあ!」

 トリューは大きく拳を握った。「嬉しい」と顔全面に書いてある。

 ふ、と眉が下がる。少なくとも、退屈はしなさそうだ。

「改めてよろしくな!」

「ああ、よろしく」

 二人はしかと握手を交わす。旅に出て早々、ノノアに書く手紙が決まった。


 拝啓、ノノア殿。

 旅に出て二週間目。うるさい仲間とダンジョンに行く事になりました。


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