閑話 パジャマパーティー
夜。
こはるの部屋。
窓の外はすっかり暗くなり、街の明かりが静かに灯っている。
こはるがベッドの上で転がりながら言った。
「ねぇ、りり」
りり
「なに?」
こはるはごろりと寝転んだまま、りりを見る。
「さっき言ったことは本気だから!」
りり
「どれのことよ?」
こはる
「パジャマパーティー」
りり
「あ、本気だったんだ」
こはる
「当然!」
ドヤ顔。
りりは苦笑する。
「はいはい」
「付き合いますよ」
こはる
「やった!」
――そして。
数分後。
二人はそれぞれパジャマに着替えていた。
こはるはゆるっとした大きめのパジャマ。
りりはシンプルで少し大人っぽいデザイン。
こはるがじっと見る。
「りり」
りり
「なに?」
こはる
「パジャマでもスタイルいいね」
りり
「やめて」
少し照れる。
こはるは満足そうに頷いた。
「よし」
そして。
こはるはベッドを指差す。
「そして、知ってると思うけど……」
りり
「なにその前振り」
こはる
「ベッド一つに布団は一組しかないから!」
りり
「あー、はいはい」
「知ってる知ってる」
こはる
「じゃあ」
「寝よっか!」
二人はそのまま布団に入る。
同じ布団。
少しだけ距離が近い。
こはるがすぐに顔を寄せる。
「……あー」
りり
「なに」
こはる
「りりって」
「普通にいい匂い!」
りり
「ちょっと!」
「何嗅いでるのよ!」
こはる
「別にいいじゃん」
「減るものでも無いし!」
りり
「減らないけど!」
「くすぐったい!」
こはるはにやりと笑う。
「良いではないか」
「良いではないか」
りり
「なにそのノリ」
こはる
「あ〜れ〜、って言ってほしい」
りり
「なんでよ」
こはる
「言って!」
りりはため息をつく。
「……あ〜れ〜」
こはる
「もっと!」
りり
「やめてください!お大官様!」
こはる
「いいね!」
「ノリいい!」
りり
「眠いから変なテンションなだけ」
こはる
「それでもいい」
二人は布団の中でじゃれ合う。
押したり。
引っ張ったり。
笑ったり。
こはるが抱きつく。
りりが押し返す。
でもまた近づく。
そんなやり取りがしばらく続いた。
やがて。
少しずつ落ち着いてくる。
部屋は静かになり。
外の音だけが微かに聞こえる。
そのとき。
こはるがぽつりと言った。
「……りり」
りり
「なに?」
こはるの声は、少しだけ真面目だった。
「りりと友達になれてよかった」
りり
「……」
こはる
「毎日、楽しい」
少しだけ間を置いて。
「ありがとうね」
りりは一瞬驚いた。
でもすぐに。
優しく答える。
「何言ってるのよ」
小さく笑う。
「私だって楽しいよ」
「ありがとう、こはる」
少しだけ静かな時間。
空気がやわらかくなる。
でも――
その空気をぶち壊すように。
こはるが急に動いた。
「りりの身体は柔らかい〜」
ぎゅっ。
抱きつく。
りり
「ちょっと!」
「暑苦しい!」
「離れてよ〜」
押す。
でも。
動かない。
こはる
「もう私のもの〜」
りり
「重い!」
「離れなさいって!」
さらに押す。
でもやっぱり動かない。
そして。
りりが気づく。
「……あれ?」
静か。
こはるの動きが止まっている。
耳を澄ます。
すぅ……
すぅ……
寝息。
りり
「寝てる……」
抱きついたまま。
完全に寝ていた。
りりは少し呆れる。
「もう……」
でも。
少しだけ笑う。
逃げようとする。
でも無理。
しっかりホールドされている。
「……動けない」
仕方ない。
りりはそのまま目を閉じる。
「まあ、いっか」
小さく息を吐く。
そして。
ぽつりと呟く。
「ありがとうね、こはる」
そのまま。
静かに眠りについた。
部屋の中。
二人の寝息だけが、優しく響いていた。




