閑話 おしりの存在意義
ある日の午後。
こはるの部屋。
二人は床に座り、漫画を読んでいた。
静かな時間。
ページをめくる音だけがする。
そのとき。
こはるが、ふと顔を上げた。
そして――
じー。
りりを見つめる。
りり
「……なに」
こはる
「ねぇ、りり」
りり
「何?」
こはるは、まじまじとりりを見ながら言った。
「りりってさ」
「大学行けば、絶対モテるよね」
りり
「ぶっほっ」
思いきり吹き出した。
むせる。
「げほっ……!」
「な、何よ突然!」
こはるは真面目な顔だった。
「いや」
「だってさー」
指を折って数え始める。
「可愛いし」
「性格いいし」
「スタイルいいし」
「胸はちょっと控えめだけど細いからサイズより大きく見えるし」
「可愛いし」
りりがすぐツッコむ。
「可愛いが二回出てる!」
こはる
「大事なことなので」
りり
「そこ強調する!?」
こはるは頷く。
「でも本当のことだよ」
りりは少し照れる。
「いや……」
「それ言うなら」
「こはるだって可愛いじゃん」
こはる
「え?」
少し考える。
そして。
こはるが言った。
「じゃあさー」
りり
「なに?」
こはる
「私の存在意義って何?」
りり
「……」
真剣に考える。
数秒。
沈黙。
そして。
りり
「……おしり?」
こはる
「やっぱりそうなるよね!!」
両手を広げる。
「はっきり言って!」
「私はモテたことがない!」
りり
「急に重い」
こはる
「というか!」
「声かけられたこともない!」
りり
「そんなこと」
こはるは指を立てる。
「最近」
「声をかけられたことはある!」
りり
「あるじゃん」
こはる
「でもね?」
「聞いて?」
指を折る。
「変態紳士」
「コート男」
「快走男」
「筋肉男」
「おしりスキー」
「怪獣」
「おっぱい星人」
りり
「最後、完全に怪人かどうか怪しいじゃん」
こはる
「怪獣は違うか」
りり
「全部怪人!」
こはる
「碌な人、人?」
りり
「人じゃない!」
こはる
「とにかく!」
「変なのからしか声かけられないし!」
りり
「うん」
こはる
「全部がおしり褒めるし!」
りり
「うん」
こはる
「と言うか!」
「おしりしか褒めないし!」
りり
「それは事実」
こはる
「もう!」
「私の存在意義はおしり固定だし!」
りり
「うん」
こはる
「私だって!」
「ちゃんとおしり以外で褒められたい!」
りり
「うーん」
少し考える。
そして。
りりが言う。
「……無理じゃない?」
こはる
「ひどい!」
りりは真面目な顔だった。
「だって」
「こはるのおしり」
「すごくエロいし」
こはる
「言い方!」
りり
「いやほんと」
「あれは武器」
こはる
「武器!?」
りり
「おしり兵器」
こはる
「やめて」
りりは頷く。
「こはるはおしり」
「これ決定」
こはる
「私の存在意義って……」
がっくり。
項垂れる。
りりが笑う。
「落ち込まない」
こはる
「だってさー」
「普通」
「顔とか」
「胸とか」
「褒められるじゃん」
りり
「まあ」
こはる
「おしりばっかり」
りり
「だって」
りりは真面目に言う。
「こはる」
「顔も可愛いよ」
こはる
「ほんと?」
りり
「うん」
「でも」
こはる
「でも?」
りり
「やっぱり」
「一番目立つの」
「おしり」
こはる
「やっぱりかー!」
りりは笑う。
「でも」
「いいじゃん」
こはる
「なにが」
りり
「個性」
こはる
「個性かぁ」
少し考える。
そして。
こはるが言う。
「じゃあ」
「大学デビュー」
りり
「うん」
こはる
「おしりアイドルでいく?」
りり
「どういう路線」
こはる
「新ジャンル?」
りり
「絶対モテない」
こはる
「やっぱり?」
りり
「でも」
こはる
「でも?」
りり
「変態紳士には大人気」
こはる
「それは知ってる」
二人は顔を見合わせる。
そして。
同時に笑った。
こはるは立ち上がる。
「よし!」
りり
「なに」
こはる
「おしり磨こう!」
りり
「努力の方向」
こはるは真剣だった。
「おしりで世界を取る」
りり
「そんな世界ない」
部屋に、二人の笑い声が響いた。
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