閑話 ボンテージ衣装試着会
ある日の午後。
桃瀬こはるの部屋。
カーテンの隙間から春の光が差し込んでいる。
テーブルの上には――
黒い衣装が置かれていた。
ボンテージ。
艶のある黒いレザー。
細いベルト。
胸元は大胆に開き、腰のラインがはっきり出るデザイン。
こはるは腕を組みながらその衣装を見ていた。
「……」
りりも隣で見ている。
「これ」
「やばくない?」
こはる
「やばい」
二人は同時に頷いた。
この衣装。
ヴェルヴェット将軍から回収した戦利品だった。
こはるが言う。
「でも」
「せっかくだし」
「試着してみたい」
りり
「わかる」
こはるはスマホを取り出した。
「撮影しよ」
りり
「完全に遊びだね」
こはる
「大事な検証です」
りり
「何の」
こはる
「スタイルの」
りり
「なるほど」
納得した。
――試着開始。
最初に着るのは――
こはる。
ボンテージ衣装を持って立ち上がる。
「ちょっと着替えてくる」
りり
「楽しみ」
数分後。
ドアが開いた。
りりが固まる。
「……」
こはるが立っていた。
黒いボンテージ衣装。
体にぴったりと張り付くレザー。
細いウエスト。
ヒップラインがくっきり出ている。
腰のベルトが体のラインをさらに強調していた。
こはるが少し恥ずかしそうに言う。
「どう?」
りり
「……」
数秒沈黙。
そして。
「エロい」
こはる
「だよね」
りりが近づく。
後ろを見る。
「お尻」
「すごい出てる」
こはる
「うん」
「これほぼ隠れてない」
振り向くと胸元。
大胆に開いたデザイン。
ささやかなAカップが、レザーに押し上げられて少しだけ強調されている。
りり
「胸」
こはる
「どう?」
りり
「小さいけど」
こはる
「うん」
りり
「形がいい」
こはる
「それは嬉しい」
りりはスマホを構えた。
「撮る」
カシャ。
「ちょっと横向いて」
カシャ。
「後ろ向き」
こはる
「お尻?」
りり
「うん」
こはるがくるっと回る。
ボンテージが光を反射する。
ヒップラインが綺麗に出る。
カシャ。
りり
「すごい」
こはる
「そんな?」
りり
「モデルみたい」
こはるは少し嬉しそうだった。
――次はりり。
「じゃあ」
こはる
「次りり」
りり
「着てみる」
数分後。
ドアが開いた。
こはるが固まる。
「……」
りりが立っている。
同じボンテージ衣装。
しかし。
りりはBカップ。
胸元のラインがくっきり出ていた。
こはる
「ちょっと待って」
りり
「なに?」
こはる
「ずるい」
りり
「なんで」
こはる
「胸」
りり
「しょうがない」
こはるはスマホを構える。
「撮影開始」
カシャ。
「横向いて」
りりが体を少しひねる。
胸のライン。
腰のくびれ。
ヒップライン。
全部綺麗に出ている。
こはる
「スタイルいいなあ」
りり
「こはるもいい」
こはる
「ほんと?」
りり
「うん」
こはるは後ろから見る。
「お尻」
りり
「なに」
こはる
「いい形」
りり
「それは嬉しい」
カシャ。
カシャ。
二人は笑いながら撮影を続ける。
――二人で撮影。
最後は――
二人並んで。
鏡の前。
黒いボンテージ衣装。
並ぶ二人。
こはる
「なんか」
りり
「うん」
こはる
「悪の幹部みたい」
りり
「わかる」
こはる
「ヴェルヴェット将軍こんな感じだったのかな」
りり
「たぶん」
二人はポーズを取る。
カシャ。
カシャ。
カシャ。
笑いながら撮影は続いた。
しばらくして。
二人はベッドに座って写真を見ていた。
こはる
「結構いい」
りり
「うん」
こはる
「この衣装」
りり
「すごい体のライン出る」
こはる
「うん」
少し沈黙。
こはるがぽつりと言う。
「でもさ」
りり
「なに?」
こはる
「やっぱり」
「胸もう少し欲しい」
りり
「またそれ」
こはる
「大事」
りり
「ぶれないね」
こはる
「当然」
そのとき。
プルンがふわっと浮いた。
「ポイント稼ぐプルン?」
こはるは立ち上がった。
「狩り行くか」
りり
「今から?」
こはる
「当然」
りりは笑った。
「しょうがない」
こはるは拳を握る。
「胸のために」
りり
「世界の平和よりそっち」
こはる
「当たり前」
こうして。
ボンテージ試着会は終わった。
そして――
その日の夜。
ヌギーがまた一匹。
静かに犠牲になったのだった。




