46.戦利品分配
戦いのあと。
朝の騒ぎが嘘のように、午後の空気は静かだった。
桃瀬こはるの部屋には、柔らかな日差しが差し込んでいる。
テーブルの上には――
白いメイド服。
白いバニーガール衣装。
そして、黒いボンテージ衣装とマント。
先ほどの戦いで手に入れた戦利品である。
こはるは椅子の上で正座しながら言った。
「さてと」
手をぱん、と叩く。
「では、戦利品の分配に移りたいと思います!」
りりが首をコテンと傾けた。
「戦利品?」
不思議そうな顔。
こはるは当然のように頷く。
「うん」
赤いボディスーツの端をつまむ。
「ほら」
「結構ボロボロ」
ところどころ焦げている布。
戦闘の激しさを物語っていた。
「だから新しい装備が欲しいかなって」
りりは少し考えてから肩をすくめた。
「別にいいよ」
「私は」
その瞬間、こはるの目がキラッと光る。
「では遠慮なくいただきます!」
りりは苦笑した。
「早い」
「あと、この流れデジャヴ」
こはるはテーブルを見る。
メイド服。
バニー衣装。
そしてボンテージ衣装。
「うーん」
「ボンテージは……」
少し考える。
「これは保留かな」
プルンが空中でくるりと回った。
「ポイントもあるプルン!」
こはるがそちらを見る。
「そうだった」
「ポイントは?」
プルンは指を折って数え始めた。
「ヌギーが三十匹」
「幹部二人」
「将軍一人」
「だから」
「三百と四百と五百」
「合計――」
「千二百ポイントプルン!」
こはるの目が丸くなる。
「1200!?」
すぐにりりを見る。
「じゃあ半分こでいい?」
りりはあっさり答える。
「うん」
「私はなんでもいいよ」
こはるはすぐに計算を始めた。
「じゃあ六百ポイントずつ!」
そして説明する。
「ちなみに衣装は五十ポイント」
「この前言い忘れてた」
りりは少し考える。
「だったら」
「私はお金かな」
「ドレスティアに戻れないだろうし」
こはるは一瞬黙った。
「あー……」
少し申し訳なさそうに言う。
「なんか、ごめん」
りりは首を振った。
「いいよ」
「私が決めたことだし」
少しだけ笑う。
「こはるのほうが大事」
その瞬間。
こはるが勢いよく立ち上がる。
「ありがとう!」
そして抱きつこうとする。
「りり! 大好き!!」
りりが慌てて押し返す。
「もう!」
「そういうのいいから!」
顔が少し赤い。
照れている。
こはるは笑いながら座り直す。
「じゃあ私は」
「前の残りと合わせて六百五十ポイント」
指を折る。
「ステッキ強化一回」
「五・五倍」
「お胸一回」
「残り二百五十ポイントは保管!」
こはるはステッキをプルンに渡す。
「お願い!」
プルンが受け取る。
「了解プルン!」
ステッキが光る。
魔力が流れ込む。
ぴかっ。
数秒後。
「これで五・五倍プルン!」
こはるが受け取る。
軽く振ってみる。
空気がわずかに震える。
「おお」
「前より軽い感じ!」
プルンが言う。
「次はお胸プルン!」
こはるは胸を見る。
「お願いします」
プルンが魔力を流す。
ふわりと光が広がる。
柔らかな魔力が胸元に集まる。
小さく整った丸み。
そこに――
ほんの少しだけ膨らみが加わる。
布がわずかに持ち上がる。
こはるは瞬きをした。
「……」
手で触る。
柔らかい。
ほんの少し。
確かに膨らんでいる。
「おお~!」
こはるが跳ねる。
「増えた!」
プルン
「微増プルン!」
こはる
「ほんとだ!」
「ちょっとだけプルンってなる!」
楽しそうに胸を確認する。
りりは呆れ顔。
「そんなに嬉しい?」
こはるは真顔で答える。
「めちゃくちゃ嬉しい」
そして急に真剣な顔になる。
「これは」
「成長だ」
りり
「そう」
こはるは満足そうに頷いた。
「よし」
そしてテーブルを見る。
メイド服。
バニー衣装。
「じゃあ」
「せっかくだし」
「改造しよっか」
りり
「改造?」
こはるは立ち上がる。
メイド服を広げる。
フリル。
レース。
バニー衣装の光沢生地。
「前の衣装ボロボロだし」
「これ使って」
「新しいの作る」
裁縫箱を持ってくる。
チョキ。
布を切る。
レースを外す。
フリルを移す。
光沢生地を縫い合わせる。
しばらくして。
こはるは完成した衣装を体に当ててみる。
鏡の前。
白いボディスーツ。
腰のフリル。
太もものガーター。
体のラインにぴったり沿っている。
くるりと回る。
フリルがふわりと揺れた。
後ろから見ると――
ヒップラインがきれいに出ている。
こはるが頷く。
「うん」
「いい感じ」
りりが後ろから見る。
「前より似合ってる」
こはる
「ほんと?」
りり
「うん」
「ちょっとエロいけど」
こはるは笑う。
「魔法少女だからね」
プルンが空中でくるくる回る。
「新装備プルン!」
こはるはもう一度鏡を見る。
胸元。
ほんの少しだけ増えた膨らみ。
「……」
指で軽く触れる。
少し嬉しそうに微笑む。
「ちゃんと成長してる」
小さく呟く。
りりが隣に立つ。
「よかったね」
こはるは照れたように笑った。
「うん」
窓の外では、夕方の光が静かに差し込んでいた。




