42.ドレスティア反省会
ドレスティア本部。
地下。
厚いコンクリートの壁に囲まれた広い会議室。
天井は高く、紫色の間接照明が静かに部屋を照らしている。
部屋の中央には円卓。
黒い石で作られた重厚な机。
その奥の席。
ヴェルヴェット将軍がゆったりと椅子に座っていた。
長い黒髪。
深紅の口紅。
脚を組み、静かな目で前を見ている。
その視線の先。
円卓の前に立っているのは二人の少女。
白森めい。
兎月みう。
二人とも黒いマント姿だった。
本来ならば着ているはずの怪人衣装は――ない。
静かな沈黙。
みうがちらりとめいを見る。
めいは表情を変えない。
だが指先は少しだけ緊張している。
その沈黙を破ったのはヴェルヴェット将軍だった。
「……報告を」
落ち着いた声。
怒りは感じられない。
それが逆に緊張を強めていた。
めいが一歩前に出る。
「作戦は予定通り開始しました」
「ヌギー五十体」
「私とみう」
「ピンクフリルを公園の噴水で包囲」
淡々とした口調。
「包囲は成功」
「逃げ道も封鎖」
少し間。
「ですが」
ヴェルヴェット将軍の指先が机を軽く叩く。
「続けて」
めい
「途中で戦力が増えました」
ヴェルヴェット
「戦力?」
みうが口を開く。
「新しい魔法少女」
「白い衣装」
「翼みたいな装備」
少し考えて言う。
「天使っぽい感じ」
ヴェルヴェットの目がわずかに細くなる。
「報告にはありませんね」
みう
「私たちも初めて見ました」
めい
「ピンクフリルと連携してきました」
ヴェルヴェット
「能力は」
めい
「機動力が高いです」
みう
「かなり速い」
めい
「ピンクフリルと二人で動かれると厄介です」
ヴェルヴェットは黙って聞いている。
表情は変わらない。
「……なるほど」
短く呟く。
そして言った。
「つまり」
「二対一の予定が」
「二対二になった」
めい
「はい」
みう
「その通り」
再び沈黙。
部屋の空気が少し重くなる。
みうが少しだけ肩をすくめる。
「でもさ」
軽い口調。
「正直、あれは想定外」
めいが横目で見る。
「みう」
みう
「だって本当じゃん」
ヴェルヴェットは特に止めない。
みうは続ける。
「ピンクフリル」
「前より強くなってた」
めいが頷く。
「はい」
ヴェルヴェット
「どの程度」
めい
「ステッキの威力が上がっています」
みう
「あと」
少し考える。
「戦い方が変わってた」
ヴェルヴェット
「変わった?」
みう
「迷いがない」
めい
「判断が速いです」
ヴェルヴェットは小さく笑った。
「成長」
静かな声。
「良いことですね」
めいとみうが顔を上げる。
怒られていない。
みうが少し驚いた顔をする。
「怒らないんだ」
ヴェルヴェットは肩をすくめた。
「怒る理由が?」
そして言う。
「あなた達は」
「十分な情報を持ち帰りました」
めいが小さく息を吐く。
みう
「助かった……」
ヴェルヴェットはゆっくり立ち上がった。
黒いドレスが床をなぞる。
静かな足音。
円卓の前まで歩く。
「ピンクフリル」
小さく呟く。
「そして」
「新しい魔法少女」
少し考える。
その顔には薄い笑みが浮かんでいた。
「少し」
「興味が湧きました」
みうが顔を上げる。
「まさか」
めいも気づく。
ヴェルヴェット将軍は言った。
「次は」
落ち着いた声。
「私も行きます」
二人の目が丸くなる。
「え?」
「将軍が?」
ヴェルヴェットは静かに微笑む。
「ええ」
「直接」
「会ってみたい」
みうが笑う。
「いいじゃん」
めいも頷く。
「三人ですね」
ヴェルヴェット
「ええ」
静かな声。
「次は三人で」
「迎えましょう」
地下の会議室。
ドレスティアの空気が
静かに動き始めていた。




