32.衣装改造
怪獣を倒した。
朝の静かな公園で、巨大な怪獣が沈黙したあと。
街はいつもの平和を取り戻していた。
だが――
こはるは自分の衣装を見下ろしていた。
「……」
黒レースの上半身。
その一部が焦げている。
火炎弾をかすめた場所だ。
「気に入ってたのに」
プルンが横でふわふわ浮く。
「戦闘だから仕方ないプルン」
こはるはため息をついた。
「仕方ないけどさ」
少し考える。
そして言った。
「……よし」
「衣装、改造しよう」
プルンが首をかしげる。
「改造?」
こはるはうなずいた。
「壊れたなら」
「新しく作ればいい」
部屋のテーブルの上には、以前回収した戦利品が置かれていた。
黒いバニーガール衣装。
ラビーナから徴収したものだ。
光沢のある黒い生地。
丈夫そうな素材。
こはるはそれを手に取る。
「これをベースにする」
プルン
「大胆プルン」
こはるは道具箱を開いた。
裁縫道具。
布。
リボン。
フリル。
作業開始。
バニー衣装の形をベースにしつつ、魔法少女用のデザインへ変えていく。
胸元はシンプルに整え、動きやすい形へ。
腰のラインはしっかり固定し、戦闘でもずれないようにする。
バニー衣装の黒い生地はそのまま活かした。
伸縮性があり、動きやすい。
そこへ――
ピンクフリルの象徴。
こはるの魔法少女衣装の特徴だったフリルを追加する。
ただし今回は前ではなく、背面だけ。
腰の後ろ側に、小さなフリルスカートのように配置した。
ひらりと広がる形。
動くと軽く揺れるデザイン。
「これで」
「ピンクフリルの象徴は残る」
さらに太もも部分。
黒いガーターを追加。
実用的な固定具としても使える。
脚のラインに沿う形で細いストラップを配置した。
腕には黒レースの袖飾り。
以前の衣装から無事だった部分を再利用する。
これで腕周りのシルエットも整う。
足元。
ヒールブーツ。
これも無事だったのでそのまま採用。
戦闘用として少し補強。
靴底のグリップを強化した。
そして最後に――
腰のラインを整える。
黒い生地の上に、控えめな装飾。
シンプルだが、しなやかなラインが出るデザイン。
作業はしばらく続いた。
やがて――
こはるは立ち上がった。
姿見の前に立つ。
「……」
完成した衣装。
ベースは黒。
動きやすいボディスーツ型。
胸元から腰にかけて、すっきりとしたライン。
太ももには黒いガーター。
脚を引き締めるデザイン。
腕には黒レースの袖飾り。
そして背面。
腰の後ろにだけ付いた、ピンクフリルのミニスカート。
前から見るとスッキリした戦闘衣装。
後ろから見ると、ふわりと広がるピンクフリル。
ヒールブーツが全体のシルエットを整えている。
こはるはくるっと回った。
フリルがふわりと揺れる。
「……」
少し考える。
そして。
「うん」
「いい」
満足そうにうなずいた。
「我ながら」
「完璧」
プルンも言う。
「可愛いプルン!」
こはるは笑った。
「でしょ?」
「戦いやすそうだし」
「前より軽い」
そのとき。
ピンポーン。
呼び鈴。
こはるは振り向く。
「……」
「どうせ、りりでしょ」
玄関へ行く。
ドアを開ける。
予想通りだった。
小鳥遊りりが立っている。
「こんちー!」
元気な声。
「来たよー!」
こはる
「やっぱり」
りりは部屋に入る。
そして――
こはるの姿を見る。
一瞬止まる。
「……」
次の瞬間。
「おっ」
「新しい衣装?」
こはるはくるっと回る。
「怪獣倒したんだけど」
「衣装がダメになってさ」
「だから改造した」
りりは近づいて観察する。
「へぇ」
背面を見る。
「このフリル」
「いいじゃん」
「後ろだけってのが面白い」
こはる
「でしょ?」
りりは腕を組む。
「黒ベースで」
「シンプルだけど」
「ちゃんと魔法少女っぽさもある」
そして笑う。
「なかなかいいじゃん」
「可愛い」
こはるは少し得意げだった。
「でしょ」
「私も気に入ってる」
プルンが言う。
「進化プルン」
りりはソファに座る。
「そういえばさ」
「朝の振動」
「怪獣だったんだね」
こはる
「うん」
りり
「ドレスティアの連絡網で回ってきた」
「街に怪獣出現」
「討伐済み」
そしてこはるを見る。
「それ」
「本当にあんたが倒したの?」
こはるは肩をすくめる。
「どうしようか迷ったけど」
「プルンが倒せるって言うから」
りりは笑う。
「やるじゃん」
こはる
「まあね」
そして。
そのあと二人はソファに座り――
新しい衣装の話や、怪獣の話をしながら。
いつものように、楽しくおしゃべりを続けるのだった。




