30.バニーガールの夜
ラビーナと戦った夜。
学生マンションのこはるの部屋は、静かな夜の空気に包まれていた。
窓の外には街の明かり。
遠くを走る車の音が、かすかに聞こえてくる。
桃瀬こはるは、部屋のテーブルの上にある戦利品をじっと眺めていた。
黒い光沢のある衣装。
ラビーナから徴収した――
バニーガール服である。
こはるは腕を組んで言った。
「……」
「やっぱりエロいな」
プルンが横で浮いている。
「かなりプルン」
テーブルの上の衣装は、ただ置いてあるだけでも存在感があった。
光沢のある黒い生地。
胸元が大きく開いたデザイン。
細いウエストを締めるライン。
腰からヒップにかけての曲線を強調するカット。
そして。
網タイツ。
ヒール。
白い丸い尻尾。
完全に、バニーガールだった。
こはるはしばらく眺めていたが――
ぽつりと言った。
「……」
「着てみるか」
プルンが言う。
「興味あるプルン?」
こはるは素直にうなずいた。
「ちょっとね」
そう言って、衣装を手に取る。
部屋の中で、ゆっくりと着替え始めた。
まずは服を脱ぐ。
そして網タイツ。
指先で丁寧に伸ばしながら脚を通すと、
薄い網の布が太ももからふくらはぎまでぴったりと張りついた。
脚のラインがくっきりと浮かび上がる。
「……」
「これだけでも結構すごい」
次にバニースーツ。
光沢のある生地が身体に沿って滑る。
胸元。
腰。
お尻。
ぴったりとフィットして、体のラインがそのまま強調される。
細いウエスト。
丸みのあるヒップ。
そして小さめの胸。
だが、その分、形の良さがくっきりと出ていた。
最後にヒールを履く。
かかとが高くなり、自然と姿勢が伸びる。
脚のラインがさらに長く見える。
こはるは姿見の前に立った。
「……」
くるりと体を回す。
バニーガール。
鏡の中の自分を見て、思わず言った。
「うわー……」
「我ながら」
「すごくエッチな身体だなー」
胸。
腰。
腹。
お尻。
太もも。
どこを見ても、身体のラインがはっきりと出ている。
網タイツ越しの脚も、ヒールのおかげで長く見える。
プルンが言った。
「似合うプルン」
こはるは少し照れながら笑う。
「まあね」
そのときだった。
ピンポーン。
呼び鈴。
こはるは振り向く。
「誰だろう」
そのままの格好で玄関へ向かう。
ドアを開ける。
「はーい」
そこに立っていたのは――
小鳥遊りり。
「暇だから遊びに――」
と言いかけて。
固まった。
数秒。
沈黙。
そして。
ぷっ。
「ギャハハハハ!!」
爆笑。
お腹を抱えて笑っている。
「ちょっと!」
こはるが言う。
「そんな笑う?」
りりは笑いながら言った。
「あんた!」
「何その格好!」
こはるは普通に答えた。
「戦利品を見てたら試着したくなって」
「着てみた」
りりは涙を拭きながら笑う。
「まあ似合うけど!」
「それラビーナのやつだよね?」
「うん」
「さっき倒して徴収した」
りりはにやっと笑った。
「そうなんだ~」
少しスマホを取り出す。
「ねぇ」
「写真撮っていい?」
こはるは肩をすくめる。
「いいけど」
「撮ったら私にも送ってね」
「記念に残しておく」
「了解!」
そこから撮影会が始まった。
立ちポーズ。
横向き。
後ろ姿。
しゃがみポーズ。
いろんな角度から撮る。
りりが言う。
「ちょっと腰ひねって!」
「こう?」
「そうそう!」
シャッター。
「いいねこれ!」
さらに。
「今度こっち向いて!」
「うん」
撮影は続く。
りりが言った。
「あんた本当いい身体してるわね」
「ラインがすごく綺麗」
こはるが笑う。
「そう?」
「うん」
りりはスマホを見ながら言う。
「胸は小さいけど形がすごくいい」
「全体のバランスがいいから、逆にそれが色っぽい」
こはるは少し照れた。
「それ褒めてる?」
「褒めてる」
撮影はしばらく続いた。
そして。
こはるが言った。
「じゃあ次は」
「りりね」
りり
「え?」
こはる
「試着」
りりは少し考えてから笑った。
「まあいいか」
衣装を着替える。
そして。
りりのバニーガール姿。
こはるは思わず言った。
「うわー」
「すごくいい」
りりは少し照れる。
「そう?」
こはるは正直に言う。
「全然私の上位互換」
「胸一回り大きいし」
「形もいいし」
「見た目は絶対りりの方が似合ってる」
りり
「それ言われると照れる」
こはるは後ろ姿を見て言う。
「お尻も綺麗」
「ラインすごい」
りり
「ちょっと恥ずかしい」
そのまま撮影。
今度はこはるがカメラ。
ポーズを取らせる。
笑う。
撮る。
二人で大騒ぎだった。
やがて。
満足したところで。
二人は座った。
スマホを取り出す。
連絡先交換。
写真データ送信。
「送ったよ」
「こっちも」
それぞれ写真を確認する。
そして。
同時に笑う。
「これすごくエッチだね」
「うん」
そのとき。
りりがふと呟いた。
「こうやってると」
「友達みたいだね」
こはるが言う。
「家に来て遊んでるし」
「もう友達じゃない?」
りりは笑った。
「そうだよね」
「じゃあ」
「これから友達で」
「うん」
二人は笑った。
スマホの画面には。
バニーガール姿の二人の写真。
夜の部屋で。
新しい友達ができたのだった。




