29.バニー怪人ラビーナ
おしりスキーとの奇妙な戦いが終わったあと。
朝の公園には、静かな空気が戻っていた。
鳥の声。
木の葉の揺れる音。
こはるはステッキを肩に乗せて、大きくため息をつく。
「はぁ……」
プルンがふわふわ浮く。
「朝から変なのばかりプルン」
こはるはうなずく。
「ほんとそれ」
「おしり好きすぎて怪人になるとか」
「人生どうなってるのよ」
帰ろうかな、と振り向いたその瞬間。
――ダダダダダダダッ!!
猛烈な足音。
ものすごい速度で人影が迫ってきた。
こはるが振り向く。
次の瞬間。
目の前に、兎月みうが飛び込んできた。
全速力で走ってきたらしく、完全に息が切れている。
「はぁ……!」
「はぁ……!」
「はぁ……!」
膝に手をつきながら必死に顔を上げる。
「き、今日……は……」
「逃さない……わよ……」
こはる
「……」
みうは必死に言葉を続ける。
「わ、わた……し……は……」
「秘密……結社……」
「ドレス……ティアの……」
「幹部……」
「バニー……怪人……」
「ラビー……ナ……」
「ハァ……ハァ……」
息切れがひどすぎて、まるで戦う状態ではない。
それでも必死に言った。
「い、いざ……」
「尋常に……」
「勝負……!」
言った直後、また膝に手をつく。
「はぁ……」
「はぁ……」
こはるは深いため息。
「……はぁ」
完全にやる気がない。
こはるが聞いた。
「ヌギーはいないの?」
みうは顔を上げる。
「この間の戦いで……」
「使いすぎって怒られて……」
「支給されなかったのよ!」
こはる
(あ、元気になった)
説明だけ妙にしっかりしている。
みうは姿勢を正した。
「とにかく!」
「今日は逃がさない!」
ビシッと指を突きつける。
「覚悟しなさい!」
こはるは肩をすくめた。
「朝から元気ね……」
みうはポーズを取る。
「行くわよ!」
腕を広げる。
「変身!!」
その瞬間。
黒い魔力がふわりと広がった。
みうの体を包み込む。
制服の布が光に溶ける。
スカートが宙に舞う。
体がくるりと回転する。
光の中で浮かび上がる身体のライン。
豊かな胸元。
ふわりと持ち上がる柔らかな曲線。
Dカップの膨らみが、光の中で弾むように揺れる。
黒い布が胸を包み込み、
中央には小さなリボン。
くるり。
さらに回転。
腰からヒップへ流れるラインがはっきりと浮かび上がり、
体の曲線がそのまま強調される。
背中は大きく開き、
細い腰から丸く持ち上がるヒップライン。
網タイツに包まれた長い脚。
太ももにはガーター。
ヒールでさらに脚のラインが伸びる。
最後に――
バニーの耳。
そして丸い白い尻尾。
光が弾ける。
そこに立っていたのは。
バニー怪人ラビーナ。
艶やかな黒いバニースーツ。
胸元は大胆に開き、
豊かな膨らみが強調されている。
細い腰。
そこから丸く持ち上がるヒップ。
網タイツ越しに見える脚のライン。
後ろ姿は特に印象的だった。
丸い尻尾の下で、
きゅっと持ち上がったヒップラインがくっきりと浮かび上がっている。
プルンが言う。
「形式美プルン!」
ラビーナは腰に手を当てた。
「どう?」
胸を張る。
豊かなラインがふわりと揺れる。
「すごいでしょ?」
その瞬間。
こはるのステッキが光っていた。
すでに魔力が溜まっている。
みう
「え?」
こはる
「変身長い」
プルン
「最大出力プルン!」
こはるは叫ぶ。
「私の全力!」
「受けてみろ!!」
魔法弾が放たれる。
――ドォォォォン!!
直撃。
ラビーナが吹き飛んだ。
芝生の上を転がる。
数メートル先で止まり、
完全にのびる。
「うぐぅ……」
こはるはステッキを下ろす。
そして叫んだ。
「私は!!」
「おっぱいの大きい人には!!」
「容赦しない!!」
プルン
「嫉妬プルン」
こはるは無視した。
倒れているラビーナを見る。
そして。
衣装を掴む。
「これ」
「回収」
光が弾ける。
怪人姿が解除される。
そこに残ったのは。
バニー衣装。
こはるはそれを持ち上げた。
しばらく眺める。
「……」
くるっと裏返す。
ヒップ部分を見る。
「これ」
「結構エッチね」
プルンがうなずく。
「かなりプルン」
そのころ。
みうはゆっくり起き上がった。
「うぅ……」
ふらふらと立ち上がる。
しかし次の瞬間。
――パシュン!
ラビーナの怪人衣装が光になって消えた。
同時に。
「え」
みうが固まる。
次の瞬間。
ポンッ!
身体の周囲にいきなり大きな黒い自主規制マークが出現した。
「きゃあああああ!!」
完全にパニック。
画面のような丸い黒マークが
胸の位置
腰の位置
にぴったり貼り付いている。
しかもなぜか
「自主規制」
と書かれている。
プルンが言った。
「怪人変身が解けるとこうなるプルン」
こはる
「なんで!?」
みうは必死に両手で体を隠そうとする。
だが。
黒マークが邪魔で全然隠せない。
「ちょっと!!」
「これどういう仕様よ!!」
慌ててしゃがむ。
しかしマークは空中でぴったり追従する。
完全ガード。
だが。
「逆に恥ずかしい!!」
涙目。
こはるが振り向く。
「……あれ?」
みうと目が合う。
みう
「見るなあああああ!!」
次の瞬間。
ダッシュ。
「覚えてなさいーー!!」
全速力で逃げていった。
黒い自主規制マークを体の前後に浮かべたまま、
ものすごい速度で。
数秒後。
完全に姿が消えた。
公園に静かな風が吹く。
こはるはぽかん。
「……」
プルン
「すごい逃げ足プルン」
こはるは肩をすくめた。
「まあいいや」
バニー衣装をバッグにしまう。
朝の公園。
静かな風が吹く。
こはるは帰りながらつぶやいた。
「今日は」
「変なの多すぎ」
そして空を見上げる。
「……でも」
「この衣装」
「ちょっと着てみるのもアリかも」
こはるはバッグの中のバニー衣装を見た。
黒い光沢のある生地。
網タイツ。
ヒール。
そして――丸い尻尾。
こはるは小さく笑った。
少し歩く。
朝の公園は静かだった。
さっきまで
おしりスキー。
バニー怪人。
と騒がしかったとは思えない。
こはるは空を見上げる。
「今日は朝から疲れた」
プルンが言う。
「でもポイントいっぱいプルン」
こはるの目が光る。
「……あ」
「そうだ」
立ち止まる。
「今の何ポイント?」
プルンは指を折る。
「おしりスキー」
「300ポイントプルン」
「ラビーナ」
「200ポイントプルン」
「合計」
「500ポイントプルン」
こはる
「よし」
拳を握る。
「いい感じ」
プルン
「順調プルン」
こはるはうなずいた。
「Aカップ」
「近づいてきた」
プルンが言う。
「目標が特殊プルン」
こはるは胸を押さえる。
「大事」
真顔だった。
そのとき。
遠くから声。
「くそぉー!!」
みうだった。
かなり遠くで叫んでいる。
「次は勝つからー!!」
こはるは振り向く。
もう姿は見えない。
こはるは肩をすくめた。
「元気ね」
プルンが言う。
「幹部プルン」
こはるは歩き出す。
「まあ」
「またそのうち戦うでしょ」
バッグの中には――
バニー衣装。
こはるは少し考えた。
「でも」
「一回くらい着てみてもいいかも」
プルン
「やめるプルン」
こはる
「なんで?」
プルン
「似合いすぎると危険プルン」
こはるは笑った。
「意味分かんない」
そのとき。
遠くから声。
「くそぉーー!!」
みうだった。
かなり遠くで叫んでいる。
「次は勝つからーー!!」
こはるは振り向く。
もう姿は見えない。
こはるは肩をすくめた。
「元気ね」
プルンが言う。
「幹部プルン」
こはるは歩き出す。
バッグの中には
黒いバニー衣装。
こはるは小さくつぶやいた。
「これ」
「結構エッチね」
プルン
「かなりプルン」
朝の公園。
静かな風が吹く。
こはるは大きく伸びをした。
「今日は」
「変なの多すぎ」
そう言いながら――
魔法少女ピンクフリルは
家へ向かって歩き出したのだった。




