エピローグ
Side グレース
娘たちの顔を見て、思わずクスリと笑ってしまった。あの強張った表情、伏せたままの瞳の揺れ――きっと昔の私も同じような顔をしていたに違いない。初めて「王家の血」に選ばれたと知ったとき、そして、婚約者として王宮に迎えられたとき。喜びと誇りと、同じくらいの恐怖と不安。そのすべてが入り混じった顔だった。
周囲が私をどう見ているのか、今となってはよく分かる。
――可哀想な生贄。
――王の精神安定剤。
――寵愛を一身に受ける王妃。
どれも当たっているし、どれも間違っているのだろう。人は皆、自分の目に映る景色を言葉にするだけだ。けれど、肝心なのは私自身の思いだ。私は確かに、幸せなのだ。だから、それでいい。
エレーナはアレックスに選ばれ、ターシャはステファンに選ばれた。血が巡るように、運命は必ず次へと繋がっていく。二人が抱える苦しみも、不安も、重みも、よく分かる。最初はどうしても、その寵愛は重くのしかかる。特に、身体をもって受け止めねばならない時には――息が詰まるほどに。
けれど、ある日ふと気づくのだ。
その重さが枷ではなく、温もりであることに。
ただの鎖ではなく、確かな絆であることに。
「二人も、いつか――良かったと思う日が来るわ、きっと。」
優しく、けれど力強くそう言葉を紡ぐと、娘たちの肩がわずかに震えた。まだ信じきれないのだろう。私も同じだった。何度も心が折れそうになり、それでも笑顔をつくり続けて、ようやく辿り着いた答えだ。
その時が来るまで、私が傍にいよう。
彼女たちが「幸せだ」と胸を張って言える日を信じて。
そう思いながら、二人に向けて穏やかに微笑んだ。
『王家の血』がどんなものか書いてみたかったので書いてみました。
いつもの如く、サラっと読んで寝れるシリーズになっております!!
王妃様マジで可哀想だし、王様病んでない?って思ったけど違うと信じたい……です。




