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王妃様が王妃になったのは、猛獣の尻尾を思いっきり踏んだ結果だった。  作者: まるちーるだ


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王妃様の体験を聞いた私は頑張ると決めました

ChatGPT:


Side ターシャ


にこやかに笑いながら、国王陛下がその夜の出来事を愉快そうに語る。まるで狩りで獲物を仕留めた武勇伝でも話すかのように、誇らしげで、悪びれる様子など一切ない。

――やめて差し上げてくださいまし、王妃様のライフはもうゼロです、と心の中で叫んだ。叫ばないけれど。本気で叫んだら今度は自分がゼロになるのは目に見えている。


「うわ……さんぴー。」


小声で呟いた言葉は誰にも届かなかっただろう。ただ自分の耳だけに落ちるようにして口にした。思ったより声が震えていた。もし万が一、国王陛下に届いてしまっていたら――笑顔の裏に隠されたあの冷たい眼差しで、私の喉をひと撫でされていたかもしれない。想像するだけで背筋に寒気が走った。


それでも、胸の奥から溢れる感情を抑えることはできなかった。私は……絶対にそんなことはされたくない。本能でそう思った。だが同時に、にこやかに笑う国王陛下の顔と、あの夜、私を腕に閉じ込めたステファン様の顔が重なってしまい、心臓が跳ねた。もちろん、そんなことは口が裂けても言えない。誰にも。


「ターシャお姉様。」


思考の沼に沈みかけたところで、控えめに呼ぶ声。振り向けば、エレーナが座っていた。彼女の顔は蒼白で、唇さえも青ざめていた。


「な、何かしら、エレーナ。」


問い返す声が上ずった。私自身も決して冷静ではなかったのだろう。


「わ、私、が、がんばりますわ……っ。」


今にも倒れそうなほど青い顔で震えながら、それでも必死にそう言った妹分の言葉に、私は返す言葉を失った。頑張れ、なんて軽々しく返せるはずがない。何を頑張るつもりなのか、分かっているから。分かってしまうから。


けれど、エレーナがその言葉を吐き出せるなら、私だって覚悟を決めなければならない。血がつながっていなくとも、義理の姉妹として共に立つのなら。

私は心の奥で小さく呟いた。――そうだ、私も頑張ろう、と。


「そうだ、ターシャ。」


不意に国王陛下の低い声が降ってきた。重く、しかし笑みを含んだ声は、どこか逃げ場を与えぬように絡みついてくる。


「君は特に頑張らないとだな。何せ、オクレール公爵家とバランド公爵家、両方の跡継ぎが必要になるからな。」


にこりと笑う陛下。その声音は冗談のようでいて、瞳だけは鋭い。冗談で済ませる気など毛頭ないことは、誰の目にも明らかだった。


その言葉に、胸の奥がぎゅっと痛んだ。

――そうだ。陛下の言う通りなのだ。


私の母の実家、バランド公爵家には跡継ぎがいない。母の兄である現バランド公爵様は子宝に恵まれず、家が途絶えることを恐れていた。そんな折、臣籍降下した王子――ステファン様の相手が、自分の姪である私だと知ったとき、公爵様はすぐに王命を取り付けたという。つまり、私はオクレール公爵家を継ぐだけでなく、バランド公爵家をも守る存在とされてしまったのだ。


二つの公爵家の未来が、私の腹に託されている。最低でも二人――いや、場合によってはもっと。国のために、家のために、私は母であることを求められる。


エレーナの蒼白な顔を横目に見ながら、私はそっと息を吸った。

今夜も、明日も、これからも――大変だろう。体も心も削られるだろう。けれど、それでも頑張らなければならない。私が背負った二つの家のために。ステファン様と共に歩む未来のために。


そう心に深く刻み込むと、不思議と背筋が伸びた。恐怖も戸惑いも消えはしない。けれど、その奥に確かな決意が芽生えていた。

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