好奇心は猫をも殺す
三人称です。
すみません、設定時間間違えました
「……行ったか」
バルバロイはアレンたちが部屋から出て行って戻って来ないことを確認すると大きく息を吐きだした。
「リリスとか言ったか?あのメイド……怖えよ、何であんなに不機嫌なんだよ。俺が何かしたのか?」
バルバロイはアレンとの会話中ずっとリリスからガンを飛ばされていた。視線で人が殺せるならバルバロイは間違いなく死んでいたぐらいに強く睨まれ、自分の執務室なのに敵地のように感じて気が休まらなかった。
「それは災難でしたね、ギルド長」
「……お前も同席すべきだったんじゃないか?副ギルド長アイファ殿……俺を見捨てて逃げ出しやがって」
「いえいえ、アレン様はギルド長にご用事があったのでしょう?部外者である私が同席するだなんて、とてもとても……それにギルド長と副ギルド長のどちらかは手を空けてないと不測の事態に対応できないでしょう?」
「ぐぬぬ……」
栗毛色をした女がドアを開けて顔を覗かす。先触れで来たリリスが不機嫌と見るや否や、そうそうに対応をバルバロイに押し付けた副ギルド長のアイファだ。
笑みを浮かべながら執務室に入って来たアイファをバルバロイが非難するが、アイファはうふふと笑って正論で返す。
バルバロイは反論が見つからず、唸り声を出して拳を握るしかなかった。
「どの様な話をしたんですか?」
「あん?聞き耳立ててたんじゃねぇのかよ?」
「そんなことをしていたらアレン様にバレてしまうでしょう。内密の話だったらどうするんですか」
「だったら訊くなよ。……良いだろう、そんなに気になるなら教えてやるよ」
「あっ、やっぱりいいです」
「おっと、遠慮するな」
バルバロイがニヤリとした笑みをしたのを見て、アイファが不穏なものを感じてドアの方に振り返ると素早く良い笑顔をしたバルバロイが回り込んでドアの前に立つ。
退路を断たれたアイファが頬を引き攣らせる。
「……実はな、マクベス子爵家と我らがアルトロス男爵家の婚約をマクベス子爵家が一方的に破棄したんだってよ」
「あーあー、聞こえませ……えっ?婚約破棄?確かマクベス子爵領ではガラの悪い人が増えて治安が悪化してて……」
「そうだ。ほぼ確実に戦争の準備だな」
アイファは耳を塞いでいたが、それでも聞こえてしまった内容に呆然とし、徐々にその意味を理解したのか、確かめるようにマクベス子爵領の情報を口に出し顔色を青褪めていく。
さらにバルバロイが口にした推測が自分と同じだということにもっと顔色を悪くする。
「で、では、相手は一体……?」
「そんなの言わなくても分かるだろ。今マクベス子爵家と一番関係が悪い家はどこだよ」
「……ア、アルトロス男爵家」
認めたくはなかったが、自分の頭は既に最悪の結論を出してしまった。アイファはフラフラと歩いて執務室のソファーに腰を落とす。
なんとか血色が悪く震える唇を動かしてバルバロイに問いかける。
「……当ギルドはどの様に動きますか?」
「決まってんだろ、こっそりアルトロス男爵家に味方すんだよ。取り敢えず、マクベス子爵家との境の近くにある街道と村、それと森に冒険者を派遣する依頼がアルトロス男爵家から来てる。表向きの名目は例年より魔物の数が多いことを警戒してってことにする。後は影響力のある信頼出来る冒険者を何人か読んでこの話を伝えるぞ。出来ればこの領出身の奴がいい、戦争になったら冒険者をまとめさせて義勇兵として参戦させる」
「わ、分かりました。それなら丁度良く銀ランク冒険者のパーティーが里帰りしていますので声をかけます」
バルバロイの的確な指示にアイファは内心頼もしさを感じつつ、銀ランク冒険者のパーティーの所在を思い出す。
冒険者には黒曜、青銅、鉄、銅、銀、金、白金の七段階の階級が存在する。その中で銀ランクは上位の冒険者だ。影響力は勿論、人格、実力共に不安はない。
「それと、マクベス子爵領の情報収集だな。全く、こういう時は冒険者ギルドが独立組織なのが面倒くせぇな。中立でなきゃいけないなんて縛りがなきゃ、俺が直々に冒険者を率いるっていうのによ」
「仕方ないですよ、冒険者ギルドがどこかの勢力に加担すれば、冒険者ギルドの影響力を危険視した国に支配下に置かれてしまいますよ。今でさえ、魔獣が溢れる大氾濫がなければ独立を維持出来るか怪しいんですから」
「分かってるよ。だから我慢してんだろうが……」
冒険者ギルドのギルド長は冒険者を纏めるという仕事上、腕っ節がなければならない。そのため、ギルド長は大抵引退した高位冒険者がなる。
バルバロイもその例に漏れず、元金ランク冒険者であり、半ば隠居するようにこの町のギルド長に就任した。
だからこそ、こういった荒事があると血が騒ぐのだが、ギルドのルールが邪魔をして裏でコソコソやるしかないのは不満だった。アイファに宥められなくても分かってはいるが、やはり少しばかり口惜しい。
「なあ、アイファ、ギルド長代わらないか?」
「代わりません。そもそも、そんな言い訳が通じる訳がないでしょう!」
バルバロイ自身は妙案だと思ったのだが、アイファにバッサリ切り捨てられて項垂れる。
バルバロイは逆恨みではあるが、もう少し脅かしてやろうと口を開いた。
「そうそう、今回の黒幕には中央の大貴族がいるらしいぞ」
「ひゅっ…………」
「あっ」
気絶してしまったアイファを見てバルバロイはやりすぎてしまったことを悟った。
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次話は6/5十二時に投稿します。




