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1120:スカンジナビア同好会

デオンが持ってきてくれたのはスカンジナビア同好会に関する資料であった。

スカンジナビア同好会ということだけあって、かなりの数の会員が参加してねずみ講として機能していたことが伺える。

フランス製のアクセサリーや化粧品などを安く仕入れて、品質を悪化させて販売する悪徳業者……。

その中心人物だった男についても情報が渡された。


「ベルデロッチ男爵……この事件の首謀者とされる男です」

「ふむ……男爵ということだが、元は貴族の爵位は上だったようだね?」

「その通りです。元々は子爵して活動をしていた人物のようですが、反グスタフ派に所属していた為に、降格の対象となったようです。特に彼の弟は仮面舞踏会におけるグスタフ陛下暗殺未遂犯の友人であり、関係者でもあったようで私財と爵位を没収されて翌年に自殺しております」

「自殺か……家族を殺された恨みを男爵が持っていて、それを実行に移そうとしたのであれば話の筋が通るな……」


このベルデロッチ男爵は中々のやり手のようだ。

なんでもこれまでにも多くの企業を保有していたようだが、いずれの会社も去年までに全て事業を清算しているようだ。

さらにこのベルデロッチはストックホルムにある新聞社と懇意だったようで、彼から多額の支援金が送られていたことも既に発覚している。


これは事件直後に国王暗殺の報道を大々的に飛ばし記事で報じ、次期国王にアドルフ殿下ではなく別の人物が即位する予定とする見だしを記事にだして大誤報を行ったのである。

これに同調するかのようにストックホルムにある軍の一部には行動を起こそうとした者達がいたようだが、陸軍内部で不穏な動きをしている部隊がいるという通報を受けて、この者達が捕縛されて失敗に終わっている。


デオンの資料によれば、この者達は元貴族や貴族と懇意であった軍人であり、それぞれの言い分として『陛下が暗殺されたという速報を聞いて、他の王族の方々に危害が加えられる恐れがあると判断し、独自に守るために行動を起こそうとした』と語っており、名目上であれば問題なかった上に、彼らの行動しようとしていたものは近衛部隊との接触であったとも伝えられている。

いずれも数百名以上の兵士を動員できるだけの地位があった人物だけに、こちらは唆されたのか、もしくは誤報を受けて決起の合図と判断して行動したのか今でも取り調べが続けられているそうだ。


「問題の部隊だが……彼らは同調して行ったのだろうか……それもと、誤報した新聞社がベルデロッチ男爵の号令を合図したのだろうか……」

「恐らくは後者の可能性が高いでしょう。今現在までに拘束されている軍人たちの軍宿舎や自宅を家宅捜査していますが、決定的な密接関係をうかがわせるような証拠が発見されておりません」

「うむ……であれば、彼らは誤報を真に受けて行動してしまった可能性もあるということか……それにしても、ベルデロッチ男爵と関わっていた新聞社が誤報を出したとなれば、それは一番問題ではないか?」

「すでに編集長や社長などを拘束して、ベルデロッチ男爵と金のやり取りがどの程度行なわれていたか捜査している最中です。不明な資金源が流れていたことは間違いないでしょう」


デオンの調査によれば、この新聞社はゴシップ関係を取り扱っている新聞であり、その新聞社がグスタフ陛下が撃たれてから直ぐに号外を出してストックホルム中の各所に大号外として「国王暗殺される!」という見出しを作って飛ぶ鳥を落とす勢いで売りさばいていたという。

直ぐに王国政府が「陛下は健在なり」と表明するまでに、この号外を信じた一般市民らが泣きながら宮殿に詰め寄って雑踏事故が起きそうになったという事案まで起こされたという。


後に、ベルデロッチ男爵から多額の支援金を受け取っていたことが判明してからは、この新聞社も捜査対象となって今現在までに新聞社には多くの憲兵隊などが捜査に当たっているそうだ。

主に虚偽情報を流した罪に当たるそうだが、果たして繋がっていたとすれば軍と連携して政権を掌握するために動いたのではないだろうか……。


「これらの資金を動かしていたのがブラフだとしたら、ベルデロッチ男爵は相当の曲者だぞ。自身は手を汚さずに仲間に凶弾を放たせてからその現場から逃走し、既にスウェーデン側にもいないだろう……。クーデターが成功していれば、彼は舞い戻ってきたはずだ」

「ベルデロッチ男爵がクーデターを画策するために実施していたという事でしょうか?」

「新聞社と繋がって号外を行って軍隊を動かそうとしていたのだ。そのくらいのあくどい事をやっても問題ないと判断するような人物が実施していたのであれば、当然失敗した時のプランも考えていたはずだ。こういうあくどい事をする人間はそう言った方面に知恵が回って色々とやっているのだ。ベルデロッチ男爵も、すぐに王室側が立て直しを行ってきた事を衝撃的に感じ取っていたに違いない。もし、王室が混乱していたらその隙に乗じて軍隊を動かしてクーデターを画策していただろう。」


クーデターを画策しているとなれば、軍内部だけでなく迅速に現王室の関係者を排除して別の人間を取り立てる予定だったのは間違いないだろう。

新聞社や軍人たちも、ベルデロッチ男爵の手のひらの上で踊らされていたとみて間違いないようだ。

ベルデロッチのやり方としては、グスタフ陛下が直ぐに暗殺されたと騒ぎ立てて、王位継承権争いをワザと誘発させてから国内において混乱を起こす予定だったのだろう。


その証拠に、現状において世論誘導も兼ねて工作行為を行っている上にこれらの重点的な拠点に対する資金援助まで行っている。十中八九彼が支援しているとみて間違いないだろう。

おまけに、彼の行っていた事業などを精査しても金の流れが新聞社に向かっているのも【政権内部の不和を煽り、軍部を焚きつけてクーデターを画策していた】とみて間違いないだろう。

少なくとも、そこら辺の扇動家より賢いやり方でやっている。


新聞社側が国王逝去の号外を行い、無知な民衆を焚きつけて混乱をしている隙にベルデロッチの息のかかった軍人らを動員してアドルフ殿下らを排除し、貴族に親和的ないし傀儡的な王族を国王に沿えて貴族政治の復権を目論んでいたと言われても筋が通ってしまう。

仮に、このクーデターが成功していれば彼は貴族政治を復活させた英雄であると同時に、フランスとは距離を置いた政策を実施することだろう。


つまり、今現在ロシアをスウェーデンは傀儡政権を樹立させているが、より同化政策に近いやり方で分離させている中央政府機能を集約して、スウェーデン=ロシア同盟を締結して東方地域の団結を図る狙いもあったのかもしれない。

そうなったら北米複合産業共同体との戦争においても、対スウェーデンやロシアを想定して軍を配備しなければならないために、予備役の招集も必要になってきてしまう。

ベルデロッチの狙いがそうであったなら、背筋が凍る想いだ……。

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― 新着の感想 ―
やはり連座制……王家への暗殺は未遂も含め老若男女問わず三族皆殺しが一番……
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