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グスタフ陛下の逝去を受けて、フランス政府では内外を通して王族や皇族関係者の暗殺を目論んでいるとされる組織のリストアップや、今なお戦闘を続けている北米複合産業共同体との戦争で、相手側から放たれるスパイの摘発に力を入れるようになった。
グスタフ陛下を狙ったのは国内の反対派貴族であったが、彼らが過激派と繋がっていないという事はまずあり得ないだろう。
さらに言えば、反対派が軍の一部と協力して武器や資金面で協力関係にある可能性がある旨も臭わせる事案でもあるのだ。
というのも反対派の貴族が軍から払い下げられたフリントロック式のマスケット銃を複数保有しており、しかもそのマスケット銃の購入者についても現在調査が行われているそうだ。
通常旧式化された武器については、身元確認などを行ってから払い下げという形式となっているのだが、犯人たちが持っていたマスケット銃には銃の識別番号となる刻印が意図的に削られており、この刻印が削られていることによって、何処で放出されたものか分かっていないという。
「認識番号は削られており、狩猟用としてスウェーデン軍で払い下げとして貴族や富裕層向けに売りに出された代物だと伺っております。そういった点を踏まえても、スウェーデン軍内部の中で、グスタフ陛下暗殺に一役買った人物がいると見て間違いないでしょう」
「軍部が今回の事件に関与していたら厄介だが……貴族出身の軍人もいるのだろう?グスタフ陛下は武功を挙げて国家に貢献すれば赦すと言っていたが、そういった人物の取り調べはしているのかね?」
「既に行っているとのことです。グスタフ陛下より爵位の降格などを受けた貴族出身の軍人を拘束し、金の流れなどを調べているそうですが、今のところ有力な手掛かりはないそうです」
「……刻印が削られている事を踏まえても、軍内部に協力者がいるのは間違いない。貴族や富裕層なら銃のデコレーションや塗装を重視して見栄っ張りの仕様にするからね……わざわざそれを削ってまでやるという事は殺しても問題ないように仕向けている証拠だ」
民間人でも貴族の嗜みでキツネ狩りといった狩猟を行う事があるため、貴族中心の政治の時代においてはこういった狩猟用のマスケット銃を改造してデコレーションであったり、弾丸の拡散力を高めるために複数発の弾丸が入ることができるショットガンの元祖ともいえる鳥撃ち銃などが開発・生産されているが、これらはまず庶民が簡単に入手できる代物ではなく、貴族や富裕層における趣味で購入するものだ。
貴族や富裕層からしてみれば、決してマスケット銃とて安い買い物ではない。
暗殺未遂事件などを機に、全ての富裕層や貴族が保有しているマスケット銃には刻印や識別番号が割り振られており、これらを紛失した場合の罰則規定などを設けられているほどだ。
……今現在、スウェーデンの各所で貴族や富裕層で登録されているマスケット銃の検査を行っているそうだが、果たして紛失者は現れるのだろうか……。
グスタフ陛下を暗殺した理由も恐らくは怨恨の説が有力だろう。
怨恨というものは恐ろしい。
例え、僅かに関わりのあった人物であっても坊主憎けりゃ袈裟まで憎いを実践して殺してしまう。
僅かな恨みや考え方の差異であっても、時に人を殺める原動力になってしまうのだ。
「グスタフ陛下を暗殺した犯人たちは元貴族や令嬢だと言っていたが、彼らがグスタフ陛下の統治の際に不利益を被っていたとしても、今になって暗殺する理由は何だろうか……」
「恐らくですが、グスタフ陛下の次期改革に掲げていた『貴族法案』が関係しているのではないでしょうか?貴族の収入や納税額を公開して、透明性を行うという法案を出そうとしていたようです」
「つまるところ、貴族側がやましいことをして不正な利益を出している所を抑えようとしていたというわけか……グスタフ陛下に恨みを持っていて、それでいて貴族の地位に居ながらあくどい事をするような連中であればやりそうな事だ。彼は庶民や農民のために身を切る改革を行い、それを実行に移してきた……それで恨んでいた連中に殺されたとなれば、余とて怒りを抑えるのが精一杯だ……」
「陛下……」
「すまんデオン、だが……盟友が殺されたとなれば話は別だ。あの人は私のためにわざわざ身分を偽って入国してやって来たぐらいなんだ。彼との話は楽しかったし、改革の話で盛り上がった。ブルボンの改革を参考にスウェーデン本国で実行し、それで成功をおさめたんだ。庶民や農民の生活を良くした改革者だ。なのに、なぜ死ななければならなかったのか……」
史実の暗殺事件を回避して生きてこれたのだ。
なのに、運命とやらはそう簡単に見逃してはくれないようだ。
ジョゼフも史実より8年ほど長生きはしたが、病魔が身体を蝕んで亡くなった。
グスタフ陛下も、仮面舞踏会での暗殺を生き延びたが……今回の事件が原因で合併症を引き起こして亡くなってしまった。
改革は上手くいっているはずだ……。
なのに、なぜ死んでしまうのだ。
歴史が、転生者によって変えられている運命を強引に修正しているのだろうか?
それとも、長生きした分を別の形で終わらせようとしているのだろうか?
……それは分からない。
しかしながら、グスタフ陛下が暗殺されてこの世からいなくなってしまった……。
それは変わり様の無い事実だ。
俺が受け入れなければならないのだ。
馬車から降りようとした際に、複数人の暗殺者からの発砲を受けた。
きっと、先の暗殺を回避された事で貴族や富裕層の中から反グスタフ派の者達に知恵がついたのだろう。
単独犯の暗殺犯では一発目で終わってしまうマスケット銃では「失敗してしまう」と学んでしまったのだ。
故に、2発目、3発目を発射できるように工夫をしたのだ。
この時代には連装式のマスケット銃は実は開発こそされていて、実際に運用もされているのだが、如何せん連装式は故障や暴発する事案が多く寄せられており、実戦では不向きとされて一部の奴しか持っていない珍兵器扱いであった。
故に、グスタフ陛下を暗殺したのは計画的な殺人事件として見るべきだろう。
これに加えて、暗殺を起こした実行犯のグループには他にもメンバーがいたのは確実であり、逮捕されたメンバーからも証拠が挙がっている。
彼らはスカンジナビア同好会というフランス製のアクセサリーや化粧品などを輸入販売する事業者の契約会員だったようで、このアクセサリーや化粧品などを格安に販売していたようだが、この事業者は悪質なねずみ講をしていた上に、製品を偽装していたことも相まって我が国の政府側がスウェーデン側にクレームも入れて抗議した事があり、結果としてスカンジナビア同好会は事業を清算して解散したとされている。
(……その時の伝手で知り合った、もしくは資金源を確保していたとなれば協力者も多くいるはずだ。我が国にも、同調者が出てくる可能性もある)
俺はデオンに現在までに判明しているスカンジナビア同好会に関わる資料を持ってくるように命じた。




