表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1120/1123

1118:盟友

☆ ☆ ☆


1797年1月20日


おはよう、あまり気分は良くない。

良くない理由は様々あるが、一番は改革派としてスウェーデンの為に尽力してくれていたグスタフ3世陛下が亡くなったことが伝えられたからだ。

新年早々に銃撃事件に遭って胸部を撃たれたとするニュースが飛び込んできた時、再び歴史の再現が行われてしまったのかと驚愕してしまったほどだ。

そして、その通りになってしまった。


当初は胸部を撃たれたものの、近くにいた医師や主治医たちがフランスで学んだ鉛玉の摘出方法や止血法を実践したお陰で、すぐに鉛玉は摘出して容態は安定していたと聞いていた。

これで一安心だと思っていたが、現実はそう甘くは無かった。


国土管理局の情報担当官からの諸外国に関する報告で、グスタフ3世の容態が急変して亡くなった事が伝えられた。

死因は撃たれたことで出来てしまった傷口が変色しており、鉛玉と様々な合併症が誘発して起こったショック症状によるものであると伝えられたのである。

この出来事を伝えにきたデオンの表情も暗かった。

彼女はお忍びでフランスにやってきたグスタフ陛下と会談をした事がある上に、グスタフ陛下と親しかったフェルセンの事を気にかけていた。


「そうか……グスタフ陛下が亡くなったか……」

「はっ、すぐに御子息であるアドルフ殿下がグスタフ4世として国王に即位したとのことです。引き続き、フランスとの連絡役としてフェルセン殿を据え置くとのことです」

「……うむ、フェルセンはこっちにいたほうがいいからな……今、祖国に戻ったら反グスタフ派の面々から暗殺されかねない……」


フェルセンの末路は悲惨なものであった。

彼はアントワネットをはじめとした王族を革命政府から逃がそうと努力していたが失敗し、祖国スウェーデンに帰還して政治家や軍人としての頭角を現していた。

だが、彼のことを妬んでいた群衆による集団暴行事件が発生し、リンチされた末に殺されたのである。

しかも、この時に現場には軍人たちがいたそうだが止めに入りもしなかったという。

仮に、グスタフ陛下の暗殺を狙っていたのが反グスタフ派であるとすれば、グスタフ陛下の寵臣として信頼されていたフェルセンが祖国に戻った場合に、彼が暗殺されるリスクも高くなる。


スウェーデンで新たに即位したグスタフ4世は、19歳という若さで国王に即位したが……彼の補佐としてグスタフ3世の実弟であるカール13世がサポートに入っているという。

これは史実でも同じ流れではあるが、異なる点をあげるとすれば貴族の影響力が衰えている点だろうか……。


実のところ、スウェーデンの政治情勢はフランス並に荒れていた時期であり、特に国王派と貴族派の間で対立が起こっており、グスタフ陛下も貴族が牛耳っていた議会を一掃して王政政治として権力の一極集中化を行ったことで、庶民層から熱烈な支持を受けていた反面、冷遇された貴族たちからは相当の恨みを買っていたともされている。

史実ではこれが原因で暗殺された上に、後継者であるグスタフ4世の摂政を行っていた人物がロシア帝国からの支援を受けてクーデター計画を未遂とはいえ実行していたともされているのだ。


こうしたこともあり、デオンに今ある情報で犯人たちのことについて知っている事は無いか尋ねた。


「事件で捕縛した犯人たちはどうしているのだ?国土管理局に情報は共有されているのか?」

「はい、現在までに逮捕された実行犯は3名……いずれも元貴族や名だたる令嬢であった人物であることが判明しております。反グスタフ派として地下組織を形成していたらしく、新聞社の中にも自分達の意見を取り入れるように工作活動を行っていた形跡が見られています。今現在、フランス政府とも強力してこの組織が平等思想主義者や薔薇十字団の残党が紛れていないか捜査を行っているところであります」

「反グスタフ派か……貴族中心となって今回の事件を起こしたのであれば、より一層規制なども厳しくなるだろうな……」

「現に、逮捕されたメンバーは没落したとはいえ貴族の身分であったり、貴族だった者が大半を占めております。逮捕された女に至っては、グスタフ陛下の治世を批判しており、貴族を議会から追い出したせいで自分達の生活が貧しくなってしまったことを挙げていたとのことです」

「貴族による対立が原因だとすれば、国内の政治的な目的でのテロ事案という事になるな……我が国でもオルレアン派は取り締まったが、それ以上にグスタフ陛下の治世において貴族への発言権の抑制は徹底していたからね……その恨みが爆発した形となって現れたのだろう……」


グスタフ陛下の治世において、貴族中心の政治から王政政治への転換が進められた事もある。

特に、貴族政治によって庶民への不平不満が高まっていた際に、グスタフ陛下は実弟であるカール13世と共にクーデターを起こしてスウェーデンの政治体制の改善と、啓蒙活動により庶民の生活を改善しようと躍起になっていた。

少なくとも、私利私欲のためのクーデターではなかった事は確かである。


そんな中で起こった今回の事件は、国内外からして衝撃をもって受け止められており、特に改革を推し進めている我が国もさることながら、フランスのブルボンの改革に倣って貴族中心の政治体制からの転換を推し進めている諸外国にとっては、北米複合産業共同体との戦争よりも衝撃をもって伝えられているそうだ。


「今のところ表立って貴族からの反発があるわけではないですが、イタリア連合王国であったり、スペインやポルトガルなどでは一部の貴族による私利私欲とも取れるような行動などを理由に爵位の降格処分や剥奪、追放といった重い処分を実施しておりました。これにより、事件を倣って王族や皇族に対する危害を加えようとする輩が出てきてもおかしくはありません。周辺警護を強化すると同時に、我が国でも警戒を強化しております」

「うむ……今回撃ってきた奴らは馬車からグスタフ陛下が下りようとしてきた際に発砲したそうだな……単独では失敗すると判断して複数名で狙ったのであれば、確殺することを目的にしたのだろう……3人目の発砲がグスタフ陛下の胸部に命中したと聞いているが、それは事実かね?」

「仰る通りです」


犯人たちは頭がいい。

初弾が失敗する事も踏まえて、複数名で実行している。

1人目と2人目の弾丸はグスタフ陛下に当たらなかったが、3人目から放たれた弾丸が胸部に命中してしまったようだ。

もし、単独犯の犯行であればグスタフ陛下も致命傷を負わずに済んだのかもしれないが、フリントロック式のマスケット銃を至近距離から発砲を受けて致命傷を負ってしまった事が、弾丸を摘出しても合併症を引き起こしてしまった可能性が高い。


この時代の弾丸は鉛で出来ている。

その鉛の毒や空気に臓器が触れたことでウイルスや細菌が侵入したのだろう。

グスタフ陛下が亡くなったことは大変痛ましい事だ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー

☆2020年9月15日に一二三書房様のレーベル、サーガフォレスト様より第一巻が発売されます。下記の書報詳細ページを経由してアマゾン予約ページにいけます☆

書報詳細ページ

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ