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1111:狐

大改革の進捗状況……。

それは決して大多数の王国の国民はおろか、政府の幹部でも知られていない秘密だ。

所謂、極端な平等思想主義者やカルト宗教のような者達から国を護るために非情な手段を以ってしても【新秩序体制】を維持することを名目に創設された大改革事案。

欧州大陸において、フランスが中心国家となって民衆への改革を行い市民権を与えると同時に、無責任な報道や流言飛語に対して厳罰化を行うシステムでもある。


例えば風刺画に関しては『王族や皇族に関わる案件については、司法などで明確に有罪評決などが言い渡された場合に限り、風刺画として王族や皇族の人物を模倣したものを描くことを認可する』というものに変更された。


たかが風刺画かと思うかもしれないが、その風刺によって宗教関係者や政治結社を激怒させて死傷者が出た事案は存在する。

特に、20世紀半ばから民主主義に享受されていた日本でも風刺が原因で死傷者を出す事態が起こったことがある。

詳細は省くが、皇族に対して侮辱的な内容を含んだ短編小説を記載した雑誌の社長宅に右翼が突撃して家にいた複数名を死傷させた事例だ。


この事件が発生した1960年代において日本では学生運動やそれに伴う日本赤軍などの極左暴力集団によるテロ事件が盛んであったこともあり、暴力行為が日常になってしまった。

また政治家が演説中に刃物で暗殺された事例もあり、まさに右も左も暴力によって解決しようとした混沌とした情勢となってしまっていたのだ。


そして何よりもフランスにおいては21世紀においてイスラム教の預言者の風刺画を掲載した風刺新聞の会社に自動小銃で武装した男が乗り込んで銃撃を行ったテロ事件が発生している。

イスラム教の預言者は神聖な扱いをされているのだが、その風刺新聞では預言者を茶化すような風刺画を何度も掲載しており、結果としてこれに激怒した過激派が銃撃事件を起こしてしまった。


この銃撃事件の数か月後にはパリで同時多発テロ事件が発生しており、このテロ事件によって数百名に及ぶ死傷者を出してフランスにおける移民や難民の問題が表面化。

さらに過激思想に染まった移民や難民の処遇を巡って極右勢力が大躍進を遂げ、結果としてフランスの野党第一党の地位に就くに行ったのである。


こうなってはならない。

あってはならないのだ。


右も左も関係なく、過激派が台頭し許容される社会などあってはならないのだ。

暴力行為やテロ事件を一度でも許してしまえばそれに味を占めて模倣犯が現れる。

元総理暗殺事件でも事件の首謀者の境遇を擁護する報道機関や世論が作りだされた結果、翌年には爆弾テロ未遂事件が発生したし、日本において政治家を狙った暗殺・襲撃事件が多発。

第三次世界大戦時においては民衆主導による政治的暴力行為が顕著に至るようになったのだ。


自分とは異なる主義主張をする人間を「人間ではない者、いくらでも差別や暴力を賛美してもいい」となれば、もはや止めることはなできない。

セルビア人の青年がオーストリア皇太子夫妻を銃で暗殺したことで第一次世界大戦が勃発したのもそうだ。暴力行為の連鎖によって引き起こされたものであり、暴力が暴力の連鎖を招くのだ。


そして20世紀、21世紀になってもこの連鎖は止まらなかった。

結果として熱核戦争に至り、現代文明は無くなったのである。


(だからこそだ。民主主義が台頭して言論の自由が保証されても”誹謗中傷を起こして相手を傷つける”ことを良しとしたり”民族や宗教を根絶せしめんとする極端な過激派”の出現を抑え込むにはこれしか方法がないのだ。テロや暴力を賛美するような行動を起こす者は『死罪』にしなければならない。報道は公正公平かつ中立に……これを大原則として欧州協定機構にも伝達しなければならないのだ……)


風刺画も批判や批評を行う分であればいいかもしれないが、宗教や王族や皇族といったその国、その地域における大切な物や象徴といえる物について『侮辱』や『差別的』であった場合は、その宗教や象徴を大切にしている者達に対して「死ね」と投げかけるのと同じであり、その結果が命のやり取りとして殺人事件やテロ事案を引き起こしてしまうのだ。


故に、誹謗中傷などは厳格化して実刑を伴うものにする。

犯罪の告発などは精査を行い、その告発が虚偽ではなく事実であると認められた場合にはその内容を発信して指摘することを許可することにしたい。

それまでの間は、告発者を保護して状況を精査する仕組みを整えるつもりだ。

古今東西、重大事件を告発した者に対して加害者側から報復を受けたり、嫌がらせを受ける行為が多発しており、告発者の身柄が守られる制度もまた必要だ。


ただし、確実な証拠を必要とすることが絶対条件となる。

これは犯罪を助長するのではなく、告発が虚偽であった場合には様々な人間が迷惑を被る上に、虚偽の場合には告発された相手やその関係者が気を病んで自殺してしまうケースが多いからだ。

さらに、その地域全体で虚偽の告発によって風評被害を被って中長期的な影響が及ぶケースもある。


とある街で女性議員に対する性的なハラスメントを受けたとする告発が虚偽であり、それが虚偽であったにも関わらず世界中でニュースで拡散されて誹謗中傷めいた内容の書き込みや抗議の電話が役場に殺到して業務に支障が出るほどの被害にあった。

後に裁判を通じて告発が虚偽であった事と、虚偽の告発をした女性議員に有罪判決が下ったものの、その判決が決定するまでの間、議会は停滞した上に無罪と判明してからは一部の告発賛同者の謝罪こそあれど報道機関側からの謝罪や反省を述べる言葉は無かったとされている。


報道は扱い方を間違えたら人を殺す武器になる。

情報伝達装置であり、それ以上でもそれ以下でもない。

報道側のミスで冤罪を産み出すことも可能なのだ。

とあるカルト宗教が毒ガス兵器を散布した際に、第一通報者の男性を犯人扱いした時から何も彼らは責任というものを取る事をしなかった。

そして、そういったミスを産み出しても余程の事が無い限りは誤情報や冤罪を産み出しても軽い謝罪だけで済ましてしまう。


それではダメなのだ。

民主主義であるならば、恣意的に人を陥れるような発言や言動、持論を述べても無責任であってはならないのだ。

むしろ民主主義だからこそ一人一人に権利と責任が生じる。

その権利ばかりが力を増して責任が軽くなってしまっているのである。


報道機関に関する取り決めは厳格化した上で、彼らに必ず責任を決めた上で報道を行うことにする。

これは新秩序体制において言論の自由を弾圧する目的ではなく、流言飛語や未確定の情報を報道機関が都合の良い情報に捻じ曲げて報じ、極端な意見や論説が広がるのを防ぐためだ。

故に、これは一か国だけでなく欧州協定機構加盟国全てで実施・取り組むことを目標として諮問機関なども作る予定であるのだ。


北米複合産業共同体との戦いが終われば、この新秩序体制に必要不可欠なもう一つのパーツが動きだすのである。

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