18話 二人だけの未来を、青に誓う
◇
「――。神様の力は役に立ったかい?」
白い世界で、かつての父親は私を優しく見つめていた。
私の記憶にあるよりも、顔に多くの皺が刻まれている。
「……それなら良かった。遠くからでも、神様を通して――の幸せを祈り続けているよ」
声を上げて、父親に手を伸ばそうとする。
しかし触れるよりも早く、世界は霧のような白亜に包まれた。
◇
「――ト。シャーロット?」
目を開けると、心配そうにこちらを見つめるテオドアの瞳があった。
「テオドア……。ごめんなさい、うたた寝をしていただけよ」
あの大騒動から一週間、この国は何事もなかったかのように動き続けている。
私はテオドアに誘われて、王立公園に散歩に来ていた。
木陰のベンチで休んでいるところ、疲労がたたったのか、少しまどろんでしまったらしい。
「それなら良かった。……あれから、君の身に何も起こっていないかい?」
「ええ、平和そのものよ。ただ、どうしても一つだけ……気がかりなことがあって」
「……まさか、エドワード達のことか?」
瞬時に心の中を見抜かれて、私は思わず苦笑してしまう。
「私のせいで、エドワードがあんな凶行に及んでしまったのなら……。二人を切り裂いてしまったのは私のせいかと思ってしまったの」
「あの行動を選択したのは、エドワード自身だ。君が気に病むことではない」
「そうかもしれない。でもね、もし機会があれば……二人の仲を取り持ってあげられないかなと思っているのよ。本当に心通わせていたのなら、きっと今回の騒動も乗り越えられるはずだから……」
「君は、少し優しすぎるな。殺された相手に慈悲をかけるなんて、普通は思わないものだよ」
テオドアは困ったように、けれども柔らかく笑みを浮かべる。
(できるなら、テオドアとエドワード王子の仲も、何とかしたいけれど……)
まだ二人の間に溝が残る状態で、このことを言葉にするのは早いだろう。
私はテオドアの青の瞳を、じっと見つめる。
「ねえ、テオドア。私……あなたと出会えて良かった。あなたに好きになってもらえて……こんなに幸せなことないわ」
「シャーロット、それは私の台詞だ。君のお陰で、私は人の色を見ることを恐れることがなくなった」
「そう、なの?」
「例えどんなものを魔眼で見たとしても、君の清らかな色がそばにある。そばにシャーロットがいるだけで、何も怖がる必要がないと思えるんだ」
「……あなたの助けに、私もなれているのなら嬉しいわ」
ただ、助けられているだけじゃない。
お互いに支え合っていることが、何よりも心を温めてくれる。
視線を絡ませながら、私達は一緒に微笑みあった。
「シャーロット。今日誘ったのは、大事な話があるからなんだ」
「大事な話?」
テオドアは一度立ち上がり、ベンチに座る私の前に跪いた。
真剣な青の瞳が、私を心の奥底まで射抜く。
「私と……婚約してほしい」
「……っ!?」
「君を誰よりも幸せにし、何からも守ってみせる。生涯をかけて、君のそばにいさせてくれ」
テオドアが私に向けて、手を差し伸べる。
彼への熱い想いが、胸いっぱいにこみ上げた。
答えなど、決まっている。
私は迷うことなく、彼の手に、自身の手を重ねた。
「テオドア……。私もあなたのことを愛している。ずっと、この先の未来……あなたと一緒にいさせて」
私の答えを聞いたテオドアは、青の瞳を喜びで満たすように震わせた。
「私も、君を愛している。シャーロットとなら、どのような過酷な未来も乗り越えられる」
私達の進む先には、まだたくさんの困難が待っているかもしれない。
この人となら、きっと全ての時間を愛おしめるだろう。
穏やかな風が舞い上がっていくのを感じながら、私達は幸福を青空に刻みこんだ。
最終話までご愛読ありがとうございました!
二人の物語は一旦ここで終わりとなりますが、番外編の予定もあります。
ページ下部のブックマーク、★1~5の評価、感想、リアクションなど頂けると、今後の投稿の励みになります!
<代表作>
「悪役令嬢は全員生存エンドを目指す」
https://ncode.syosetu.com/n4076mi/
↓ページ下部に直リンクありますので、ぜひ覗いてみてください!





