9.愛なのか?
※この話は、バッドエンド、ホラー、胸糞です。
何とか海岸側沿いのホテルに辿り着いた俺達は、ドアというドアを釘で打ち付け、動かせるものは全て使わない部屋から運び出しバリケードを築き、片足がキャリーカートとなった俺でも移動がし易く、何かあった時に逃げ出しやすいように、軽トラを止めた地下駐車場に1番近い部屋に落ち着いた。
「あの、さっきはごめんな。パニック起こしちゃって、お前いるのに…。」
「あ?ああ、仕方ないよ。気にすんな。」
その言葉は嘘だった。
そして、木下の言葉も嘘だ。
冷たい目をして、口角を上げて、頬に赤く染めて荒く乱れた息を吐きながら、椅子を振り下ろし続けていた木下。あれがパニック状態のわけがない。
美しくも恐ろしいその姿は喉刺さった小骨のようにずっと俺の気持ちを蝕んだ。
「う…ん…あっ…。」
その夜も木下のうなされている荒い喘ぎ声が聞こえていた。
「き…」
声をかけようと思ったが、動く気配があったので口をつぐんで様子を伺った。
木下が身を起こし、俺の背中に触れた。皮膚がなくなり剥き出しの腐肉とベタベタの黒い体液に塗れた背中をゆっくりと何度も何度も撫で摩り、時々グッと力が籠る。
「はあ…」
木下の吐息が聞こえる。そしてゆっくりと湿った音が聞こえた。
「あっ…あっ…ああぁっ」
もうわかった。
木下の喘ぎ声が高くなるにつれ、湿った音は早くなり、一際高い喘ぎの後止まった。
木下はオナニーしていた。
それはいい。それはいいんだ。
しかし、オカズはなんだ?脳内か?それならいい。
でも俺の背中に触れた。
それは何だ?
愛か?愛なのか?
木下は俺を愛し始めてくれたのか?
俺の胸は高鳴った。いや、それは嘘だ、高鳴る心臓はもう動いてない。だが、期待した。
「なあ、木下…。」
俺は矢も盾もいられず身を起こした。
「あっ!うわあああっ!あっお前!寝てなかったのかよおおおおおおっ!」
木下は俺が、ゾンビが眠らないことを知らなかった。
木下は、そそくさと衣服を整え、手を拭って俺にいった。
「いつから気づいてた?」
「昨夜…いや、状況が状況だったから悪夢でも見てうなされてるのかと…。」
そう答える俺は、木下の右手から目が離せなかった。
木下の手は汚れていた。
俺の赤黒い体液と、木下の精液で。
俺の背中は皮膚がなくなり剥き出しの腐肉とベタベタの黒い体液に塗れている。
その背中に触れた手で、ダダ漏れた腐敗した体液のついた手で、己のちんこを扱いたのか?
それは愛か?
本当に愛だと思っていいのか?
いいのか?




