5.気持ちだもんよ。
※この話は、バッドエンド、ホラー、胸糞です。
ホームセンターの駐車場は、元ゾンビだった腐った臓物ときったねー汁に塗れていた。木下は眉間に皺を寄せて、その荒廃した様を見てため息を吐いた。
ああ、こんな殺伐とした世界に木下をいつまでもいさせたくない。それに、俺に残された時間もそれほどあるとも思えない。俺は、この先、迅速に木下を無事に港まで送り届けるために必要になりそうなものはないか?と周囲に目を配った。片隅に重い木材や塩ビパイプなどを買った時にレンタルできる、店名の書いてある軽トラがあるのを見つけた。これなら店内の事務室に鍵があるはずだ。拝借するのにちょうどいい。
「木下、あれをもらおう。」
俺は木下の肩を叩き、声をかけた。木下はハッとして俺に目を向けた。
「あ、おう…あれって?あの、軽トラか。」
「おう。行くぞ。」
俺達は事務室で軽トラの鍵を手に入れ、店内の武器になりそうな工具や非常用の缶詰やレトルト食品などを荷台に積めるだけ積んだ。
「ここから港に向かう途中にカラオケボックスがある。今日はそこで夜を明かそう。」
俺と木下は車に乗り込んだ。鍵を回すとエンジンはスムーズにかかり、車は走り出した。
木下は何も喋らない。俺はと言えば、木下の少し疲れた横顔が美しく、声をかけづらく感じていた。窓からの風に靡く10年前とは違ってる髪の色と見え隠れしキラリと輝くピアスは、俺には新鮮なときめきをもたらした。
「金髪とピアス、似合ってるな。」
木下は俺の言葉に静かに笑った。
「はは…ありがとな。まあ、そういうんじゃねえけどな。」
「何があったのかは知らねーけど、俺は、その、普通に似合っててかっこいいと思ってるよ。」
木下は俺をじっと見つめた。長いまつ毛。10年前より肉が落ちて彫りが深くなってより鮮明となった二重。少しはにかんでいるのか居心地が悪そうな色が滲んでいる。
「お前、俺のこと何でも褒めるのな。なんか怖えわ。」
「何でだよ?」
「10年会ってねーんだぞ?最後に会ったのは…お前を振った時だし。なのに、そんなふうによく言えるな。」
木下は少し気まずそうに言った。
「気持ちだもんよ。しょーがねーだろ。」
「俺のこと、何も知らねーのに…。」
そう言う木下は窓の外を見ていたので、どんな顔をしているのかわからなかった。俺は何か言わなくちゃと思ったが、目の前にゾンビが飛び出したので、アクセルをベタ踏みして轢き殺しているうちに何を言おうと思ったのか忘れてしまった。




