表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵家の養女  作者: 透明
最終章 終幕
96/98

迎えに来たよ

 


 「ブリューテ様!!」




 ハンナの叫び声とともに、ブリューテは地面に倒れ込む。


 そんなブリューテのもとへと駆け寄ろうとしたハンナを、ローブを被った者が取り押さえる。



 ゼーゲンがリーナたちのもとへとやってきたかと思えば、いきなり、一人の騎士らしい者がブリューテのことを殴りつけたのだ。


 その光景を見て、隣にいるリアという少女は泣きそうな表情を浮かべ、震えている。




 「いきなり何を……!」




 リーナはそう言って、ブリューテの方を見る。


 僅かに体が動いたのを見て、亡くなってはいないみたいと安堵する。




 「彼女たちを連れて行ってください」




 ゼーゲンがそう言うと、ローブを纏った者はハンナを、騎士らしい者はブリューテを抱え上げ部屋から出ていく。


 その際、ハンナが「何をするの! 話が違うじゃない!!」と叫んでおり、どうやら計画と違うことが起きたということがわかる。




 部屋の中には、リーナとリア、それからゼーゲンの三人だけとなった。


 リーナはゼーゲンを睨みつけては「……私たちをどうするつもり?」と問いかける。



 そんなリーナにゼーゲンは、笑みを浮かべては「儀式に参加して頂きます」と言う。


 

 その言葉に、リーナは吐き捨てるように笑うと「参加する? 生贄になるの間違いじゃないかしら?」と言う。



 恐らく今日、前世でリーナが巻き込まれた、マグヌスを復活させる儀式を行うつもりだろう。


 となれば、リーナは殺されてしまう。



 リーナは隣にいるリアを見ては「私がいるんだから、この子は解放してあげて。儀式に生贄は二人もいらないでしょ?」と言う。


 ゼーゲンは首を横に振る。




 「用もない人間を連れて来るわけないじゃありませんか。それに、顔を見られている以上、生かして帰すつもりもありません」




 そう気味の悪い笑みを浮かべるゼーゲンに、リーナは「それが聖職者のする事……?」と声を震わせる。


 その時、コンコンッと扉を叩く音がしたかと思えば「ゼーゲン司祭様。確認して頂きたいことが——」と言う声が聞こえる。



 ゼーゲンは「今行きます」と返事をすると、リーナたちを向いては「逃げようとは思わないように。まぁ、縄で縛られているので逃げられないでしょうが」と言うと、部屋から出て行く。



 部屋の中には再び、リーナとリアだけになる。




 リーナは、ゼーゲンが出て行った扉を見つめる。




 部屋の前に見張りはいるのかな?

 

 もしいないのなら、今部屋にいるのは私とこの子だけだ。


 逃げるなら今しかないけど……。




 リーナは手首と足首につけられた縄を見る。


 「ねぇ、リア」そう隣にいるリアのことを呼ぶリーナ。



 リアは何かと、リーナに顔を向ける。


 リーナは「何か、縄を切れそうなものを持ってない?」と問う。


 

 「縄を切れそうなもの?」と首を傾げるリア。


 まぁ、体を縛られた時に、そんな物は取り上げられてしまっているかと、辺りに何か使えそうな物はないかと視線をやった時。



 リアが「あそこ……棚の下を見て」と顎を、棚の方にやる。


 棚の下? とリアが言う方に目を向けると、棚の下に尖った石のような物が落ちていた。




 「あれなら縄を切ることができないかな?」




 確かに、尖っているし硬そうなので、縄を切れるかもしれない。


 けれど、リーナたちの場所からその棚まではかなり距離がある。



 というか、両手両足を縛られているリーナたちからすれば、取りに行くのに時間がかかってしまう距離だ。


 でも、それを使うことができれば、縄を解けるかもしれない。



 リーナは、壁にもたれ掛かる形で座っており、どうにかして立つことができないかと体を動かす。


 その時、側に何か物が置かれており、当たってしまったのかゴーンッ——とかなり大きな音を立て、その場に倒れてしまった。



 まずい。リーナがそう思ったのも束の間、部屋の扉のドアノブがカチャカチャと音を立てる。


 やはり、部屋の外に見張りがいたのだろう。


 音を聞いて入ってこようとしているに違いないと、リーナは棚の下にある石を取りに行こうとしていたことがバレないように、体勢をできる限り整え平常を装う。



 そして、扉が開き誰かが入ってくる。


 その人を見て、リーナは驚いた表情を浮かべる。




 「ナハト、司祭……?」



 

 そう、部屋の中に入ってきたのは司祭のナハトだった。


 ナハトはリーナたちを見るなり「怪我はありませんか?」と駆け寄って来る。



 リーナは戸惑いながらも「は、はい……」と頷くと、ナハトは「今、縄を解きます」と胸ポケットからナイフを取り出しては、リーナとリアの縄を解く。


 そんなナハトに驚きながら「どうしてナハト司祭がここに?」と問うと、ナハトは「今は説明している時間がありません。ゼーゲンたちが来る前にここから出ましょう」と言う。



 ナハトは珍しく焦っているようで。


 リーナは頷くと、リアの手を取りナハトの後に続き、部屋を出る。




 「——私は、ゼーゲン司祭がどこで儀式を行うのか、いつ行うのかは知りませんでした」




 ナハトについて行っている途中、ナハトはそう声を潜め話し出す。


 そんなナハトの話を、黙って聞くリーナ。




 「ですが、調べて行くうちに、ここ、ユリスにある教会に頻繁に出入りしていることがわかりました。」


 「そのことに気づいた私は、恐らく儀式を行うなら、聖誕祭の最終日だろうと踏み、教会内に身を潜めていました」


 「そしたら、私の思っていた通り、ゼーゲン司祭がやって来ては、あなた方を連れて来たと耳にし、連れ出すタイミングを窺っていました」




 ナハトはそう何故、自分がリーナたちの元へと来ることができたのかを淡々と話す。


 そして、とある部屋の前へとやって来ると「外にはかなりの数の化け物が教会を守っています。ですので秘密通路を使いましょう。そして、出た先で助けが来るまで待ちましょう」と言う。




 「助け……?」


 「ジークフリートという男が、ヴァンディリア当主らにこの場所を教え、今頃向かって来ていると思います。そう、指示を出しています」




 そう話すナハトに、リーナは「もしかして……ジークフリートは……」と呟くと、ナハトは「えぇ」とだけ頷き「先を急ぎましょう」と扉を開け、秘密通路へと入って行く。




 「もうすぐ、外に出ます」ナハトの言葉に、少し安心したのも束の間、前を歩いていたナハトが足を止め、リーナとリアも釣られて足を止める。


 どうしたのか? そう問う必要もなく、リーナは直ぐに状況を把握する。




 「思った通り、この通路に来てくださり感謝しますよ」




 そう言って気味の悪い笑みを浮かべ立っていたのは、ゼーゲンだった。


 どうやら、ナハトの存在がバレていたらしく、行動を読まれ先回りされていたらしい。



 ゼーゲンの後ろには、屈強な男性が二人立っており、ゼーゲンの「捕らえろ」と言う声を合図に、リーナたちに向かって来る。




 「ヴァンディリア令嬢、逃げて……!」とナハトが叫ぶも、男性たちに捕らえられてしまう。







 「いっ……!」




 捕らえられたリーナたちは、教会内にある礼拝室に連れてこられては、床に叩きつけるように降ろされる。




 「本当に、手間をかけさせますね。まさか、ナハト司祭が裏切るとは」




 そう、男たちに殴られボロボロになったナハト司祭を見下ろすゼーゲン。


 ナハトは「……あなたの行っていることは、聖職者だけではなく人が行うことではない」と殴られた腹部が痛むのか、苦しそうにしながら言う。



 そんなナハトに、ゼーゲンは「今更聖職者ぶるつもりですか。ナハト司祭」と馬鹿にしたように笑う。




 「それにこの儀式は、この国のためでもある。むしろ、この国を救った英雄とでも言ってほしいですね」


 「ふざけたことを……」




 そう言って、咳き込むナハト。


 礼拝室内には、ゼーゲンの他に屈強な男性が三人いる。



 リーナにリア、それに怪我を負ったナハトの三人では到底あの三人を突破して、逃げることは不可能だ。


 ゼーゲンは懐中時計を見ると「そろそろ、始めましょうか」と呟くと、屈強な男性がリーナとリアに近づく。




 「やめて! 離して!!」




 一人の男性がリアの腕を掴んだかと思えば、無理やり礼拝室の真ん中へと連れて行こうとするので、リーナは「待って……! 儀式を行うなら、私にして」と呼び止める。


 だが、ゼーゲンは「さっきも言ったでしょう? 彼女には彼女の役割がある」と言う。




 「大事な儀式を失敗させたくはありませんからね。彼女は儀式が正常に行えるかどうかの実験ですよ」


 「実験……」




 どこまで、人の道を外れるつもりなのだろうか。

 これが人が行うことなのか。


 あまりにも、衝撃的なことにリーナは唖然とするも、ゼーゲンは気にせず「続けてください」と男性に言う。




 リーナは「待って……!!」とリアの元へと行こうとするも、男性に掴まれ動くことができない。


 ナハトは何とか体を起き上がらそうとするも、思うように動かない様子。



 もう、どうすることもできない。


 このまま、まだ幼い彼女がゼーゲンの思うがままに使われてしまうところを見届くしかできないのか。



 そう、自分の力の無さに絶望した時だった。


 礼拝室の外から、ゴンッ——と大きな音がした。



 その音に、リアを捕まえている男性の動きは止まり、ゼーゲンの視線は扉の方に向けられる。


 何があったのかと、ゼーゲンは後ろに立つ男性に「見て来なさい」と指示を出し、ゼーゲンの後ろにいた男性は部屋の外を見るため礼拝室から出て行く。



 そして数秒後「うわぁぁ!!」と恐らく先ほど礼拝室を出て行った男性の叫び声がする。


 その声に一気に警戒体制に入った屈強な男たちは、リーナとリアから離れると、剣を抜いては恐る恐る扉に近づく。



 すると、扉がゆっくり開き、コツッコツッ——と靴を鳴らし誰かが入って来た。


 その人物を見て、リーナの目から涙が溢れる。



 漆黒の髪が見え、黄金色の瞳が真っ直ぐリーナを捕らえたかと思えば、優しく笑みを浮かべ言う。




 「リーナ、迎えに来たよ」


 「リヒト……!」




 そう。礼拝室に入って来たのは、他の誰でもないリヒトだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ