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公爵家の養女  作者: 透明
最終章 終幕
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聖騎士

 


 「……あ! 兄貴!!」




 ヴァンディリアの屋敷に戻ってきたエーデルたち。


 屋敷に入るなり、焦った表情を浮かべるシュタインがエーデルの元にやって来る。



 そんなシュタインに「どうした?」と問いかけると、シュタインは「それが、リーナが見当たらなくて……」と言う。



 「リーナが!?」エーデルとリヒトの声が重なる。




 「最後にリーナを見たのは?」




 冷静にそう聞くエーデルに、メイド長のエマが「わ、私です。」と顔を青ざめさせながら言う。




 「お、お嬢様が頭が痛いとおっしゃられたので、バルドゥール副団長様とお嬢様をお部屋に連れて行き、ホットミルクをお渡ししようと、部屋を離れました」


 「そして、戻ってくると……お嬢様の姿はどこにもなく……」




 そう話すエマに続け、バルドゥールが「現在、残った騎士、使用人総出で捜索しているのですが見つからず……それに、ジークフリートとハンナというメイドの姿も見当たらなくなっています」と話す。




 「リーナと一緒にいる可能性が高いな」




 眉をひそめ、顎に手を当てるエーデル。


 その時、一人の騎士がエーデルたちの元にやって来ると「……エーデル様! ジークフリートが見つかりました……!」と言う。



 「ジークフリートが?」と、エーデルたちは騎士が今来た方に顔を向けると、そこには頭から血を流し、ボロボロになったジークフリートが歩いてきていた。




 「ジークフリート! 何があったの?」そう声をかけ、ジークフリートに駆け寄るシュタイン。


 ジークフリートは「大丈夫です。それより、エーデル様」とエーデルの方を向く。




 「お嬢様がハンナというメイドに連れ去られてしまいました」




 ジークフリートの言葉に「連れ去られた!?」とエーデルたちは顔をしかめる。




 「連れ去られたってどういうこと? どうしてそのメイドが?」




 リヒトの問いに、ジークフリートは「ハンナというメイドはエズワルド嬢のメイドで、エズワルド嬢とゼーゲン司祭の指示でヴァンディリアに潜入していました」と話す。



 ジークフリートの話す意味が分からず「潜入って……一体どういうことだ?」と問いかけるエーデルたち。


 だが、ジークフリートは潜入している理由までは分からないと、首を横に振る。




 「ですが、ハンナというメイドは例の化け物に私たちを襲わせていました。今回の件に関わりがあるのは事実のはずです」


 「まさか、エズワルド令嬢とゼーゲン司祭が……」




 シュタインがそう驚く隣で、リヒトが「……随分、詳しいな」とジークフリートを見る。




 「何故、一介の騎士がそんなことを知っているんだ?」




 エーデルも同じことを思っていたのか、ジークフリートを見ては「説明できるか」と問う。


 ジークフリートは頷き言う。




 「私は、聖騎士団の騎士で、ナハト司祭に頼まれヴァンディリアに潜入していました」




 その話に、エーデルは「聖騎士団……」とジークフリートを睨みつける。




 「……俺たちを騙して、神聖国に情報を流していたのか?」




 低く、鋭い声でそう問いかけて来るエーデルに、ジークフリートは「初めの方はそうでした」と頷く。




 「ですが今は、報告はしておりません」


 「何故だ? まさか、ヴァンディリアにいる間に情が移ったからとでも言うつもりか?」




 エーデルの問いに、ジークフリートは首を横に振ると「……ナハト司祭がそれを望んだからです」と言う。



 「ナハト司祭が……? 何故?」そうジークフリートに問うリヒト。


 だが、ジークフリートは「それは……お答えできません」と話す。



 そんなジークフリートにシュタインが「だったらどうして、まだヴァンディリアにいるんだよ」と問う。


 その表情は、ショックを受けているよう。



 シュタインはよく、ジークフリートに剣の稽古の相手をして貰っていたから無理もない。


 ジークフリートは「ハンナというメイドが怪しい動きをとっていたので、その事について調べる必要があったからです」と話す。




 「ヴァンディリアに何故、エズワルド家のメイドがいるのか。そして、エズワルド嬢とゼーゲン司祭が手を組み何をしようとしているのか」


 「それを探るためには、近くで見張る必要がありました」




 ジークフリートはそう言うと、リーナが連れ去られた経緯を話す。




 「私は、聖誕祭の最終日ということで、何かゼーゲン司祭らに動きがあるかもしれないと、ナハト司祭に言われ、ハンナというメイドを監視していました」


 「信じてもらえないでしょうが、今日、神聖国にシセルバン家が捜査に入ることは、ナハト司祭様にもお伝えはしていません」


 「お嬢様がお部屋に戻られた直後、ハンナというメイドがお嬢様の部屋へと向かったので、その後をつけました。すると、ハンナというメイドは温室の調子が悪いから見に来て欲しいと言い、お嬢様と二人きりになろうとしていました」




 ジークフリートの話に黙って耳を傾けるエーデルたち。


 「そこで私は間に入り、私が見に行くと言いましたが、ハンナというメイドは引かず、私とお嬢様、ハンナというメイドの三人で向かうこととなりました」そう淡々と話すジークフリート。




 「そして、温室へと向かった私たちは、ハンナというメイドが用意していた例の化け物に襲われ、私は気を失い、お嬢様は連れて行かれてしまいました」




 ジークフリートの話に「近くに見張りは? 助けに来なかったのか?」と問うリヒト。


 ジークフリートは首を縦に振ると「ハンナというメイドが人を払っていたのだと思います」と答える。




 「私が神聖国の騎士だと知った以上、私のことは信用できないかもしれません。ですが、私ならお嬢様がどこに連れて行かれたのかが分かります」


 「どうか、信じてください」




 そう頭を下げるジークフリート。


 当たり前だが、相手はヴァンディリアに潜入していた聖騎士団、信じろと言われ信じる方が難しい。



 だが、今は少しでも可能性があるところを探さなければ、リーナの身が危ない。


 エーデルはリヒトに視線をやると、リヒトは頷く。




 「……お前の言葉を信じるよ。だが、嘘をついたらわかるよな」




 エーデルは低い声でそう言っては、ジークフリートを睨みつける。


 ジークフリートは「騎士の名にかけても構いません」と頷く。




 「それで、リーナが連れて行かれたであろう場所はどこなんだ?」




 リヒトの問いに、ジークフリートは頷くと「ユリスにある教会です」と話す。

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