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公爵家の養女  作者: 透明
最終章 終幕
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秘密

 


 ユリスから帰る馬車の中、リーナは考えていた。


 神聖国とフォルトモントの繋がりがわかり、前世の記憶を思い出した。



 それをエーデルやリヒトに話さなければならない。


 けど、一体どこから話せばいいの?



 私は一度死んでいて、気がついたら十四歳の頃に戻っていたところから?


 そんなこと、信じてくれるのだろうか。




 リーナは馬車の窓に頭を傾けては、不安からため息一つつく。


 そして、ナハトが言っていた言葉を思い出す。




 『リーベという少女に瓜二つで、フォルトモントの瞳を持つあなたなら、何かを変えられるのではないかと』




 とにかく、私一人ではどうすることもできない。

 どちらにせよ、エーデルたちには話さなきゃ。




 リーナを乗せた馬車は、動きを止めヴァンディリアに着いたことを知らせる。


 ユリスに行っていたため、ヴァンディリアに着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。



 何も言わずに、護衛もつけずに行っていたため怒られてしまうかもと、恐る恐る屋敷に入るリーナ。


 丁度玄関付近にエーデルがおり、目が合ってしまう。



 エーデルはリーナを見るなり「リーナ!」と名前を呼び、リーナの方にやって来るので、リーナは瞬時に「ごめんなさい……」と謝ろうとした。


 けれども、エーデルは怒ることなく「丁度いいところに帰ってきたな」とリーナに言う。



 そして、神妙な面持ちになったかと思えば、エーデルはゆっくりと言うのだ。




 「エミリアが何者かに襲われたと連絡があったんだ」




 エーデルの言葉を聞き、リーナは「え……?」と目を見開く。


 そして、エーデルの腕を掴んでは「容態は……? エミリアは無事なの……!?」と問いかける。



 エーデルは首を横に振ると「そこまでは分からない。襲われたとしか……だからお見舞いも含め、今からグランベセルに行って来る」と話す。



 「私も……!」とすかさず言うリーナ。


 だがエーデルは「気持ちはわかるが、容態もわからないし、リヒトたちも混乱していると思うから、今日は俺だけで行って来るよ」とゆっくり話す。



 その言葉に、リーナは「あ……」と取り乱した心が冷静になる。


 エーデルの言う通り、ここで私が行っても邪魔になるだけ。


 私ったらつい、取り乱してしまった。



 リーナは頷くと「ごめんね、ありがとう。気をつけて行ってきてね」とエーデルに言う。


 その時、シュタインがやってきて「リーナ、帰ってたのか」とリーナを見て言う。



 そんなシュタインに、エーデルは「シュタイン、リーナと皆のこと頼んだぞ」と頼むと、シュタインは力強く頷く。


 そして、エーデルはグランべセルへと向かった。







 「――人の様な何かに襲われた?」




 翌日の昼頃。


 リヒトと一緒にヴァンディリアに帰ってきたエーデルに、談話室へと来るよう言われたリーナとシュタイン。



 エーデルはエミリアが、軽く怪我をしただけだと聞き、ホッとしたのも束の間、エミリアが襲われたというものについて聞き、リーナもシュタインも眉を顰める。




 「人のようなものって……? どういうこと? 人じゃないってこと?」




 わけがわからないとでも言いたげな表情を浮かべるシュタインに、エーデルは頷く。




 「エミリアの話では、誰かが道の端でしゃがみ込んでいるのが見えたので、体調が優れないのかと近づいたそうだ。」


 「それで声をかけ、振り返ったそいつは今にも飛び出して落ちてしまいそうなくらい見開かれた、イカれた目をして、エミリアに襲いかかったそうだ」




 エーデルの話に「なん、だよそいつ……」と驚くシュタインの隣で、リーナは何か思い当たるところがあるのか、顔を青ざめさせている。


 そんなリーナに気づいたリヒトが「リーナ? 大丈夫? 顔色が悪いよ」と心配そうに声をかける。




 「少し、刺激が強すぎたかな。部屋に戻って休んできな」




 そう言うエーデルに、リーナは「う、ううん……」と首を横に振ると、少し震えた声で言う。




 「……私も、前に一度遭遇したことがあるの」




 リーナの言葉に、驚くリヒトたち。


 エーデルは「遭遇したって……エミリアを襲ったっていう化け物にか?」と眉を顰め、リヒトは「いつ?」と問う。




 「……皆で音楽祭に行った時あったでしょ? その時、皆と逸れた時、お店にいたら声が聞こえてきて……声のする方に行ったら、その人のようなものが居て……」




 そう話している間に、恐怖を思い出しリーナの手は震える。


 エーデルとリヒトは、顔を見合わせては「エーヴィッヒと一緒に帰ってきた時?」と問う。



 頷くリーナに、エーデルは「何で言わなかったんだ?」と心配そうに問う。




 「え、エーヴィッヒ殿下に口止めされていて……内密に調べているから、誰にも言わないでほしいって」




 そう。人のような化け物に襲われたあの日、助けてくれたエーヴィッヒに、リーナはこの事を誰にも話さないでと口止めされていたのだ。


 なので、リーナは誰にも言うことはなく、ずっと黙っていた。



 だから、今日、エミリアが襲われたと聞いた時も話すか迷った。


 でも、エミリアが襲われたというのに、黙ったままでいいのか? そう思ったリーナは二人に話すことにしたのだ。




 「……内密に調べてるって、一体、何を隠しているんだ?」




 そう眉間にシワを寄せ、顎に手を当てるエーデル。


 リヒトは「エーヴィッヒは、何か言っていなかった?」とリーナに問う。



 だが、リーナは首を横に振り言う。




 「何も……殿下もその化け物が何なのか分からないと仰られていたの」


 「何かわからない? エーヴィッヒが嘘をついている可能性もあるぞ」




 にわかにエーヴィッヒの話が信じられない様子のエーデルに、リヒトは「確かに」と頷く。


 二人を見て、シュタインは「殿下の信頼なさすぎでしょ」と呆れている。



 そんなリヒトたちに、リーナは「それから……」と話を続ける。




 「……あの時、その化け物の前に横たわった男性がいたんだけど、化け物が、その男性のことを食べていて……かなり酷い姿になっていたの……」




 リーナの話に、シュタインは「何、だよそれ……」と顔を歪ませる隣で、リヒトとエーデルは「それって……」と顔を見合わせる。




 「……例の変死体と何か関係があるかもしれないな」




 エーデルの言葉にリヒトは頷く。


 聖誕祭が始まる前から続いている、変死体の事件はまだ、犯人が見つかっておらず、詳しい手がかりも何もない状態。



 もし、その化け物と何か関係があるのなら、一気に事件解決へと導けるかもしれない。




 「ここで話をしていてもしょうがない。直接本人に聞きに行くか」


 「そうだね」




 こうして、リヒトたちは化け物の件と関わりがあるであろう、エーヴィッヒの元へと話を聞きに、皇宮へと向かったのだった。

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