表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
5章:救世の龍覚者と導きの龍 〜始原の森へ続く英雄譚〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/186

第147話:月影の工房と魔法の洗濯機

復興作業で賑わった昼間の喧騒が嘘のように、夜のとばりが街を包み込んでいた。

 

だが、王宮の裏手にある「魔導工房」だけは別だ。


窓からは煌々と明かりが漏れ、カンカンという金属音や、魔力が励起する低い唸り音が絶え間なく響いている。


「……また無理してなきゃいいけどな」


俺は夜食のサンドイッチが入ったバスケットを手に、工房の重い扉を開けた。


ムワッとした熱気と、油と鉄の匂いが鼻をくすぐる。  そこは、まさに「鉄と魔法の戦場」だった。


ドワーフの鍛冶師たちが真っ赤に焼けた鉄を打ち、エルフの魔術師たちが微細な回路ルーンを刻み込む。その中心で、一人の女性が図面と睨めっこをしていた。


ティアーナだ。


亜麻色の髪を無造作に結い上げ、すすで少し汚れた作業着姿。  けれど、その瞳は宝石のように鋭く輝いている。


「出力係数、三パーセント低下……ダメですわ、これでは連射に耐えられません! 冷却魔石の純度を上げて、バイパスを二本追加!」


彼女の的確な指示が飛ぶ。鉱山都市から戻ったばかりだというのに、彼女は休むことなく、今回の戦闘で破損した防衛兵器「星脈砲」の修理と改良を行っていた。


「ティアーナ。精が出るな」


俺が声をかけると、彼女はビクッと肩を震わせ、振り返った。


「レ、レン!? いらしてたんですね!?」


「ああ。根を詰めすぎると体に毒だぞ。差し入れを持ってきた」


「まあ……! ありがとうございます!」


ティアーナは慌てて手を拭き、駆け寄ってくる。その表情が、厳しい「技術者」の顔から、年相応の「恋人」の顔へと和らいだ。


「ちょうど一区切りついたところですの。……職人の皆さん! 少し休憩にしましょう!」


彼女の号令で、職人たちが「うおー! 公王陛下の差し入れだー!」と歓声を上げて集まってくる。


俺はその騒ぎを他所に、ティアーナを作業場の奥――彼女専用のデスクへと誘った。



◇◇◇



デスクの上には、書きかけの設計図や試作パーツが散乱している。俺は何気なくその一つを手に取った。


「ん? これは……星脈砲の部品じゃないな」


それは、金属製の箱の中に回転する筒が入った、奇妙な魔道具だった。  兵器にしては殺傷能力がなさそうだ。


「ああっ! それは見ないでください!」


ティアーナが顔を真っ赤にして、俺の手からそれを奪い取ろうとする。


「なんでだよ。新しい発明品か?」


「そ、それは……その……」


彼女はモジモジと指を合わせ、観念したように小さな声で言った。


「……『全自動魔導洗濯機』の、試作品ですわ」


「洗濯機?」


「はい。……だって、戦争が終わったら、レンさんとの時間を少しでも多く作りたいんですもの。家事は全部機械に任せて、その分、貴方と……」


言いながら、彼女の顔がさらに赤くなる。耳まで真っ赤だ。


俺は、胸が熱くなるのを感じた。彼女は、ただ兵器を作っていたわけじゃない。戦いの先にある、俺たち二人の「平和な生活」を夢見て、そのための準備をしてくれていたのだ。


「……そっか。ありがとう、ティアーナ」


俺は彼女の肩を抱き寄せた。


「でも、これだとちょっと効率が悪いかもな」


「え?」


俺は試作機を指差した。


「回転させるだけじゃ汚れは落ちにくい。こう、槽を斜めに傾けて、水流と重力で叩き洗いにするんだ」


「斜めに……なるほど! それなら少ない水で、より強い衝撃を与えられますわ!」


ティアーナの目の色が、再び技術者のそれに変わる。


「それに、乾燥機能も付けよう。風魔法の回路を組み込んで、熱風を循環させれば……」


「! 素晴らしいアイデアですわ! 排熱を利用すれば、エネルギー効率も上がります!」


「よし、やってみるか」


俺たちは顔を見合わせ、ニヤリと笑った。そこからは、二人だけの「実験」の時間だった。


俺が理論を説明し、ティアーナがそれを魔法技術で実現する。魔法と科学の融合。それは、兵器開発よりも何倍も楽しく、心躍る作業だった。


数時間後。


「……組み上がりましたわ」


目の前には、銀色に輝くドラム式洗濯機のプロトタイプが鎮座していた。見た目は武骨だが、中には最新鋭の魔導回路が詰まっている。


「起動テスト、いくぞ」


俺が魔石をセットし、スイッチを入れる。


キュイィィィン……ゴウン、ゴウン……。


静かな駆動音と共に、ドラムが回転を始める。水流が渦を巻き、投入した布切れが力強く、しかし優しく洗われていく。


「脱水、そして乾燥モードへ移行!」


ブォォォォォッ!  温風が吹き荒れ、数分後にはふっくらと乾いた布が出てきた。


「せ、成功ですわ……!」


「ああ、完璧だ」


パチパチパチパチッ!


いつの間にか周囲で見守っていたドワーフやエルフの職人たちから、割れんばかりの拍手が巻き起こった。


「すげぇ! これなら冬場の洗濯も楽になるぞ!」


「奥さんにプレゼントしてぇ!」


兵器の完成を見た時とは違う、温かい歓声。ティアーナは職人たちに囲まれ、誇らしげに、そして嬉しそうに微笑んでいた。


「ふふっ、これでもう、洗濯板で手が荒れることもありませんわ」


「ああ。完成したら、一番最初に俺たちの家に置こう」


俺が言うと、ティアーナは嬉しそうに頷いた。



◇◇◇



職人たちが作業に戻った後。俺たちは工房のバルコニーで、夜風に当たっていた。


「……レン」


ティアーナが、俺の腕に寄り添ってくる。


「私、兵器を作るのは……本当はあまり好きではありません」


「ああ、知ってるよ」


「でも、貴方を守るためなら、私はどんな強力なほこだって作ります。……ですから」


彼女は俺の正面に立ち、背伸びをして、俺の唇にそっとキスをした。柔らかく、甘い感触。


「必ず、あなたは無事に帰ってくださいね」


それは、所有印を押すような、独占欲と愛情に満ちたキスだった。彼女の瞳が、月明かりを浴びて潤んでいる。


「……あなたの背中は、私の技術が守ります。だから、貴方は前だけを見ていてください」


俺は彼女の腰を引き寄せ、強く抱きしめ返した。華奢な体だが、その中にある芯の強さが伝わってくる。


「ああ、約束する。……俺も、お前の作る未来が見たいからな」


「はい……!」


ティアーナが胸元に顔を埋める。


月影の工房。そこには、冷たい鉄や兵器だけでなく、確かに温かい未来への希望が息づいていた。


俺はこのぬくもりを守るためなら、何度だって戦場に立てる。そう確信しながら、俺は愛する婚約者の髪を優しく撫で続けた。

「面白かった」 「続きが読みたい!」


と少しでも思っていただけたら、 記事の最下部にある【☆☆☆☆☆】をタップして応援していただけると嬉しいです!


「面白かった!」→ 星5つ 「まぁまぁかな」→ 星3つ

など、気軽な気持ちで評価していただけると、執筆スピードが上がります!


ブックマーク登録もぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ