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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
5章:救世の龍覚者と導きの龍 〜始原の森へ続く英雄譚〜

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第144話:金色の夜明けと王の決意

頬を撫でる風が、心地よかった。


空が白み始め、夜のとばりがゆっくりと引き剥がされていく。  昇る朝日が、エルムヘイムの街並みを黄金色に染め上げていた。


俺は王宮のバルコニーに立ち、その輝きに目を細める。


「……いい朝だ」


昨夜までの、あの耳をつんざくような爆音と悲鳴が嘘のようだ。

眼下の街からは、早朝だというのに活気に満ちた声が聞こえてくる。


「公王陛下万歳ーッ!!」


「俺たちが勝ったんだ!」


「今日は朝まで祝い酒だぞー!」


勝利の美酒に酔いしれる者、無事を祝って抱き合う者。防衛結界のおかげで、街の被害は城壁の一部と窓ガラス程度で済んだ。誰一人として欠けることなく、この朝を迎えられた。


その事実が、何よりも嬉しかった。


俺もまた、手すりに寄りかかり、その熱気を全身で感じる。守り抜いたんだ、という実感が胸の奥から湧き上がってくる。


だが。


その穏やかな光景を見つめているうちに、ふと、背筋に冷たいものが走った。


(……静かすぎる)


街の喧騒ではない。

その向こう側――北の空にあるはずの脅威についてだ。


俺たちは昨日、帝国の“三将軍”を退け、カジミールという裏切り者を処断した。紛れもない大勝利だ。


しかし、帝国の本丸――皇帝ヴァレリアスと、あの不気味な魔術師ゼノンからの報復が、一切ない。 彼らはただ不気味に「沈黙」している。


まるで、嵐の前の静けさのように。


(守るだけじゃ、終わらないか)


俺の本能が告げている。次は、向こうから来るのを待っていては手遅れになるかもしれない。


ならば、あらゆる可能性を想定しなければならない。相手の出方を待つだけでなく、こちらから動くべき時が来るかもしれないのだと。


「レン?」


不意に、背後から鈴を転がしたような声がかかった。振り返ると、眠い目をこすりながら、フィーナが立っている。


その小さな手には、俺の上着が握られていた。


「どうした、フィーナ。まだ寝てていいんだぞ」


「ううん。レンがいないから、目が覚めちゃった」


フィーナはトテトテと歩み寄ると、俺の腰にぎゅっと抱きついてきた。温かい。この体温を守れたことが、何よりも誇らしかった。


「……レン、難しい顔してる」


「そうか? 勝ったあとの顔に見えないかな」


「ううん。……『まだこれから』って顔」


さすがは、フィーナだ。ごまかしがきかない。俺は苦笑して、彼女の髪を優しく撫でた。


「ああ。……でも、今は少しだけ、この景色を楽しもうか」


「うん!」


俺たちは並んで、朝日を浴びる街を見下ろした。金色の光が、俺たちを優しく包み込んでいく。


それは、新しい時代の夜明けのようだった。



◇◇◇



日が昇りきった頃、俺は視察のために街を見て回ることにした。


カイルたちは戦後の街の復興対応のため別で活動しており、お供はフィーナだけだ。


中央広場には、簡易テントが設営され、リゼットや防衛隊の面々が炊き出しを行っていた。


「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」


「ありがとう、お姉ちゃん!」


リゼットが、大鍋からスープをよそい、子供たちに配っている。 湯気の向こうには、焼きたてのパンの香り。


「あ、公王様だ!」


「レン様が来てくださったぞ!」


俺の姿を見つけた市民たちが、一斉に振り返る。


その表情に、怯えや悲壮感はない。  あるのは、心からの安堵と、信頼の色だった。


「みんな、怪我はないか?」


「へっちゃらですぜ! 公王様の結界のおかげで、家も無事でした!」


「うちの畑も、瓦礫が少し落ちただけで済みました!」


口々に報告してくれる彼らの笑顔。  俺も自然と口元が緩む。


「公王様、スープどうぞ!」


列に並んでいた小さな女の子が、自分の分を俺に差し出してきた。その手は、泥だらけだが、温かい。


「ありがとう。……うん、美味いな」


一口飲むと、野菜の甘みが体に染み渡った。なんの変哲もない、ただのスープ。けれど、これこそが俺の守りたかったものだ。


領土でも、国威でもない。この「当たり前の朝」を、明日も明後日も続けること。


(……ああ、そうか)


俺の中で、迷いが完全に消えた。この日常を二度と脅かさせない。そのために皇帝を倒す必要が本当にあるのなら、俺は喜んでその役割を担おう。


その時だった。


「大変だ! 大水路の方で水漏れが!」


広場の端から、血相を変えた男が走ってきた。


「どうした?」


「こ、公王陛下! いえ、昨夜の衝撃で、第三区画の水路に亀裂が入ったみたいで……このままだと、下町への送水が止まってしまいます!」


大水路。


それは以前、俺たちが最初に整備した街の生命線だ。飲み水はもちろん、生活用水、農業用水、全ての基盤になっている。


「水が止まったら、風呂にも入れないな」


俺はスープの器をリゼットに預け、立ち上がった。


「案内してくれ。……フィーナ、手伝ってくれるか?」


「もちろん!」


俺たちは現場へと急行した。



◇◇◇



現場は、悲惨な状況だった。石造りの水路の側面が大きくひび割れ、そこから水が噴き出している。 作業員たちが土嚢を積んで止めようとしているが、水圧に押し負けていた。


「くそっ、止まらねぇ!」


「このままじゃ土台が崩れるぞ!」


俺は群衆をかき分けて前に出る。


「全員、下がってくれ!」


「公王陛下!? し、しかし、これだけの亀裂は、一度水を止めて工事をしないと……」


「いや、止める必要はない。……見ていてくれ」


俺は水路の縁に立ち、両手をかざした。イメージするのは、単なる「修復」ではない。  より強く、より清らかに。


「フィーナ、魔力を貸してくれ」


「うん! 【調律リンク】!」


フィーナの純粋な魔力が、俺の中に流れ込んでくる。俺はその膨大なエネルギーを、【土魔法】と【錬金術】の複合術式へと変換する。


(素材の密度を圧縮。構造を分子レベルで再結合。……さらに、【浄化】の術式を付与!)


「――【再構築リビルド】ッ!」


カッ! と眩い光が水路を包み込んだ。


噴き出していた水が、見えない力に押し戻される。  ひび割れた石材が光の粒子となって融合し、滑らかな一枚の岩盤へと生まれ変わっていく。


それだけではない。再構築された水路は、白磁のように美しく輝き、流れる水そのものに微弱な魔力を帯びさせていた。


「……できた」


光が収まると、そこには新品同様――いや、以前よりも遥かに堅牢で美しい水路が完成していた。 水漏れは完全に止まり、透き通った水が力強く流れている。


「す、すげぇ……」


「一瞬で直っちまった……」


作業員たちが、あんぐりと口を開けている。誰かが、震える声で言った。


「水が……光ってるぞ!?」


「ああ。ついでに水路の内側に【浄化】の魔方陣を刻んでおいた。ここを通るだけで、水が濾過されて綺麗になるはずだ」


俺が何でもないことのように言うと、一拍置いて、爆発的な歓声が上がった。


「やっぱり公王様は魔法の神様だ!」


「この人がいる限り、エルム公国は不滅だぞ!」

拍手喝采。


子供たちが目を輝かせて駆け寄ってくる。


その光景を見て、俺は確信した。魔法は、敵を倒すためだけにあるんじゃない。こうして誰かの生活を支え、笑顔を作るためにこそあるんだと。


「……さあ、行こうか、フィーナ」


「うん! レン、かっこよかったよ!」


俺はフィーナの手を引き、喧騒を後にした。その背中は、昨日までよりも少しだけ、大きく頼もしいものになっていた気がした。



◇◇◇



戻った俺は、息つく暇もなく執務室に籠もっていた。宰相のアルバート卿や文官たちと、復興計画の会議だ。


「……陛下。城壁の修復予算ですが、従来の石材を使うとこれだけの費用が……」


「石材にこだわる必要はない。俺が【魔力レンガ】の改良版の術式を提供する」


俺は提示された資料に、ペンで次々と修正を加えていく。


「術式自体は簡略化してある。魔導部隊と職人ギルドに製造ラインを組ませろ。マニュアルはこれだ。材料は現地の土でいい」


「なっ……! 土をこれほどの強度に? これなら製造工程は半分程度に……!」


文官が目を見開く。俺一人で作れば一瞬だが、それでは国として脆弱だ。技術を伝え、民の手で再建させてこそ、本当の強さになる。


「この区画は更地にして、集合住宅を作ろう。これから避難民も増える。人口増加に対応できる都市計画が必要だ」


「し、しかし陛下、それでは工期が……」


「それも、魔導具による自動化を導入する。ティアーナとゴードンには話を通してあるから、彼らの指示に従ってくれ」


俺のペンが走る。頭の中に、新しいエルムヘイムの青写真グランドデザインが広がっていく。上下水道の完備、魔導エレベーターの実装、自動防衛システムの構築。


元に戻すんじゃない。あらゆる脅威に備え、世界一の『未来都市』へ作り変えるんだ。


「それに……」


俺はふと、帝国の空がある方角を見据えた。


「向こうが動かない以上、万が一の場合は、こちらから動く可能性もゼロじゃない。その時、この街が単独で持ちこたえられる『要塞機能』も必須だ」


「は、はい! 直ちに手配いたします!」


文官たちが慌ただしくも、希望に満ちた表情で動き出す。


「……ふふっ」


あまりの忙しさに、逆に笑いが込み上げてくる。やるべきことは山積みだが、視界はクリアだった。


そんな俺の姿を、部屋の隅でフィーナがじっと見つめていた。本を読むふりをして、その金色の瞳は真剣そのものだ。


(レン、すごい。……でも、たいへんそう)


彼女の小さな胸の中に、ある思いが芽生えていた。私も、レンの役に立ちたい。ただ守られるだけじゃなくて、レンの力になりたい、と。


(フィーナも、なにかできないかな……?)


その純粋な思いつきが、次なる騒動――いや、可愛らしい「お手伝い大作戦」の幕開けとなることを、俺はまだ知る由もなかった。


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