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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第143話:新たなる夜明け

朝焼けの光が、広場を黄金色に染め上げていく。


カイルとイリスの、不器用だが愛に満ちた誓い。


それを、兵士たちの温かな冷やかしと祝福が包み込んでいる。


俺たちの勝利だ。


帝国の侵攻を退け、友を裏切った者を裁き、そして新しい絆が生まれた。


俺の背中では、限界まで力を貸してくれたフィーナが、すやすやと寝息を立てている。


その小さな重みは、俺にとって何よりの宝物だ。


だが、これから俺がしようとしていることは、背中に誰かを負ったままできることじゃない。


「……シエナ」


俺が小さく呼ぶと、音もなく影の中から彼女が現れた。


「はい、ここに」


「悪いな。 フィーナを頼めるか? ……少し、大事な話をしてくる」


「御意」


シエナは、普段の無表情の中に微かな笑みを浮かべ、俺の背中からフィーナをそっと受け取った。


「……んぅ……レン……?」


「大丈夫だ。 すぐに戻るから、いい子で寝てな」


俺が頭を撫でると、フィーナは安心したように再び夢の世界へと落ちていった。


シエナがフィーナを抱いて下がっていくのを見届け、俺は襟を正した。


「ふふっ……お兄ちゃんったら。 やっと言えたんだ」


隣で、アリシアが花が咲いたような笑顔を見せた。


その瞳は、喜びでキラキラと輝いている。


「ああ。 ……あいつら、やっとだな」


「うん、本当に! ……ずっとじれったかったけど、あんなに幸せそうなお兄ちゃんの顔、久しぶりに見た。 ……私、すごく嬉しい!」


アリシアは、自分のことのように……いや、自分のこと以上に嬉しそうに、カイルたちの姿を見つめながら涙ぐんでいる。


実の兄が、戦場という極限状態で生涯のパートナーを見つけたのだ。


妹として、これ以上の喜びはないだろう。


「……良かったな、アリシア」


「うんっ!」


俺はアリシアの頭をポンと撫でた。


彼女の笑顔を見て、少しだけ肩の力が抜けた気がした。


俺は一度、大きく深呼吸をした。


肺いっぱいに朝の空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。


これで、心の準備は整った。


公王としての責務も、戦士としての高揚も、今は一度脇に置く。


ただの「レン」として向き合うために。


俺は視線を、もう一人の大切な女性へと向けた。


オリヴィア・フォン・ドラグニア。


彼女は少し離れた場所で、カイルたちの幸せそうな姿を、眩しそうに、そして少しだけ寂しそうに見つめていた。


カジミールとの決別。


亡国の王女としての責務。


彼女の小さな背中には、あまりにも多くのものが背負わされている。


(……終わったんじゃない)


俺は拳を握りしめた。


(始まったんだ。 俺たちの、新しい未来が)


俺は一歩、踏み出そうとした。


その時だ。


トンッ、と。


俺の背中を、二つの手が優しく、けれど力強く押した。


「さあ、行ってあげてください、レンさん」


ティアーナの声だ。


振り返らなくても分かる。彼女と、そしてアリシアが、満面の笑みで俺を送り出してくれているのが。


「……ああ、行ってくる」


二人の愛に背中を押され、俺は迷いを捨てて歩み寄る。


一歩近づくごとに、過去の記憶が脳裏をよぎる。


出会ったばかりの頃、俺たちは明確に線を引いていた。


『同盟を結びましょう、レン様。 ……わたくしは、国のために貴方の力を必要としています』


あの時、彼女の瞳には悲壮な覚悟があった。


自分を殺し、王女という「機能」に徹しようとする痛々しいほどの決意。


俺もまた、それに応えようとした。


彼女は守るべき対象であり、ビジネスパートナーだと。


個人的な感情で、彼女の重荷になってはいけないと。


互いに見えない壁を作り、その内側には踏み込まないようにしていた日々。


だが、共に戦い、傷つき、笑い合う中で、その境界線はとっくに意味を失っていたのだ。

彼女はもう、俺にとってただの「同盟相手」ではない。


かけがえのない、共に歩むべき人なのだから。


彼女が気づき、振り返る。


「レンさん……? カイルさんたち、素敵ですね。 本当に……」


彼女は笑顔を作ろうとしていたが、その目尻には、張り詰めていた緊張の糸が切れたような、脆さが滲んでいた。


俺は、彼女の前に立った。


そして、その震える手を、そっと両手で包み込んだ。


「……っ、レンさん?」


オリヴィアが目を丸くする。


俺の手から伝わる熱に、彼女の頬がほんのりと染まる。


「オリヴィア。 ……俺は公王として、君の国と民を背負うと誓った」


俺は、彼女の金色の瞳を真っ直ぐに見つめた。


「帝国の打倒は必ず成し遂げる。 ……だが、俺が言いたいのは、そんな『王』としての約束だけじゃない」


「え……?」


「一人の男として……『レン』として、君に伝えたいことがある」


俺の口から、自然とその名が出た。


公王という肩書きを捨てた、一人の男としての名乗り。


これまで改まって名乗る機会などなかったが、今この瞬間こそ、ただの「レン」として向き合うべき時だと魂が告げていた。


心臓が、早鐘を打つ。


カイルのことを笑えない。


いざとなると、言葉にするのはこんなにも勇気がいることなのか。


だが、言わなければならない。


壁を壊すのは、いつだって俺の役目だ。


「オリヴィア。 ……君自身を、俺の大切な家族として迎え入れたい」


「……っ!」


オリヴィアが息を呑む。


「君の弱さも、強さも、背負っている過去も……全部ひっくるめて、俺が支えたい。 ……俺と、結婚してくれないか?」



◇◇◇



(オリヴィア視点)


時が、止まった気がした。


レンさんの言葉が、じんわりと心に染み込んでいく。


『俺と、結婚してくれないか?』


それは、わたくしが夢見ることさえ許されないと思っていた言葉。


わたくしは、亡国の王女。


国を失い、父を失い、多くのものを失った身。


かつて、エルム公国を建国する際、わたくしはレンさんに提案したことがあった。


『レン様が公王となり、わたくしが妃となれば……亡命政府の立場も盤石になります』

あれは、生き残るための政治的な取引だった。


自分の心を殺して、国のために身を捧げる覚悟だった。


だからこそ、レンさんの隣に立つのは「契約上のパートナー」であるべきだと、必死に心を律してきた。


アリシアやティアーナのように、心から愛し愛される存在になる資格なんて、わたくしにはないと。


『わたくしは、同盟相手。 彼の重荷になってはいけない』


そう言い聞かせ、胸の奥で燻る想いに蓋をしてきた。


彼の優しさに触れるたび、その蓋が外れそうになるのを必死に抑えて。


でも。


目の前の彼は、そんなわたくしの葛藤など全て見透かしたように、真っ直ぐにわたくしを見つめてくれている。


公王としてではなく、契約でもなく、一人の男性として。


「……ずるいです、レンさん」


わたくしの瞳から、大粒の涙が溢れ出した。


「そんな風に言われたら……わたくし、もう『王女』の仮面を被っていられません」


彼の手の温もりが、凍てついていた心を溶かしていく。


利用する関係でも、利用される関係でもない。


ただ、互いを想い合う家族として。


「……ぁ……」


わたくしは口元を両手で覆い、言葉にならない声を漏らす。


ずっと、待っていた言葉だった。


本当は、誰よりも、彼の隣にいたかった。


震える唇を開こうとした、その時だった。


「オリヴィアさん!」


「お待ちしておりましたわ」


明るい声と共に、二人の女性が歩み寄ってきた。


アリシアと、ティアーナだ。


「アリシア……ティアーナさん……」


わたくしが涙に濡れた顔で二人を見る。


アリシアは、春の日差しのような満面の笑みで、わたくしの左手を取った。


「ようこそ! 私たちの家族へ! ……ふふ、これでやっと、本当の『家族』になれるね!」


「ええ。 レンは少々……いえ、かなり手のかかる旦那様ですから。 私たち三人で協力して支えませんと」


ティアーナが苦笑しながら、わたくしの右手を取る。


その瞳には、深い慈愛と歓迎の色が宿っていた。


公王を支える「陽だまり」と「月影」。


その二人が、行き場のないわたくしを、心からの笑顔で迎え入れてくれている。


「……っ、うぅ……!」


わたくしの涙腺が崩壊した。


彼女たちもまた、わたくしの遠慮や葛藤を知っていて、それでもこうして手を差し伸べてくれているのだ。


繋がれた両手の温もりに支えられるようにして、わたくしはレンさんに向き直った。


もう、迷いはない。


「……はい……!」


わたくしは、涙を流しながらも、雨上がりの虹のような、最高に美しい笑顔を咲かせた。


「公王陛下への責務……そして、レンさん、貴方個人への愛を……ここに誓います!」



◇◇◇



(レン視点)


「……ありがとう、オリヴィア」


俺は、彼女の涙を指で拭った。


俺の愛する妻たち。


三人の笑顔が、朝焼けの中で何よりも眩しく輝いている。


そして、背後にはカイル、イリス、シエナ、リゼット、ドルゴ、ゲイル、エリアーナ……。


最高の仲間たちがいる。


東の空から、太陽が完全に姿を現した。


眩い光が、戦場跡を、そしてエルムヘイムの街を照らし出していく。


「……行こう」


俺は、三人の妻たちの肩を抱き、仲間たちの方へと振り返った。


帝国の脅威は去っていない。


ゼノンも、皇帝も、まだ健在だ。


だが、俺たちは一人じゃない。


「俺たちの国を、もっと素晴らしい場所にするために! ……凱旋だ!!」


「「「おーっ!!!」」」


夜明けの空に、俺たちの誓いと歓声が高らかに響き渡った。


俺が望むのは、いつだってシンプルだ。


今日と同じように、明日も明後日も、大好きなこいつらが笑っていられる場所を守ること。


そのために必要な力なら、俺はいくらだって振るうだろう。


「さあ、帰ろう。 ……俺たちの家に」


俺は、朝日に向かって強く歩き出した。


かけがえのない日常を守り抜くために。


(第4章 完)

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