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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第138話:決戦・エルムヘイム - 魔法司令塔

「遠隔支援は終了だ。 ……ここからは、俺自身が相手になる」


俺たちは既に、臨戦態勢に入っていた。 全身から立ち昇る黄金と青のオーラが、司令室の空気を震わせている。


「行くぞ、フィーナ。 ここからじゃ狭すぎる」


「うん!」


俺は転移魔法を発動させる。 視界が歪み、次の瞬間、俺たちは夜風が吹き荒れる場所へと立っていた。


首都エルムヘイム、正門防壁の最上部。


眼下には、平和だった街並みを脅かすように展開した、帝国軍精鋭部隊の威容が広がっている。


黒い鎧を纏った重装歩兵、異形のキメラ兵、そして後方に鎮座する巨大な魔導砲の列。


三将軍が率いていた軍勢とは、質が違う。 そこにあるのは、純粋な殺意と、高度に統率された暴力の気配だ。


「……来たな」


夜風が、俺の髪を揺らす。 俺は、眼下の敵軍を見下ろしながら、隣のフィーナの手を強く握り直した。


俺たちの全身から立ち昇るオーラは、防壁の上に立ってもなお衰えることはない。 むしろ、夜空を焦がすように、さらに輝きを増し始めた。


それは、民衆にとっては希望の光。 そして、侵攻軍にとっては、絶対的な拒絶の意志を示す威圧の波動。


首都エルムヘイムが、ただの街から、鉄壁の要塞へと変貌していく。


その光に反応するように、敵陣の中央から、聞き覚えのある、しかし以前よりも遥かに狂気を孕んだ声が響き渡った。


「――見つけたぞ、龍覚者ァァァッ!!」


拡声魔法によって増幅されたその声の主。 ゼノンだ。


「素晴らしい……! その輝き、その魔力波長! やはり君は最高だ! さあ、実験の続きと行こうか!」


彼の狂気じみた号令と共に、帝国軍の陣形が動いた。 後方に控えていた魔導砲の砲口が、一斉にこちら――防壁へと向けられる。


「壊せ! 壊せ! 全てを灰燼に帰せ! 龍覚者を引きずり出せ!」

ドォォォォォォォォォンッ!!!


数十門の魔導砲が、同時に火を噴いた。 夜闇を切り裂く、破壊の閃光。


着弾すれば、防壁ごと街の一区画が消し飛ぶほどの質量を持った魔力弾の雨が、唸りを上げて迫りくる。


防衛隊の兵士たちが、あまりの威力に息を呑み、悲鳴を上げそうになる。 だが。


(……遅い)


俺は、迫りくる死の雨を前にしても、微動だにしなかった。 ただ静かに、指を鳴らした。

パチンッ。


その乾いた音が、開戦の合図だった。


「『首都中枢防衛(戦略③)』――発動」


瞬間。 エルムヘイムの空が、幾何学模様の光に覆われた。


「させませんわ!!」


通信機越しに、ティアーナの凛とした声が響く。 街の四方に設置された魔力塔が共鳴し、都市全体を覆う巨大な多重魔力結界が展開される。


それは、彼女が心血を注いで設計した、対魔導砲用の絶対防衛ライン。


ズガガガガガガガッ!!!


魔導砲の弾雨が結界に直撃し、激しい火花と衝撃波を散らす。 だが、結界は揺らぎこそすれ、一枚たりとも割れることはなかった。


着弾のエネルギーは結界の表面で拡散され、無害な光の粒子となって霧散していく。


「なっ……!?」


敵兵たちが驚愕に動きを止める。 その隙を、こちらの「仕掛け」は見逃さなかった。


「ふん! ワシらの作った防壁が、そう簡単に破れると思うなよ!」


ゴードンさんの怒鳴り声と共に、防壁の各所から隠されていたハッチが開いた。 現れたのは、巨大な自動迎撃バリスタと、投石機の群れ。


「撃てぇぇぇッ!!」


ゴードンさんの号令で、無数の鋼鉄の矢と、魔力爆弾が一斉に発射される。 それは、壁を登ろうとしていたキメラ兵たちの頭上に、死の雨となって降り注いだ。


「ギャアアアアッ!?」


串刺しにされ、城壁から転落していく異形の兵士たち。 さらに、城壁の下では地面が突如として陥没し、巨大な落とし穴が口を開けた。


前進しようとしていた重装歩兵たちが、なすすべもなく闇の底へと飲み込まれていく。


「結界強度、安定しています! 敵の魔力パターンを解析、カウンター術式を展開しますわ!」


ティアーナの声には、確かな自信が満ちていた。 物理と魔法、二重の防壁。


俺たちが築き上げてきた技術と結束が、帝国の誇る最強の矛を、完璧に弾き返していた。

戦況は、圧倒的にこちらに傾いていた。 だが、俺は油断しなかった。


敵の指揮官は、あのゼノンだ。 これしきのことで諦めるような、常識的な相手ではない。


「……小賢しい!」


戦場の喧騒を切り裂くように、苛立ちを含んだ声が響いた。 敵陣の中央。 ゼノンが、自ら前線へと歩み出てきたのだ。


「いいだろう。 ならば見せてやろう……私が手に入れた『新しい腕』の力を!」


ゼノンが、ローブを脱ぎ捨てた。 露わになったその左腕。


そこにあるはずの腕はなく、代わりに装着されていたのは――


「……なんだ、あれは」


俺は思わず眉をひそめた。 それは、腕の形をした、異様な「何か」だった。


黒い金属と、脈打つ紫色の水晶が複雑に絡み合い、まるで生き物のように蠢いている。


古代の遺物を無理やり繋ぎ合わせたような、冒涜的な魔導義手。


起動アクティベート……!!」


ゼノンが叫ぶと、義手がギチギチと音を立てて変形した。 指先が鋭利な爪のように伸び、掌にある水晶が、周囲のマナを根こそぎ喰らうように輝き始める。


「消え失せろ!!」


彼が義手をかざした瞬間。 そこから放たれたのは、魔法と呼ぶにはあまりにも異質な、漆黒の雷撃だった。


バリバリバリバリッ!!!


「くっ……!?」


黒い雷が、ティアーナの展開した多重結界に突き刺さる。 拡散も、防御もされない。 雷は結界を「侵食」し、腐らせるように穴を穿っていく。


「きゃあッ!? け、結界が……食い破られます!?」


ティアーナの悲鳴。 通常の魔法防御では防げない、古代の呪いに近いエネルギー。 このままでは、防壁ごと貫かれる!


(……なら、力で押し返すまでだ!)


俺は、フィーナの手を強く握りしめた。


「フィーナ! 出力を上げるぞ!」


「うん!」


『調律』の深度を深める。 フィーナから流れ込んでくる清冽な龍のマナが、俺の体内で荒れ狂う魔力と混ざり合い、爆発的に膨れ上がる。


「ティアーナ、左翼の結界補強! 正面はあえて開けろ!」


『は、はいっ! 座標修正!』


ティアーナが結界の一部を解除する。 そこは、ゼノンの雷撃が突き抜けようとしている一点。


防御を捨て、あえて敵の攻撃を通す。 それは、俺が撃ち返すための「砲門」を開くためだ。


「……俺が正面から、ねじ伏せる!」


俺は両手をかざし、目の前に魔法陣を展開する。 一つではない。


右手には、全てを焼き尽くす紅蓮の炎。 左手には、全てを凍てつかせる絶対零度の氷。


相反する二つの属性を、龍覚者の魔力で無理やり従え、フィーナの調律で極限まで圧縮する。


「はあぁぁぁぁッ……!!」


ゼノンの放った黒雷が、結界の穴を通り抜け、俺の目の前まで迫る。 その瞬間。 俺は、圧縮した二つの魔力を同時に解放した。


「【龍牙・双極ツイン・ドラゴン】!!!」


ゴオオオオオオオオオッ!!!


俺の両手から放たれたのは、炎と氷、二頭の龍の形をしたエネルギーの奔流だった。 赤と青、二つの龍は螺旋を描きながら絡み合い、一つの巨大な渦となって突き進む。 それは、熱と冷気による破壊の嵐。


「なっ……!?」


ゼノンの黒雷が、双龍のあぎとに飲み込まれる。 古代の義手から放たれた必殺の一撃が、俺の魔力に押し負け、逆流していく。


「バ、馬鹿な……!!」


ゼノンの目が驚愕に見開かれる。


(ありえない! 炎と氷、相反する属性を同時に……しかも、これほどの出力で制御するなど!)


彼の思考が、恐怖で染まる。


(魔力量だけではない! 術式の構成、魔力の密度、そして戦術眼……! 全てにおいて、前回のデータを遥かに上回っているというのか!?)


「うぐぁぁぁぁぁっ!!」


双龍の奔流が、ゼノンを直撃した。 彼の魔導義手からバチバチと火花が散り、黒い煙が上がる。


ゼノンの体は人形のように吹き飛ばされ、後方の地面に叩きつけられた。


「はぁ……はぁ……」


俺は腕を下ろした。 だが、視線は土煙の向こうを睨みつけたままだ。


「……ククッ……」


土煙の中から、不気味な笑い声が聞こえた。


「ハハッ……アハハハハハッ!!」


ゼノンが、よろめきながら立ち上がる。 ローブは焼け焦げ、義手からは煙が出ている。 口元からは血が流れている。


だが、その表情に浮かんでいたのは、敗北の悔しさではなかった。


「素晴らしい……! なんて素晴らしいんだ!」


彼は、狂気的な歓喜で目を血走らせ、俺を見上げていた。


「その力! その進化! まさに未知! まさに神秘!」


ゼノンは、壊れかけた義手を愛おしげに撫で、そして俺を指差した。


「君は最高の研究サンプルだ! その力、解剖して骨の髄までしゃぶり尽くしてやりたい!」


「……狂ってやがる」


俺は背筋に寒気を感じた。 こいつは、勝つために戦っているんじゃない。


俺という「未知」を暴くために、自分の命さえも実験材料にしているんだ。


「まだだ……まだデータが足りない! もっと見せてくれ! 君の力の底を!」


ゼノンが叫ぶと、彼方から新たな地響きが聞こえてきた。 まだ、奥の手があるというのか。


「来い、フィーナ。 ……夜は、まだ終わらないようだ」


「うん、負けない!」


俺たちは再び構えを取る。 眼下の戦場では、傷ついた狂気の魔術師が、さらなる悪夢を呼び寄せようとしていた。

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