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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第126話:魔法司令塔、覚醒

軍事都市『アイギス・フォート』


最前線となるこの都市の練兵場には、針が落ちる音さえ聞こえそうなほどの、張り詰めた静寂が満ちていた。


空は厚い雲に覆われ、遠くで低い雷鳴が轟いている。 まるで、これから始まる大戦の予兆のようだ。


その中央で、俺、カイル、そしてイリスの三人は、師である老魔術師ジュリアスと対峙していた。


「……呼吸を整えなさい」


ジュリアスの静かな声が、冷たい風に乗って届く。


俺たちは荒い息を整え、武器を構え直した。 体中が汗で濡れ、筋肉が悲鳴を上げている。 だが、その瞳に宿る光は、かつてないほど鋭く研ぎ澄まされていた。


「個の力は十分に高まりました」


ジュリアスは杖を掲げ、俺たちを見渡した。


「カイル殿の風は疾風のごとく。 イリス殿の闇は深淵のごとく。 そしてレン公王、あなたの魔力制御は、もはや私の教える域を超えつつある」


老魔術師は、満足げに、しかし厳しく告げた。


「ですが、帝国という巨象を相手にするには、個の力だけでは足りません。 次は、それを『束ねる』訓練です」


「束ねる……ですか」


イリスが短剣を握り直し、問い返す。


「はい。異なる力を重ね合わせ、数倍、数十倍の威力へと昇華させる。 ……さあ、始めましょうか」


ジュリアスの杖が輝き、模擬戦用の強力な魔法障壁が展開された。


「あれを帝国の『将』と見なし、一撃で粉砕してください。 ……連携リンクで」



◇◇◇



「行くぞ、イリス!」


「はいっ! カイル殿!」


カイルとイリスが同時に地面を蹴った。


以前なら、ただ並走するだけだったかもしれない。 だが、今は違う。


リゼットという「劇薬」が投じられたことで、二人の間には、言葉にしがたい意識の糸が張り巡らされていた。


互いの呼吸、視線、魔力の揺らぎ。 その全てを過敏なほどに感じ取っている。


(背中は……任せる!)


カイルが盾を構え、風の魔力を爆発させて加速する。 緑色の疾風となり、障壁の正面へ肉薄する。


(カイル殿の風……合わせます!)


イリスはその風圧を利用し、影のようにカイルの死角へと滑り込む。 闇の魔力を纏った短剣が、黒い残像を描く。


「今だ! 合わせろ!」


「御意!」


二人の魔力が、極限まで高まる。


カイルの剣から放たれる荒れ狂う「風」。 イリスの剣から放たれる静寂の「闇」。


二つの属性が、互いを拒絶することなく、螺旋を描いて絡み合った。


守るべき背中があるという安心感。 隣に立つ者への絶対的な信頼。 そして、淡い恋心が、魔力の親和性を爆発的に高める。


「「【双牙・旋風ツイン・サイクロン】!!」」


二人の剣が交差した瞬間。 黒と緑が混ざり合った巨大な竜巻が、横薙ぎに放たれた。


それは、風の鋭利さと闇の浸透力を併せ持ち、空間そのものを削り取るような凶悪な一撃となって、ジュリアスの障壁に突き刺さった。


ズガガガガガガッ!!


激しい火花と魔力の残滓を撒き散らし、鉄壁を誇った魔法障壁が、飴細工のように粉砕される。


「やったか……!」


カイルが着地し、ザッと土煙を上げる。 その隣に、イリスが音もなく降り立つ。


二人は肩で息をしながら、互いの顔を見合わせ、そしてニカッと笑い合った。



◇◇◇



その光景を後方から見ていた俺の脳内には、全く別の景色が広がっていた。


(……見える)


カイルとイリスの動きだけではない。 俺の意識は今、戦場全体を俯瞰していた。


耳元の『遠話の魔石』からは、絶え間なく報告が飛び込んでくる。


『――首都上空、異常なし。ですが、南東の雲行きが怪しいです。風向きからして、毒霧の散布を警戒すべきかと』


シエナの冷静な声。 俺の脳内マップに、風向きと警戒エリアが青いラインで描かれる。


『――こちらグラニット・ベース。星脈砲のエネルギー充填率、98%到達。いつでも撃てますわ!』


ティアーナの張り詰めた声。 鉱山都市からの射線と、着弾予想地点が赤いサークルで表示される。


カイルたちの「個の戦闘」。 シエナの「索敵」。 ティアーナの「後方火力」。 アリシアの「兵站と医療」。


それら全ての情報が、俺という一点に集約され、リアルタイムで処理されていく。


以前なら、情報の洪水に溺れていただろう。 だが、今は違う。


フィーナとの『調律』を経た俺の精神は、この膨大な情報を、まるでチェス盤の上の駒を見るように、クリアに認識していた。


「……シエナ、南東の監視を強化。風魔法部隊を待機させろ」


「ティアーナ、充填維持。発射シークエンスは俺が指示する」


そして、目の前の二人へ。


「カイル、イリス! 右翼が手薄だ、その勢いのまま切り込め!」


俺の声に応じ、公国という巨大な生き物が、手足のように動く。


誰がどこにいて、何が必要で、どう動けば勝てるか。 全てのことわりが、俺の中で一つになる感覚。


(これが……)


俺は、自分の手を見つめた。 ただ魔力を放出するだけの「砲台」ではない。 全ての力を束ね、勝利へと導くための「結び目」。


それが、今の俺だ。



◇◇◇



「……そこまで」


ジュリアスの静かな声が、訓練の終了を告げた。


俺たちは、糸が切れたようにその場に座り込んだ。 魔力も体力も空っぽだ。 だが、その疲労感は、何よりも心地よかった。


ジュリアスが、ゆっくりと歩み寄ってくる。 その顔には、いつもの厳しさではなく、孫の成長を見るような、深い満足の色が浮かんでいた。


「……すばらしいですね。レン公王」


彼は、俺の前に立ち、恭しく杖を下ろした。


「魔力の制御、戦術眼、そして指揮能力。 あなたは今、個人の魔力(砲台)としてではなく……全軍の能力を束ね、戦場を俯瞰する『魔法司令塔』として覚醒しました」


「……ジュリアス殿のおかげです」


俺は、汗を拭いながら答えた。


「いいえ。あなたと、仲間たちの絆が成した業です」


ジュリアスは、カイルとイリス、そして通信機越しのティアーナやシエナたちの気配を感じ取るように目を細めた。


「個々が最強であり、かつ、それが一つの意志の下に完全に統率されている。 ……これこそが、私が夢見た最強の軍の形」


彼は、深く頭を下げた。


「公国軍は、帝国を迎え撃つ準備を完了しました。 ……勝てます。あなた方なら」


その言葉は、老魔術師からの、最高のお墨付きだった。


俺は立ち上がり、空を見上げた。 分厚い雲の隙間から、一筋の光が差し込んでくる。


「ああ。……勝とう」


俺は拳を握りしめた。


準備は整った。 あとは、奴らが来るのを待つだけだ。


エルム公国、全軍。 迎撃の時は、近い。

「面白かった」


「続きが気になる、読みたい!」


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