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【完結済】伝説の「龍覚者」に覚醒した俺、大切な居場所を守るためなら手段を選ばない 〜始原の森から始まる、現代知識チートによる最強建国記〜  作者: シェルフィールド
4章:帝国大侵攻と龍覚者の反撃 〜裁かれる罪、王女の決断〜

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第111話:黒曜の間、帝国の勅命

お久しぶりです、更新期間が空いてしまい申し訳ありません。


本日より、物語は新章である第4章へと突入します! ここからは書き溜めと並行しての投稿となるため、少しゆったりめの更新ペースになるかもしれませんが、最後までしっかりお届けする予定です。


新たな舞台での物語を、ぜひ楽しんでいってください!

第111話:黒曜の間、帝国の勅命


ヴェルガント帝国、帝都ヴェルガンティス。


大陸の北方を支配する軍事国家の心臓部、皇帝執務室――通称「黒曜の間」。


その名の通り、壁も床も全てが磨き上げられた黒曜石で構成された広大な空間。


天窓から差し込む冷たい月光を浴びて、底冷えするような静寂に包まれていた。


磨き抜かれた床は鏡のように、この場に集う者たちの姿を映し出している。


部屋の最奥、巨大な黒曜石を削り出して作られた玉座に、一人の男が沈み込むように座していた。


皇帝、ヴァレリアス・ザルタン・ヴェルガント。


感情を一切宿さない金色の瞳が、眼下に控える臣下たちを見下ろしている。


豪奢なローブの袖口からは、不気味に脈打つ「黒い痣」が覗き、時折、皇帝の端整な顔を苦痛に歪ませていた。


彼の前には、帝国が誇る最高戦力――三将軍と、一人の魔術師とその他の臣下が恭しく頭を垂れていた。


音もなく影に潜む“影蛇”ケイロン。


冷徹な知性を瞳に宿す“紅の錬金術師”セラフィナ。


退屈そうに欠伸を噛み殺す巨躯の“獣王”グラッフ。


そして、狂気的な探求心を満たす機会を待ちわびる魔術師ゼノン。


張り詰めた空気の中、一人の男が優雅な足取りで進み出た。


かつてドラグニア王家に仕え、今や公国を裏切って帝国の走狗となった男、カジミール卿である。


「陛下。ご報告申し上げます」


カジミールは深く一礼すると、流暢な口調で語り始めた。


その口元には、かつての同胞を売ることへの躊躇いなど微塵もない。


冷酷で、どこか愉悦に満ちた笑みが浮かんでいる。


「エルム公国の脅威は、我々の想定を遥かに超えております」


「伝説とされた『龍覚者』レン、その力を分かち合う『共鳴者』たち……。そして何より、大陸の常識を根底から覆す『転移門』による三都市計画」


カジミールは、芝居がかった仕草で両手を広げた。


「これらは最早、辺境の小国の反乱などという規模ではありません。帝国の覇権を揺るがし、脅かす最大の障壁となるでしょう」


その報告を聞き、跪く将軍たちの間にも微かな波紋が広がる。


白衣のような軍服を纏ったセラフィナは、眼鏡の奥の瞳を鋭く細めた。


(転移門……空間の概念を無視する物流革命か。私の錬金術とは異なるアプローチだが、実に興味深い。サンプルが手に入れば、魔導兵器の展開速度を劇的に向上させられる……)


一方、獣の毛皮を羽織ったグラッフは、凶悪な笑みを隠そうともしなかった。


(へっ、龍覚者だと? 退屈な虫けら共の相手には飽き飽きしていたところだ。その首、俺がへし折ってやるのが楽しみで仕方ねえな)


それぞれの思惑が交錯する中、カジミールは声を落とし、最後の報告を告げた。


「……そして、残念ながら。黒鉄鉱山における作戦は失敗に終わりました。“鉄壁”のギデオン将軍は……敗死いたしました」


四将軍の一角が崩れた。


だが、その場に動揺はなかった。


流れたのは、「やはり奴は甘かったか」という、冷ややかな空気だけだった。


力なき者は淘汰される。それが帝国の、そしてヴァレリアスの鉄の掟だからだ。


「……ギデオンが死んだか」


玉座から、重く、低い声が響いた。


ヴァレリアスが、ゆっくりと立ち上がる。


その瞬間、黒曜の間の空気が物理的な質量を持ったかのように重く張り詰めた。


彼は左腕を掲げ、袖をまくり上げる。


そこには、肉を侵食し、脈打つどす黒い痣があった。


彼はそれを、まるで愛しい恋人でも扱うかのように、そっと撫でた。


「ギデオンよ、其方の忠義、見事であった。その魂は黒曜の礎となり、余の覇道を支え続けるであろう。……今は、眠るがよいギデオン。だが今、重要なのは……『龍覚者』のみ」


皇帝の金色の瞳が、異様な光を帯びて輝く。


「奴こそが、余の呪いを解き、この力を完成させるための……最後の『触媒』なのだからな」


その言葉に、控えていた魔術師ゼノンが、口元を歪めて笑った。

(ククク……やはり陛下は気づいておられる。ご自身の身体を蝕むその力が、古代の遺産であることを。そして、それを制御する鍵が龍覚者にあることを。……素晴らしい。龍覚者は、陛下を癒やす薬であり、私にとってはアーク・セレネを起動するための最高の部品だ)


ヴァレリアスは、広間に控える最高戦力たちを見渡した。


その視線は、人間を見る目ではない。


自らの手足を動かすための、道具を見る目だった。


「聞け、我が四肢たちよ」


皇帝の勅命が、黒曜の間に轟く。


「龍覚者レンを殺すな。必ず生け捕りにせよ。奴の身柄こそが、帝国の未来そのものだ」


ヴァレリアスは、卓上に置かれた一枚の羊皮紙に署名をした。


それは、ゼノンとセラフィナが共同で立案し、カジミールの情報によって補完された、エルム公国殲滅のための作戦計画書だった。


「総力戦だ」


ヴァレリアスは、その計画書を無造作に放った。


紙片が舞い、三将軍の前に落ちる。


「魔導掘削兵器で山脈を突き崩し、三都市を同時に攻め落とせ。奴らの希望を全て焼き払い、絶望の中で……龍覚者を余の前に跪かせるのだ」


「「「はっ!!」」」


三将軍とゼノン、そしてカジミールが一斉に跪き、頭を垂れる。


その声は、エルム公国への死刑宣告のように響き渡った。


冷たい月光の下、帝国の巨大な軍事機構が、音を立てて動き出した瞬間だった。

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