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026 死からも生還する不死身の男、それが僕

「え、あの…」


「シルベルト君どうかした?生き返ってすぐだと不調かしら?」


状況が呑み込めない。あれ、僕は何してたんだっけ?


アティが妙な事を言っている。体の調子が悪いようなことを言っているがそんなことはない。むしろ生まれ変わったくらいに調子が良い。


「ぎゃあっ」


周りには死体が転がっていた。見るも無残な死体の山に僕は悲鳴を上げると後退して黒い檻に頭をぶつけた。


「はっ、思い出した。ワイバーンは?!アイス!え、あ、ああ、これって、みんなの…」


状況が理解できた。思い出すのも恐ろしい。僕はブレスの熱にやられて死んだはず。いや、かろうじて生きていたのか?


「私が生き返らせてあげたの」


「お前が、…そんな高度な魔法まで使えたのか」


「感謝の言葉はないのかしら、シルベルト君」


アティは不満そうな顔をしている。僕の知る限りいつも不満気な表情をしている気がするが、どこか拗ねている様子だ。


「へ?ああ、そうだ、そうだったな。ありがとう」


「いいのよ」


それを聞いて満足したのか、アティはアイザックの死体をまさぐり始めた。


「え、早く生き返らせないのか?」


「どうして?」


「は?どうしてって。生き返らせるだろ普通。僕のことは生き返らせてくれたんだろ?!」


「そうね」


「だったら、どうして…」


言ってるうちに怖くなってきた。どうしてアティは生き返らせずに死体から金品を漁っているんだ?どうしてアイスを、シンシアを、リズを、自分の仲間を真っ先に生き返らせないんだ?


「私は、私にとって有用かどうかで物事を判断するのよ。シルベルト君は有用、良かったね私に認められて」


「何言ってるんだ?有用?アイスたちは…?仲間だろ?」


「仲間よ。でもそれは有用かどうかとはまた別の話だと思わない?私の目的はね、古代魔法を復活させることなの。そのために最善手を尽くすの。シルベルト君はどう?どうして追放されたのに姿を隠してまでここにいるの?」


「あ、そういえば」


いつのまにかアティは僕を名前で呼んでいた。僕の完璧な変装術を見破っていた?いつから?死体になった僕を見て、初めて気づいたのだろうか。


「わかりやすく顔に出てるわ。もちろん最初から気付いてたの。私は常に感知魔法を張り巡らせているの。一度見た相手の特徴は記憶してるからシルベルト君が顔を隠していようと魔法で分かってしまうのよ」


「そうだったのか」


衝撃の事実だ。才能のおかげでアティが僕より少し上の魔法使いだということは分かっていたが、僕の行動が筒抜けだったとは。


「アイスたちは知っているのか?」


「さあ?私は教えてないけど、自分で気付く可能性は否定できないんじゃないかしら」


「そうか、その時はその時だな。すまないが、できれば僕のことは誰にもバラさないでほしい」


「別にいいけど?じゃあどうしてここにいるのかも聞かないでおいてあげる。大体想像がつくしね」


「助かる」


どうやら復讐の事はアイスたちにはバレていないようだ。しかし、僕のことを知っていたなんて。こうなったらアティは復讐の対象から外そう。どうやら感知魔法とやらはよほど優秀な魔法らしい。生き返らせてもらった恩もある。


「でも僕が有用ってどういうことだ?」


「私は貴方の正体も知ってるの。シルベルト・フォン・アグニノス。貴族、しかも伯爵家の嫡子ね。すべて感知魔法で筒抜けだったわ。娯楽として貴族が冒険者に紛れているのは割と見るから以外ではなかったもの」


アティは得意そうに続けた。魔法がどんなに便利でも、越えてはいけないラインがある。僕は弁えているが、本人にそんなペラペラと話すことではないと思わないのだろうか。


「古代魔法を研究するにはお金がいるの。そこで私は貴方に目を付けたのよ。伯爵なら資産があり余っているでしょ、ふふ。私は貴方に近づくために黎明の誓いに入ったの」


「僕のお金目当て…?」


アティは黎明の誓いがまだCランクだった頃に加入してきた。今までそんな素振りは見せなかったが、じゃあそんな昔から僕が貴族であることを知っていたのか。


「それだとだいぶ人聞きが悪いじゃない。近づくためと言ってるでしょ。もちろんパーティーに入ったのには別の理由もあるわ。魔法を研究する上で実地は不可欠。家で魔術書とにらめっこしてるのも好きだけど魔法は実際に使わないとでしょ?」


アティは普段、僕には見せないような可愛らしい笑みを浮かべている。魔法が好きなことが伝わってくるが、どこか歪んでる気がして少し寒くなる。


「私は別にSランクなんて興味なかったけど、ランクが高くなれば強い魔物相手に魔法が使えるからそれは良かったわ。うん、思い返してみると随分と充実した日々を過ごせたみたいね、ふふ。魔法の研鑽を積み、古代魔法の研究をして、シルベルト君に私の素晴らしさを理解してもらって信頼を得て、資金援助をしてもらうまであと一歩だった…」


「え…」


口に出せなかったが、アティの素晴らしさも理解していないし、高慢で常に上から目線の彼女を信頼していたことは無い。どうやら彼女の見ている世界は自己完結的で自分の都合のよいように出来ているらしい。


「聞いてるかもしれないけど、私の研究にスポンサーがついたの。他国の貴族なんだけどね、なかなか理解が良くて研究が捗っているわ」


「へぇ、それは、良かったな」


「でもスポンサーは多くいても困らないじゃない?どう?命を助けてもらったお礼に私のスポンサーになりなさいよ」


「いや、スポンサーになるってことは何かしらのリターンがあるからだろ。僕には何のメリットもないぞ。それに他国のって、隣のクリムフンド帝国しかないだろ!戦争になるかもしれない国の貴族と肩を並べて資金援助とかあり得ないだろ!」


「何ソレ?貴族の情報?確かに仲は良くないけど、そんな国の事情なんて私には関係ないもの。それに、その足りない頭をフル回転させれば分かるんじゃない。他国の貴族が援助して、私が古代魔法を復活させれば…」


「…古代魔法は帝国の手に?おいおい!お前何考えてるんだよっ」


「わ・た・しはただの探究者。叡智を求める偉大なる天才よ」


ついていけない。だがどうする?僕がこいつのスポンサーにならないと、とんでもないことになるんじゃないのか?


「ウウ…アァウ…」


僕の聡明な思考を邪魔するかのように、足元からアンデットの唸り声が聞こえ出した。

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