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024 ワイバーン討伐3

「ブレスに備えろ!」


巨大だった。地を這うワイバーンはその翼を折りたたみ、のしのしと近づいてくる。見上げるほどに大きい。その大きさは民家2軒分の幅を持っている。鱗は無く、硬質な外皮であることが見た目から伝わってくる。


冒険者たちは初手のブレスを警戒したが、攻撃の意志は無いようでこちらの様子を窺っているようだった。

恐らく食事を探していたのだろう。目の前の生き物が食べるのに適しているのか観察しているようだった。


これはチャンスだ。いち早く判断したのは火の選定のスルトだった。これから食べようってものをブレスで消し炭にすることはない。彼の戦闘スタイルは全身に炎を纏って戦う『フレイムマン』と呼ばれる戦法だ。戦闘スキルと火属性魔法を組み合わせた独自のスタイルで魔物を焼き尽くす。


炎のブレスを吐くワイバーンと己の炎、どちらの方が強いのか確かめる。今回の討伐に参加したスルトの個人的な願望だ。


「おらあっ!!!」


気合いとともに炎を纏うと炎の魔人のようなフレイムマンへと変貌する。その燃焼力で超加速し、ワイバーンへと突っ込んでいく。


「グオオオッ」


ワイバーンの鼻っ柱にスルトが体当たりをかます。その巨体はびくともしなかったが、エサだと思っていたものが突然炎を纏ってぶつかって来たのでワイバーンは一瞬ひるんでしまった。


「全員行くぞ!」


それは冒険者たちも同じだった。合図も無しに突然横で炎が上がれば反応が遅れてしまう。ワイバーンに攻撃されたのかとも怯んだが、持ち直してワイバーンへと斬りかかる。黎明の誓いに全部任せて後方腕組の手筈だったが、不意の遭遇戦ではそんなことは言っていられない。


この周辺での食物連鎖の頂点はワイバーンである。今まで逃げる事はあっても牙を剥ける事は無かったエサたちがわらわらと攻撃の意志を持って向かってくる。


ワイバーンは体をひねるように動かすと尻尾を繰り出してきた。巨体から放たれる尻尾の振り抜きは想像以上の重量があった。


「っぐううう!!」


銀の雨粒と火の選定が全員かかってどうにか尻尾を受け止めることができた。が、そのままワイバーンは翼をはためかせると上空へと飛び上がった。


「『フレイムアロー』!!」


空に滞空するワイバーンに火の矢が浴びせられたが効いていないようだった。


「やばい、今度こそブレスがくる!」


空気が焦げるようなニオイがする。ワイバーンの喉元が中から光っているのが分かる。口元からは1000℃を超えると言われている炎が漏れていた。


「勝負だ、トカゲ野郎っ!」


ブレスが放たれる瞬間、スルトが射線上に燃え盛る炎の塊となって上空へと飛翔した。放たれたブレスをスルトが受け止める。


「ぬるい!ぬるいぜっ!」


世界が互いの炎で赤色と化し、地上へとその熱が伝わってくる。スルトに直撃したブレスが勢いを削がれ、それでも無数の火柱となって冒険者へと届いた。

それをアティが魔法で受け流す。


「『エアリアル』」


風魔法で空気の流動を生み出すと、ブレスは冒険者たちの手前で流されて周りの岩肌を焦がした。風のドームで守られている形となった冒険者たちには熱だけが伝わっていた。


長く感じられたがブレスの放たれた時間は僅か10秒程だった。地上へとスルトが落下してくる。


「は、こりゃ俺の勝ち、だな…」


自身の炎は消え失せ、ところどころ黒こげになりながらもスルトはやりきったという表情を浮かべていた。


「次が来ます」


「何だと?!」


連続でのブレス。つまりはそのワイバーンの息継ぎ次第で間隔も照射秒数も変わってくる。先程より息を大きく吸い込んだワイバーンから二度目のブレスが放たれる。


「『エアリアル』」


再び、風のドームが冒険者たちを守る。しかし今度は遮蔽物がなく直接浴びることになった。その熱が先程の比ではない。


「ぎゃああああっ」


「あつうぅぅい!」


「このままじゃ蒸し焼きになっちまう!」


ドーム内部は100℃を超えた。皮膚もぶくぶくと内部から気泡が起ち、焼けただれたが、爪先が異常に熱くなり、眼球の水分も蒸発するため全員が目を固くつむり爪が内側にくるように拳を握った。


……7、8、9、10、11、12、13、14―


心の中で誰かが数を数えた。今は耐えることしかできない。先程よりも遥かに長いブレスは生物を死に至らしめるには充分だった。


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