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017 名誉挽回とか汚名返上とか

僕は病院へと向かった。毎日しつこく屋敷に使者が来るものだから応じることにしたのだ。僕的にはノエルも手に入れたし、終わった過去の話となっている。

悪医者などもうどうでもいいのだが病院側としては伯爵家を敵に回してしまったというのは生きた心地がしないのだろう。謝罪の一つもしたいということだ。僕が出向くのはおかしい気がするが、たくさんの病人を抱えていれば身動きもできないのかもしれない。


まあ、今後の計画に差し障らないうちに片づけておこうか。シンシアの実家のように病院を潰すわけにはいかないので、適当な落としどころを見つけるつもりだ。


僕が出かけている間、ノエルにはアイスたちに会いに行かせることにした。今後についての話し合いとかで招集があったそうだ。



「シルベルト様、わざわざご足労をかけて申し訳ありません。さあ、どうぞこちらに」


通されたのは医院長室。そこには医院長と副医院長、担当主任と若い医師の4人が僕を待ち構えていた。


「時間が惜しい、早速本題に入ろう」


僕は主導権を握るべく、最初に発言する。向こうがどう出てくるのか分からない以上、貴族という立場を利用して常にマウントを取っていこうじゃないか。


「そう言って頂けると我々も何かと助かります。まずは謝罪させてください」


すると4人が全員、床に頭を擦りつけて僕に謝罪する。


「この度は貴族であるシルベルト様のお知り合いに不快な思いをさせて、誠に申し訳ありませんでした」


見事な土下座だ。いい年こいた大人が年下の男に土下座するというのは屈辱的だろう。こういうのだよ、ノエルに見習わせたいものだまったく。


「あれから関係者に詳しく聴取しまして、ケイニーさんは全くの無実。担当していた医師が治療費を横領していたことが判明しました。本当に、申し訳ありませんでしたああぁ」


「とんでもない不祥事だな」


「仰る通りでございますぅ」


僕は冷たく言い放ち、立場を確認する。これは完全に僕が優位である、まあ当然のことではあるが安心して話を進められる。


「そう地面にくっついていては話もできないだろう。お前たちの誠意は伝わった、これからの話をしようじゃないか」


「有難うございます」


土下座ってそんなに嬉しくないな。特におっさんに土下座されても何だかこっちが悲しくなる。本来なら僕じゃなくてノエル親子に謝らなくてはいけないのだが、ノエルたちは来たくないだろうし代表して僕が謝られておく。


僕らは黒光りする革張りのソファに対面して座る。医院長たちは冷や汗タラタラだ。


「まず一番大事な事だが、僕はこの事を公にしないつもりだ」


「本当ですか!?い、いや、許される事ではありません。この病院始まって以来の不祥事です。金に目が眩んだ医師の単独犯で病院に一切の落ち度が無いとしても、患者さんを傷付けてしまったことは変わりありませんから」


こいつ、全然反省してないじゃないか。やはり伯爵家を敵に回したくないだけで悪いとは思ってないぞ。組織で起きた不祥事なら、そのトップが責任を取れよ。


「勿論、今まで支払われた治療費は全額返金致します。それに入院費用など諸々の費用も一切頂きません」


そういうと、僕が投げつけた金貨の詰まった鞄が出てきた。


「まあいい。それで?金を横領した医者はどうなったんだ。もちろん二度と医療に携われないように指か手か腕を切り落とすくらいしたんだろうな?」


調子の良いことを言っているので少し脅しておく。公にはしないとは言ったが罰は裁く必要がある。


「そ、それが、行方をくらましていまして誰も彼の居場所を知らないのです」


「本当か?その道のプロに調べさせたらすぐにバレるぞ」


「嘘などつきませんよ。私どもも困っているのです」


僕は用心深い、後でアグノニス家の暗部に調べさせておこう。それが本当ならついでに医者の行方も捜させるか。


「ならここからが本題だ。僕はこの事を許そうと思う。思うが、そのためには必要なものがあるな。それは何だと思う?君、端の若い君、答えてくれ」


「え?は、はい。えーとお金でしょうか?」


「違うな、僕は金には困ってない。物じゃない、主任さん何だと思いますか?」


「誠意ですね」


「端的に言えばそうなるな。具体的に言うと?」


「はい。シルベルト様さえよろしければ、ウチのナースを何人か見繕うことは可能です。お望みでしたら女王様もよべます」


「おいおい失言だぞ。僕を怒らせたいのか?」


「すいませんすいませんっ」


僕の治療に携わった者から余計な知識を得てしまったようだな。これは本気で暗部が動くことになる。


「僕の求めるものは『医療』さ。お前たちは医者だろう?ならその腕を僕のために存分に振るってもらうことにする。具体的にはだな……」



ノエルはメイド服からいつもの冒険者の装いに着替えると冒険者ギルドへ向かった。

ギルドの奥には個室がいくつかある。誰にも話を聞かれたくない場合や身分の高い人への配慮が必要な場合があるためだ。


ギルド職員のルーシィさんに話しかけ、皆の待っている個室へと案内してもらう。扉を開くとアイスと目が合った。


「ノエル、久しぶり」


「うん、久しぶり」


黎明の誓いのメンバーと会うのは数週間ぶりだった。アイスはいつ見てもカッコイイ。


他のメンバーに手を振り、空いてるイスに座る。シンシアは実家のことがあったからどこか疲れている様子だ。あまり顔色が良くない。リズも変わらない様子。アイスと久々に会うためか胸元のあいた服を着ている。ちょっと露骨すぎる。


「よし、皆揃ったな。まずは今回の件本当にすまなかった。リーダーとして謝罪する」


「あれ?アティは?」


「ん?あいつはほら、天才さまだから。スポンサーがついたとかで魔法の研究が忙しいんですって。後で結果だけ教えてほしいってさ」


「そっか」


「ゴホン、いいかな。本当にすまなかった。長い自粛を強いてしまったこと深く反省している」


シンシアの実家の話。私はお母さんのことでいっぱいだったからそんな詳しくないけど、どうしてシンシアじゃなくてアイスが謝ってるんだろ。シンシアだって本当は何も悪くないんだけど、家族だからこっちにまで運悪く影響しちゃっただけなんだし。


「Sランクになった早々出鼻を挫かれる形になってしまったが、俺たちの冒険は始まったばかりだ。良くない噂とかも流されてしまっているが、これから信頼も取り戻していきたい。頼む、俺に皆の力を貸してくれ!」


「ひゅーっ。カッコイイよ、さすが私の相棒ー!」


リズがはやし立てる。そうだね、これから頑張っていけばいいんだよね。


でも私はそれについていけないんだ……。


「で、だ。何と俺たちに指名依頼が入ったんだ。しかも貴族から!」


「え、すご」


「そうだろ、Sランクになったって実感するよな。内容はワイバーンの討伐だ!俺たちはこの依頼を成し遂げて、名実ともに胸を張ってSランクを名乗れる。黎明の誓い活動再開だー!!!」


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