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011 貴族はお金を持て余している4

「へえ、黎明の誓いってのはそんな悪いことまでやっていたのか」


「そうなんですよ。僕も毎日コキ使われてて、嫌になって辞めようとしたんですけど家までやってきて強制的に働かされてたんです」


僕の活動は地道だ。黎明の誓いの活動再開を遅らせるため、こうして他の冒険者たちに尾びれ背びれを付けた話を吹聴して回っている。今や黎明の誓いは悪逆非道のSランクパーティーだ。シンシアの実家の一件以来、様々な憶測が飛び交っている。主に妬みや嫉みからここぞとばかりに悪い噂を流している者が僕の他にもいるようだ。


「シルベルトさん。貴方は一応擁護する側に立たないといけないのではないですか?」


「まさか、僕はもう一介のCランク冒険者ですから。そんな義理はありませんよ」


呆れた様子で冒険者ギルドのルーシィさんが僕を見ている。そんな事情も絡み、アイスをはじめとするメンバーたちは人のまばらな時間にしか外出していないそうだ。僕が頑張らなくても活動再開はまだ先になりそうだが、小さな努力でもコツコツと積み上げていかなければならないだろう。


ノエルの件は、とりあえず次の支払日を待つことにした。個人で依頼を受けるような様子もないし、チャンスはまだ失われていないのだ。


「お、シルベルトじゃないか。久しぶりだな」


「ん?なんだ、アイザックか」


そこには見知った顔があった。仲間たちと依頼を完了させてきたのだろう、買い取りカウンターに移動する面々から一人こちらに抜け出てきたのはアイザックという男だった。


サンマニー子爵家の四男で、僕と同じく身分を隠して冒険者をやっている男だ。貴族の身分は僕の方が上だが、今はただの冒険者同士なのでフランクに話す。


「聞いたぜ、パーティーを追放されたんだってな」


「いつのネタだよ。情報が古いんだよ」


「まあそう言うなって。今度また一緒に冒険に行こうぜ、ブラックリストからはいつ頃外してもらえるんだ?」


「いつ頃も何も、僕は永遠にリスト入りだ」


「は?だって俺たちはアレだろ?」


「特別扱いは無いそうだ。アイザックも気を付けろよ」


「うへぇ、マジかよ」


笑顔のルーシィさんがアイザックに手を振っている。二人でそれに苦笑いを返す。


「そうだ。代わりと言ってはなんだが、僕から『光蜥蜴』に指名依頼を出そう」


「俺たちに?何かあるのか?」


アイザックが興味を示す。僕が指名依頼を出す、それすなわち貴族からの依頼となる。アイザックは『光蜥蜴』というパーティーを結成している。Bランクパーティーだ。貴族から依頼を受けるにはAランクが必要になるが、指名依頼、もしくは個人的な依頼なら例外である。


「まあ、ちょっとね。後から正式にギルドを通すが、『貧乏病』の特効薬になる薬草の生育場所を調べてきて欲しいんだ」


「ふぅん、となるとアイベル草だな。何株欲しいんだ?」


「焦るな。自生している場所を調べて来るだけでいいんだ。ただし、調べる地域はあの地図の全部だ」


「はあ。そりゃまた変わった依頼で」


ギルドの壁にはこの周辺の地図が掛けられている。実際の距離に換算すると端から端まで約100㎞はある大きな地図だ。


「アイベル草が生えるには条件がある、それで絞っていくと探すポイントは限られてはくるが…」


「正確な場所を頼むぞ。それとできるだけ早い方がいい。明日にでも依頼を受けられるようにしておくから今後の予定があるならキャンセルして、僕の依頼に専念してくれ」


「分かったよ。貴族からの指名依頼なら皆も喜ぶ。早速準備しよう」


「頼んだ。報酬とは別に、かかった経費は後から出してやるからな」


「おう」


アイザックは仲間と合流すると、準備のためにギルドを出て行った。僕は早速アグノニス家名義で依頼を出すことにする。


くく、見てろよノエル。貴族の僕に逆らうとどうなるか思い知らせてやる。薬そのものを作れないようにして困らせてやるぞ。


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