第三部:7
電車から降りて唐王駅に着く。もうすぐ四時。電車に揺られている間に見たツイートによると、彼女は友達とカフェに入りモカフラペチーノを注文したらしい。駅周辺で女子が好みそうなカフェは二つ。俺はそのうちの一つに当たりをつけ、通りがかるようにして窓から中を覗いた。
(あっ、いた)
すぐ窓際の席で女子と向かいあって。一瞬、見つかったらやばいと思ったが、よくよく考えなくても俺は彼女たちと面識はなかった。いや、女友達の方と言葉なら交わしたことあるか。イギリスを舞台にした超有名魔法ファンタジー小説のヒロインみたいな髪色・髪形をした可愛らしい女子は演劇の受付をしていた子であった。
(男はいないみたいだから帰るとするか)
女子同士の友情とは何とも美しい。このまま男を寄せつけないほど仲良くしてもらいたいものだ。
俺は彼女らをもう一度、一瞥しながら踵を返す。そのときだ。お洒落なカフェが面している四車線の車道を大仰なトラックが通ったのは。
(載せているものも大仰だな)
若葉色のシートがかけられているものの、枝が一本だけ無邪気にはみ出ていた。憶測だが、あの不可解な落葉樹だと思われる。昼間に名和が言っていた通り、切り落とされてしまったのだろう。
(結局、生で見ずに終わったなあ……)
後悔の感情が胸に満ち溢れていく。初めは不気味に思って近づこうともしなかった樹。けれども、今となっては好感が生じてしまっていた。
(不気味の谷……いや、不気味の樹と言ったところかな)
俺が樹に似ていってるから好感を持ちだした。俺が樹そのものに成り変わろうとしているから共感を持ちだした。そうとしか考えられない。
(でも、俺はまだ谷に辿り着いていない)
強い嫌悪感を持ってしまうと言われる谷。
そこに陥って乗り越えたときからが本番なのだから――。




