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第二部:2

「じゃあね、お兄ちゃん。洗い物はちゃんとしておいてよね。夜にチェックするから」

「先輩、部屋を貸してくださりありがとうございました。よく分かりませんがイブでなければデートはOKなんですよね?」

 朝食を終えて午前九時前。

 玄関先で俺は五花と御来屋を見送る。二人は昼から唐王市内をデートするらしく、お互い身支度のために一旦だけ帰るとのことだった。五花は俺の隣りの部屋だからいいとして、御来屋は電車とバスを乗り継いでようやく着く自宅からとんぼ返りしなければならない。

「ああ。俺はイブに街中を歩くカップルを嫌悪しているだけだからな。エロイことをしないなら何も問題ない」

 そこまでの苦労をするのだから文句は言わない。それに恋をすることでカップルへ向けていた敵愾心による嫉妬がなくなったというのもある。

 その敵愾心は二年前の昨日の出来事に起因するもの。あの夜、俺は同じ高校に通う好きな子が彼氏とデートしているのを目撃してしまいもう恋をすることはできないと思った。しかし、現につい昨日の夜、湖山さんに一目惚れしてしまった俺。失われたものが数年後の同じ日に回帰するその様は呪いのように皮肉めいており、皮肉(アイロニー)には愛があった。敵愾心のない嫉妬は羨望でしかない。だから、俺は「いつか湖山さんとデートできたらいいな」という思いを胸に二人を暖かく見送ることができているのである。

「キモっ、そんなのお兄ちゃんには関係ないじゃん」

 それを露知らず俺を突き放す五花。今、一番冷たい妹。今年のゴールデンラズベリー賞候補にも挙がっている。

「へいへい。分かった分かった。しっかり楽しんでこいよな」

 今朝の天気予報によると本日は十二月にしては気温が高く暖かい絶好のデート日和らしい。わりと引きこもり体質の俺でも気が向けば用もなく外に出てしまうかもしれない。

「言われなくてもそうするよ。蔵之助くん、期待しているからね」

 と、言い終わると同時に五花は肘で彼氏の胸をつつく。その攻撃を受けた彼氏である御来屋はというと、

「うわっ、ハードルが高くなった。でも、いっちゃんのために頑張るよ」

 眉と眉の間を広くおどけ悠々閑々としていた。

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