25.みつどもえ
カナウは、今日あった出来事を、少女ーおばあちゃんにかいつまんで説明した。
カナウと、一体の人形(おばあちゃん、アラヤ)との会話です。
おばあちゃん=小春、です。
…話を聞き終わった少女はーおばあちゃん(小春)は、
(やっぱり、ひとりでいかしたのは、まずかったねぇ……)
と、唇をかんだ後ー。あらためて、カナウにお礼をいった。
(そうか……、それは大変だったね、紀彦ちゃんを守ってくれてありがとうね)
(うん。お守りに、わたしの身体の一部を入れておいてよかった。おかげで、お爺さんが作った空間に入ることができたよ)
(カナちゃん、グッジョブ。で、どうだった、そのお爺さんの反応はー。
使ったんでしょ、精神感応からの心理操作……)
心理操作…求魂娑対策として、最近、小春がカナウに教えた技・術である。
今晩、カナウはそれを『もの吹き爺』相手に試してみた。おかげでー、『もの吹き爺』は命拾いした。
(だいじょうぶ。うまく、いったよ。お爺さんに、気づかれないように、空間から紀彦を連れ出すことができたよ。たぶん、私のことも忘れていると思う)
―ただ、心配なことがあるんだけど……
カナウは、消したはずの記憶を、紀彦がぼんやりと覚えていることを伝えた。
―うん、そのお酒のせいだね。
―紀彦ちゃんの潜在的な「おまけ(どうさつ)」を覚醒させるために、紫苑草を煎じて酒に入れたんだろう。それが、消した記憶を呼び起こしているんだと思う。
少女が、即座にいった。
(それって、前に消した記憶も、思い出すってことなの)
(潜在能力まで引きずり出したのなら、遅かれ早かれ、あの夢の記憶も、その前のことも、思い出すだろうね)
―そ、そうか。これまで消した記憶もおもいだしちゃうのか
(それは、すこし困るな)と、カナウは思った。自分の戦う姿、ー髪を振り乱し、すごい形相をして、服はぼろぼろだし……、をバッチリ見られている。
ある時なんか、『たまとり』の激しい物理攻撃でー。紀彦の目の前で、着ていた服が消滅して、ほぼ全裸にされたことがある。
―それは……、あんまり、おもいだしてほしくない…
カナウは、先ほど紀彦と話して気になったことを、小春(少女)に相談した。
(そうねー。『たまとり』と『かりびと』の襲撃がつづくようならー、もう隠しておけないかも)
小春は、少し考えて、ぽつりといった。
―紀彦ちゃんには、わるいけど…
(これからは、記憶を消すのはやめにした方がいいね……)
それは、カナウも同意見だ。
これ以上、頻繁に紀彦の記憶をいじりたくない。
何かのミスで、自分との思い出まで、きえてしまったらー
(ただ、この短期間に…、『たまとり』と『かりびと』が続けて襲ってくるなんて―。 あの風水師が『もちぬし』の情報を、そいつらに流しているのは間違いね…)
(…多分、あの風水師。紀彦ちゃんの潜在的な「おまけ」ー、「どうさつ」のちからをもっていることにも、気が付いていたんだろうね)
小春の声が、にくにくしげに呟いた。きっとー
(あいつは、『たまとり』に『もちぬし』の情報を流す代わりにー、自分の風水占いが当たるように、奴らに「ちから」を貸してもらっていたのさ)
(だから、世間の評判がよかったんだー)
あの風水師は、『たまとり』と、持ちつ持たれつーの関係だったようだ。
(それより……、『もちぬし』としての紀彦ちゃんの存在が、『たまとり』たちに、知れ渡っていると思って間違いないようだね)
x x x x
(おばあちゃん。今晩会ったお爺さんは『たまとり』じゃあないの?)
カナウは、小春が先ほど話した『かりびと』が、ひっかかっている。
(うん、今回の『たまとり』は、『求魂娑』と『袋孤児』の2体だよ……)
小春は、『求魂娑』を、敢えて<今回>に含めて数えた。
(『もの吹き爺』は、『たまとり』を狩るもの『かりびと』だよ。仲間や一族で『たまとり』を狩って生活しているやつらさ。かれらは、修験者から、さらに闘いの修業や鍛錬をつんだ人間だよ。だから、彼らも、超自然的なちからが使える)
『かりびと』ーカナウはそれについて、あまり知らない。
(山伏や修験者たちは、『たまとり』を追い払うことはできるけどー、殺すことはできないんだ。だから、人々は『かりびと』に報酬を出して、『たまとり』を狩らしているのさ)
―そういえば、『土そば』と、いう仲間?が、いるようなことを言っていた。
(やつら、一対一では『たまとり』にかなわなから、チームを組んで狩りをしているのさ。 どうやら、紀彦ちゃんを無理やり仲間にして、利用しようとしている…ようだね)
『かりびと』は、人間の集団であるために、正確に『たまとり』を認識することができない。つまり、多人数の中に紛れ込んだ『たまとり』の隠形を見破るには、「どうさつ」の力が大変有効なのである。その力を自由に使えたら、彼らの『たまとり』狩りの実績も上がるはずだ。
―あの風水師は、『たまとり』だけでなく、修験者や『かりびと』にも、紀彦の情報をながしていた……
(それってー、紀彦は、『たまとり』と『かりびと』の両サイドから狙われているってことじゃあないの)
考えてみると、事態は、結構複雑になっているようだ。
(『もの吹き爺』は、紀彦ちゃんを『たまとり』をあぶりだす道具として使おうとしている)
小春は、最愛のひ孫がモノ扱いされたと思い込んで、憤っている。
―こんなことになるのなら、あの風水師を、あの場で殺せばよかった。
小春は、あの日も紀彦についていた。彼女は、風水師の本性を見抜けなかった自分に腹が立った。
x x x x
(あのう……)
それまで黙っていたアラヤが、おずおずと口をはさんだ。
(私たちが探している 武将ーナガマサも『たまとり』なんですか)
(ううん、ナガマサは物の怪や怨霊のたぐい、『たまとり』じゃあないよ。その前の状態ー)
小春が、応えた。
(ただ、やっかいなことになったね。しばらくは、『たまとり』や『かりびと』からの襲撃が続くと思うよ。明日からも油断できない……)
小春が、ため息交じりに呟く。
(ご、ごめんなさい、こんな大切な時に、私のことをお願いしてー)
(アラヤさん、大丈夫だよ。あなたのことはくれぐれも頼むーと、ステッパーから、お願いされているしー。それに私ー、昔、彼女にとっても世話になっているから―。あなたの彼氏の魂を取り戻すまでは、私はあなたと一緒に行動するよ)
(先生、ありがとうございます)
(お礼なんかいいよ。それにこの人形は私たち二人が入っていないと動かないようだしー。いろいろと調べるには、思念体や霊魂だけでは無理があるしねー)
(そうだよ。アラヤさん、資料館や図書館で調べものをするのは、実体があった方が何かと便利だよ)
(カナウさん、ありがとう。あなたにとっては、紀彦さんが一番大切なのにー)
―ただ、こまったねぇ。明日から、ダレが紀彦ちゃんについていくかだよ。私は、アラヤさんとナガマサの行先を、つきとめないといけなしー。
カナちゃんは、学校があるし……
なによりもー、紀彦の手前、目立った行動はしたくない。
ーとき、
突然、カナウが、顔をあげて、パンと手を打った。
(あっ、それなら、わたしにいい考えがある)
お付き合いいただきありがとうございます。




