19.恋愛成就の本
とある人物の、帰り道~での話です。
会社の帰り道、いつも通る商店街。
運命に導かれるようにして入った古本屋。
―これまで、足すら止めたことがないのに
こんなところに、古本屋があったことも知らなかった…
店内は、帰宅途中の客で結構混んでいた。
そこで一冊の本をみつけた。
とあるコーナーの書棚を見上げた時、まるで自分を見つけてくれと、いわんばかりにその本の背表紙が輝いた―ように思われた。
タイトルをみてー、かなり、興味をそそられた。最近、常々考えている……
―何とかしなければ 何とかして彼女と
これが今、自分が必要としている本なのではと、思った。
試しにその本を手に取った。ページをペラペラと、めくってみた。各章ごとに拾い読みをする。
断片的にだが、読み進むにつれ、徐々に興味が失せていった。最終章に近づく。
最後まで見ずに書棚へ戻そうー。
そう思った時、巻末の章タイトルに、ふと目が留まった。
(こんなことが、本当に可能なのだろうか)
・「あなたが思いを寄せている人物に、意中の相手がいた場合」の対処方法
ペラペラとページをめくっていた指が止まり、本格的な立ち読みの姿勢になった。横合いから鋭い視線を感じて、本から顔をあげる。視線を感じた方に顔をむけてみると、レジから店主らしき女性が、こちらの方をにらんでいた。
気まずさを紛らわすよう彼女から目をそらして、最後のページを開いて、著者の来歴を確認する。この本の書き手は、有名な風水師だった。その名前から……、何度か、テレビで彼を見たことがあった。
パタンと本を閉じると、右手に持ってレジまで、すたすたと歩く。
「これお願いします」
と、レジの女性の本を差し出す。それまで、
無表情だった女性が、わずかに笑ったような気がした。代金を払って、「ありがとうございました」という声に送られて、店を出た。
もしかしたら、掘り出し物を手に入れたのかもしれない。
x x x x
商店街を抜けて少し歩くと、閑静な住宅街に入る。その一角にある、賃貸マンション。セキュリティを解除してエントランスホールに入ると、右手にメールボックス、その奥にエレベーターが二基。
それぞれ、1階と最上階に待機している。エレベーターに乗り込むと正面にむきなおり、8階のボタンを押した。ドアが静かに閉まり、エレベーターは、うなり音を発しながら上昇していく。
好きな時間に食事がとれる、一人暮らしの利点だ。今晩は、本屋に立ち寄ったおかげで少し遅くなった。晩御飯は、何も作る気がしなくなったので、冷凍食品で済ませることにした。
―と、なればそんなに急ぐこともない。幸い今日は、そんなにおなかがすいていない。先ほど、古本屋で買った本を、ショルダーから取り出してみる。
書籍のタイトルは『恋愛を成就させるための風水術』。
風水の理論を使い恋愛運を高めるための、ハウツー本である。各章ごとに、具体的に効果を上げる方法と効果が、つらつらと書かれている。―が、そんなことには、どうでもよかった。
知りたかったのはー、
「意中の相手がいる人の心を、完全に自分に向けさせる方法」である。
古本屋で興味を引いたのは、巻末にかかれていた内容。
これらの方法をやりきっても効果が出なかった時の、残された唯一の方法として使う手段。なぜこんなことが、書かれているのか意味不明だった。この手段に関していえば、風水術とは全く関係がない。
そこには、とある恋愛コンサルタントのホームページアドレスが記載されていた。
つづけてー、そのコンサルタントが得意とする相談内容、その特徴と利点。
それはー、すでに相手がいる人物を好きになった場合の対処方法。
その人物に、相手のことを完全に忘れさせる方法を、相談者に授けるーとある。たとえ、相手が婚約者や恋人であってもその方法を使えば、(その人物に対して)ほぼ100パーセント効果があると、アピールしていた。
要は、横恋慕の恋愛成就。
―まさに、これが知りたかったこと。でも……
(こんなことが、本当に可能なのだろうか)
半信半疑になりながらも、パソコンを開き、そのHPにアクセスしてみた。
お付き合いいただきありがとうございます。
<ご連絡>
1話あたりの文字数が増えてきたので(約3,000文字)、投稿を1日一回に変更します。
本日から、朝8時に1話ずつ投稿いたします。よろしくおねがいします。
ちなみに本日は少ないです。




