18.真奈美
工藤は……、真奈美のスカートの中を盗撮しようとした。
この日のため、工藤は真奈美を、自分が部長を務める校内の美化委員に、選出しておいた。放課後、委員全員で、美化活動をおこなうと、屋上に招集させた。そのとき、ー間が悪いことに、真奈美は、カナウのお守りを身に付けていなかった。
工藤は、真奈美に付きっ切りで指導するようにみせかけ、実は、小型カメラを、彼女のスカートの中に向けていた。そのとき、おいで魔汗が屋上に現れた。おいで魔汗の触手は、直ぐに工藤のよこしまな欲望に感応した。
工藤の欲望の矛先が向いていたのは、まぎれもなく真奈美でありー。おいで魔汗もまた、真奈美に向けて、欲望の牙を向けた。やつは、真奈美に近づくと、背中の甲羅を大きく両翼のように広げ、彼女の身体を包み込んだ。
真奈美の意識は、おいで魔汗に取り込まれた。
生徒たちの怒号や悲鳴が、開け放たれた窓からきこえたのはー。カナウがちょうど委員会が終わり、教室で真奈美を待っている時だった。ただならぬ、雰囲気に、カナウは胸騒ぎを覚えー。声が聞こえた先、屋上へと駆け出した。
カナウが屋上へ着いたとき、真奈美はすでに、金網の上部―金網が内側へ反り返った部分までのぼりきっておりー。そこを乗り越えようと、あがいていた。彼女の手は血で真っ赤にそまり、白いソックスにも血がにじんでいた。
何人かの生徒が、金網をよじ登り、下から真奈美の足をつかもうとしていた。残りの生徒たちは、下から真奈美に向かって思いとどまるように、大声で懇願していた。工藤は、助けをよびにいったのか、そこにはいなかった。
おいで魔汗は、生徒たちが増えたことー。そして、力を一部開放したカナウに警戒してー。一旦、姿をけした。カナウは、すぐに力を使って真奈美を金網から引きはがし、彼女を安全におろした。
周りで見ているものは、真奈美が力尽きて屋上床へ落ちた、としかみえなかったであろう。
カナウは、真奈美にかけより、名前を呼び彼女の肩を抱きあげて、絶望した。その目はすでにあちら側にいってしまっていた。
これは、もどるにしても相当の年月が必要であろう。意識はほとんど、おいで魔汗に吸いつくされていた。カナウは、真奈美を胸に抱いて大声をだして、泣いた。彼女の名前を呼びながら、涙が枯れるまで泣いた。
すでに、おいで魔汗の気配は屋上から、消えていた。遅ればせながら、助けを連れて駆け付けた工藤が、二人の様子を見て、ぺたんと膝をついた。
カナウは、復讐を誓った。
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次の日から、カナウは、休み時間、昼休み、放課後と時間が許す限り、屋上にたってー。おいで魔汗が現れるのを待った。おいで魔汗は、真奈美の命(魂)を奪うに至っていない。
真奈美の意識はおいで魔汗に取り込まれており、彼女の精神はおいで魔汗に支配されていた。奴はー、真奈美の魂を得るためー、彼女の精神を操り、必ずや彼女を、再び屋上に呼び寄せる。
もし、真奈美がこなければ、(なぜ来ない)と不信に思いー。様子を探るため、自ら屋上に現れるであろう。カナウはそう踏んだ。屋上には、奴の棲み処への出入り口がある。奴は、絶対に屋上に姿を見せる。
当然であるがー、翌日から、真奈美は、登校しなかった。彼女は、その都市にあるー精神科の専門病院に入院した、とのことだった。
待つこと八日目、カナウは、屋上に出現したおいで魔汗を、一瞬で葬った。瞬時にー、おいで魔汗の体はちぎれ跳び、なにも残らなかった。おいで魔汗は、自分の身に何が起こったのか、考える隙も無かったであろう。
カナウは、当日現場にいた生徒たちの記憶から、なぜ、真奈美が屋上にいったのかをしった。そして、彼女は工藤の思考を読み、彼の真奈美に抱いていたよこしまな欲望をしった。
翌日、カナウは工藤を屋上に呼び出した。工藤は、間抜け面をしてホイホイやってきた。彼女は、工藤を罵ったうえで、100メートル上空から彼を校庭にたたきつけた。工藤は、無様に叫びながらペシャンコにつぶれた。
そのあと、工藤の悪事が露見した。盗撮用の隠しカメラとー、それで撮影した女子生徒の画像が、職員室の机の中の、USBメモリーから出てきた。マイクロCCDカメラが、工藤のロッカーの中から見つかった。
多くの女子生徒と、真奈美のスカートの中を写した画像も、彼が使っているパソコンのフォルダーに残されていた。学校側は、慌てて隠蔽工作をした。
工藤の死は、不審死としてかたづけられた。おいで魔汗と工藤はいなくなったが、真奈美は学校へ戻ってこなかった。
「真奈美は必ず、取り戻す」カナウは、心に誓った。
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