↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/30

17.おいで魔汗

おいで魔汗(まあせ)と、読みます。


 津田カナウが通う公立中学校。

 

 四方を高い金網に囲まれた屋上、いつかテレビで見た格闘技のリングのようだと、いつも思う。本来は、飛び降りたいという気持ちを、少しでも起こさないようにするための人道設備。


 だが、すでに何人もの生徒が、金網をもろともせず、ここから空へ向かって跳んだ。その都度、金網はたかくなり、頑丈な鉄カゴへと姿を変貌したのだ。今日ー、


 カナウは、金網の手前に設置された防護柵にもたれて、ぼんやりと遠くを眺めていた。頬をなでる風が、悲しい。お昼休み、校庭や階下の開け放たれた窓から、生徒たちの騒ぐ声が聞こえてくる。


その中には、遠くから、風と共に流れてくる街の喧騒も、すこしまじっている。カナウがここに立つようになってから、一週間がたった。誰から頼まれたわけではかった。彼女自身の意思だった。


本来、彼女は、彼以外のために力を使いたくなかった。使う気もなかった。


 しかし、クラスで一番仲良くしている、真奈美が取りつかれてしまった。

いや、クイモノにされたと、いったほうがいい。


     x   x   x   x


 中学で、カナウが最初に友達になったのが、真奈美だった。純粋にやさしくて、話していると、春風の中にいるように気持ちがよかった。2年間、ずっと、クラスが一緒だった。


3年目の4月、カナウは、運命の神様に感謝したくらいだった。

神様は、いなかったけどー


 カナウの中学校、その校舎の屋上には、化け物が住みついていた。

化け物の名前は、「おいで魔汗(まあせ)」と、いった。


カナウは、 そいつの存在には、入学した時から気が付いていた。

ただ、どうこうする気はなかった。

自分にさえ危害を加えてこなければ、見逃すつもりだった。


おいで魔汗は、カナウの存在に全く気が付いていなかった。

だから、そいつは、平気で校内を徘徊し、カナウの教室にもやってきた。

 

体の大きさは、縦幅、横幅とも普通の大人より、大きかった。四角い体形で、四隅から手と足がでており、背中にはかめのような甲羅を背負っていた。すっぽんのような顔をしており、校内を二足歩行で移動していた。


もちろん、普通の生徒たちに、その姿を見ることはできない。家に帰って、おばあちゃんに、学校にこんなやつがいると、訊ねたらー。そいつは、『おいで魔汗(まあせ)』だと、教えてくれた。


 おいで魔汗は、地域密着型の化け物であった。


 おいで魔汗は、ターゲットの意識を吸い取り、精神を支配してターゲットの行動を操る。最終的に、ターゲットを自ら死に至らしめて、その魂を奪う……とても、危険な奴だ。


おいで魔汗の糧(えさ)は『たまとり』同様、人の魂であった。奴は、かなり前から、その学校に住み着いており、学校からは、めったに外へはでないらしい。


奴が、学校から出るのは、『たまとり』を狩るときのみ。『たまとり』さえも、おいで魔汗の糧であった。少し前までは、プールが奴の住処だったが、今は屋上に移動している。

以前はプールで、生徒を襲っていたのだ。


 いまはー

おいで魔汗は、不定期に校内をうろつき、自分の糧になる生徒を探してた。カナウは、奴の後を、ひとりの生徒がふらふらとついていくのを、二度見かけたことがあった。


カナウにとっては、関係ないことだった。その生徒が、屋上から跳んだときいても、彼女の心は動かなかった。どうやら、屋上に、おいで魔汗の棲み処(空間)への出入り口があるーらしい。


 カナウは、親しくなった真奈美に、決して屋上にはいかないようにと、告げた。そして、自家製のお守りを渡した。お守りは、おばあちゃんが作り方を教えてくれた。カナウは、真心をこめてお守りを作った。


真奈美は、「ありがとう」と、言ってお守りを受け取りー。カナウをギュッと抱きしめた。そして、「カナちゃんのいうとおりにするよ」と、約束してくれた。


 カナウが見る限り、実際にー真奈美は、かなり危うそうに見えた。一途で心がきれいな人間ほど、おいで魔汗に狙われやすい。真奈美は簡単に「おいでませ」のエジキになりそうだった。


それほど、真奈美は、清らで純粋だった。彼女を見ているだけで、こちらの気持ちも浄化された。だから、真奈美が約束をしてくれたとき、カナウは安心した。


 だが、最近になってそれを破らせたものがいた。クラス担任の、工藤だった。工藤は、外見は若くはつらつとした、さわやかタイプの教師だった。ーが、実際には、心は卑しくさもしくて、女子生徒を自分の性欲のはけ口としか見ていなかった。


 工藤は、屋上の掃除にかこつけてー真奈美らを屋上に呼び出しー。彼のカバンに仕掛けたマイクロカメラで、彼女のスカートの中を盗撮しようとした。

お付き合いいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。