終章 永遠じゃないプリンセスたち
騒動のあと、正式な調査委員会が立ち上がった。
三年前の記録は少しずつ掘り返され、隠されていた事実も少しずつ表に出た。
だが、すべてが公になったわけではない。
プリンセスたちの名前は相変わらず雑誌をにぎわせ、
学園は「ブランドイメージの維持」を口にする。
ただ、一つだけ変わったことがある。
プリンセス棟の扉から、「永遠の」という札が外された。
クラス名は、ただの「特別クラス」に戻った。
三人は、放課後になると時々職員室に顔を出すようになった。
進路相談という名目で、お茶を飲みに来る。
ある日、霧島がふと思い出したように言った。
「先生、けっきょくプリンスは誰だったんだろうね」
俺は笑って答えた。
「プリンスなんて、やっぱりいなかったんだよ。いたとしたら、それは、三年前に屋上から落ちたあの子だけだ」
「それ、ずるい答え方」
霧島はそう言って、窓の外を見た。
遠くで、古い旧館の屋上が小さく見える。
あの日と同じ月が、静かに昇っていた。
「ねえ先生。今度さ、あの子に会いに行くときは、
プリンセス三人と、ただの国語教師一人って紹介してね。
プリンスなんて、もう一人もいないからって」
「約束する」
そう答えたとき、俺はようやく気づいた。
この物語で一番苦しかったのは、
「永遠のプリンセス」でいることを強いられた彼女たち自身だったのだと。
そして、ようやく彼女たちは、自分たちの物語を、自分たちで書き直し始めたのだと。
それは地味で、騒がしくもなくて、ニュースにもならない。
けれど、俺にとっては、何よりも価値のあるハッピーエンドだった。
少なくとも──
誰も、塔から落ちなかったのだから。




