第三章 プリンス捜しゲーム
翌日から、俺は「プリンスは誰か」という視点で、三人を観察し始めた。
鷹宮ユリアは、どこまでも理性的だった。
教師の言葉もクラスメイトの反応も、一度全部分解してから、再構成するような話し方をする。
家の事情で、政財界の人間と幼い頃から顔を合わせてきたらしい。
「プリンスに一番近いのは、たぶん私なのでしょうね」
彼女は冗談めかして言った。
「でも残念。私は自分のことを、臆病者だと思っています。
救い出すより、切り捨てる方を選んできた人間ですから」
九条院沙羅は、誰よりも「弱さ」をよく理解していた。
体が丈夫ではないらしく、体育の授業をよく見学している。
しかし、休み時間になると、ふらふらと別クラスの生徒のところへ行き、
さりげなく相談を受けては、静かにアドバイスをしていた。
「私がプリンスなら、三年前にもっと上手くやっていたと思います」
そう言った時の顔には、後悔の影があった。
霧島玲は、一見一番分かりやすい。
明るくて、おしゃべりで、何にでも首を突っ込む「主人公気質」だ。
けれど、ときおり見せる沈黙と、視線の鋭さは、カメラの前で見せる笑顔とは別物だった。
「ねえ先生。プリンスって、誰かを救ったらそうなるの?」
彼女の質問は唐突で、危うい。
「それとも、誰かを突き落としても、
最後に自分が泣けば、プリンスとして許される?」
俺は答えられなかった。
それが、彼女なりの「自白」かもしれないと気づいたのは、だいぶ後になってからだ。
そんな観察を続けて数日後。
プリンセス棟の黒板に、また新しいメッセージが貼られていた。
「プリンスを決める期限は、一週間後。
間に合わなければ、プリンセスは三人とも、塔から落ちる」
旧館の屋上の見取り図とともに。
その瞬間から、俺は完全に巻き込まれた。もう、引き返す道は消えていた。




