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新たな出会い:兄、来たれり

季節は巡り、新たな出会いの回です。

賑やかな時間と、少しの違和感。

そんな一日になりました。

時間はゆっくりと、しかし着実に進んでいった。

季節は巡り、俺は4歳になっていた。

4歳になれば自分で歩けるのはもちろん、会話もほぼ問題なくできる。

前の世界での記憶がある分、会話に関してはそこまで大変ではなかった。

朝起きてリビングに向かうと、レリーナが朝食の準備をしていた。

「おはよう。お母さん」

「あら、おはようゼイン」

手を止めて挨拶を返すレリーナ。

「お父さんは?」

「用事があって出かけてるの。お昼には戻ってくるわよ」

「そうなんだ。お姉ちゃんは……まだ寝てるよね」

「ふふっ、正解。ゼインもまだ寝てていいのよ?」

「今日はリゼリアと広場までお散歩をする日なんだ。迎えに行くから待たせるのも悪いし」

「あら、そうなの? ふふっ、赤ちゃんの頃から仲良しだものね」

そう言って優しく笑うレリーナ。

美味しい朝食を食べ終え、

「じゃあ、行ってきます」

「いってらっしゃい。あっ、そうだ! リゼリアちゃんに、もし良かったら今日はうちに夕食を食べに来ない?って伝えておいて」

「わかった。伝えておくよ」

「ふふっ、それじゃあ宜しくね」

そう言ってウインクをするレリーナ。

家を出ると、村長――もといリゼリアの家へ向かった。

村長の家だからといって特別豪華というわけではなく、他の家と変わらない佇まいだ。

コン、コン……と2回ノックをすると、ほぼ同時にドアが開き、

「ゼインくん!」

名前を呼びながら、リゼリアが俺の胸に飛び込んできた。

それを俺は後ろへ受け流し……はせずに、しっかりと受け止める。

「リゼリア、急に飛び出したら危ないよ。他の人だったらどうするのさ」

「ノックの仕方で分かるもん! 私がゼインくんのこと間違えるわけないよ!」

胸を張り、自慢げに言う。

今日は甘栗色の髪を三つ編みにしているようだ。

「さすが、赤ちゃんの頃から一緒の幼馴染だな」

「……それだけじゃないもん」

「ん? 何か言ったか?」

「何でもない! じゃあ準備してくるから待っててね」

「わかったよ」

リゼリアは家の中へ戻っていった。

しばらくすると、リゼリアは綺麗な女性と一緒に出てきた。

「おはよう、ゼインくん。お迎えに来てもらってごめんなさいね」

「ラミネさん、おはようございます。気にしないでください。幼馴染のよしみですから」

「ふふっ、ありがとうね。優しい幼馴染がいてよかったわね。赤ちゃんの頃からあんなにべったりだったから」

「もう! お母さん! ゼインくん、行こう!」

リゼリアは俺の手を握ると、そのまま歩き出す。

「おっとっと。じゃあラミネさん、行ってきます」

「はいはい、いってらっしゃい」

ラミネに見送られながら、二人で歩き出した。

「リゼリア、今日はどこに行くの?」

「うーん……そうだ! あそこにあるちょっと高い所は?」

リゼリアが指差した先には、一本の木が生えた小高い丘があった。

「いいね。見晴らしも良さそうだし、そこに行こうか」

「うん!」

リゼリアは元気よく返事をすると、足早に歩き始めた。

15分ほどで丘の上に到着する。

「うわー、いい眺め」

「そうだね。村がほとんど見渡せそうだよ」

「じゃあ、この木がみんなを見てくれてるんだね」

「そうかもしれないね」

そんな他愛もない会話をしていると――

「おーい」

誰かの声がした。

振り向くと、三人の子どもが登ってきていた。

「おっす、ゼイン。リゼリア。元気か?」

「ぜー、ぜー……ちょっと僕は休ませて」

「わ、私もちょっと休憩……」

様々な反応を見せる三人。

元気な短髪少年は宿屋の息子・ヤド。

大の字に倒れた大柄な少年は商人の息子・カンジョウ。

リゼリアの隣で座り込むのが定食屋の娘・サシャ。

三人とも同年代で、よく一緒に遊ぶ仲だ。

「ヤド、どうしたんだ?」

「いや、俺ら三人で遊んでたらよ。ここ登っていく二人が見えたから、一緒に遊ぼうと思ってよ」

「そうなのか。でも二人はそんな体力なさそうだぞ」

カンジョウとサシャを見る。

「僕はしばらく無理だよ」

「私も」

揃って首を振った。

「えー、せっかく遊ぼうと思ったのによ」

「少し休んでから遊べばいいさ」

「そうだな」

ヤドも腰を下ろした。

しばらくして、カンジョウとサシャも回復したようだった。

しかし、リゼリアはどこか不満そうな顔をしている。

「リゼリア、どうしたんだ?」

「……だって、せっかく二人のお散歩だったのに」

(そんなに楽しみにしてくれてたのか)

するとサシャが立ち上がった。

「……そうだ! 私、お手伝い頼まれてたんだった!」

カンジョウの腕をつつく。

「そ、そうだ! 僕もお父さんの手伝いが!」

「えー、じゃあ三人で遊ぼうぜ」

「ヤドは私を手伝って!」

「え?! なんで?」

「いいから!」

サシャはヤドの腕を引き、俺たちにウインクして去っていった。

「……なんだったんだろうな」

「サシャちゃん。出来る女」

リゼリアが感心していた。

その後は二人でのんびり過ごした。

話をしたり、追いかけっこをしたり。

そんな中で思い出す。

「そうだ。お母さんが、良ければ夕食を食べに来ないって言ってたんだけど、どうする?」

「行く!!」

即答だった。

「じゃあ、もう帰ろうか。リゼリアを送っていくときにラミネさんにも話をするよ」

「わかった!」

帰り道、リゼリアは来たときよりも明らかに足取りが軽かった。

リゼリアの家に着き、出迎えてくれたラミネさんに事情を説明する。

するとラミネさんは少し困ったような表情を浮かべた。

「ありがたいけど、今日は難しいわ」

「えっ?! どうして!」

真っ先に声を上げたのはリゼリアだった。

「今日はノルドが帰って来る日なの」

騎士になるために街で衛兵見習いをしているリゼリアの兄が、数日の休みで帰ってくるらしい。

「そうだったんですね。それなら仕方ありません。リゼリア、夕食はまた今度にしよう」

「やだ! 今日はゼインくんの家で食べる!」

間髪入れずに反発してくる。

「でも、初めてお兄さんと会うんだろ? お兄さんも久しぶりに帰ってくるみたいだし、家族水入らずの時間も大切だよ」

「やだ! お兄ちゃんよりゼインくんの方がいい!」

(困ったな……気持ちは嬉しいけど)

「ラミネさんからもお願いします」

そう言うと、ラミネさんはくすりと笑った。

「家族水入らずなんて、ゼインくんは難しい言葉を知ってるのねぇ」

(気にするのそこ?!)

内心でツッコミを入れる。

少し考えたあと、ラミネさんは口を開いた。

「仕方ないわね。じゃあいっそ、私たちとゼインくんの家族とでお食事しましょう。リゼリア、それなら良いんじゃない?」

リゼリアは少し考えて――

「うん! それが良い!」

満面の笑みで答えた。

「じゃあ準備をしておきましょう。ゼインくん、悪いけどヴァッシュさんやレリーナさんにお話しておいてくれる?」

「はい。わかりました」

リゼリアは「また後でね!」と言い残して家の中へ戻っていった。

俺もラミネさんに挨拶をして、家路についた。

家に帰ると、ヴァッシュとレリーナ、そしてミリがいた。

事情を話すと――

「ノルド帰ってくるのか! じゃあ精がつくものを獲ってくるか!」

そう言って剣を手にし、すぐに出かけていった。

「ノルド兄ちゃんが帰ってくるの? 久しぶりだよね!元気にしてたかな」

ミリも嬉しそうに話す。

「ミリは小さい頃、遊んでもらっていたものね。お邪魔じゃなければ一緒にやりましょうか」

「やったぁ!」

ミリは大はしゃぎだ。

(ミリの反応を見るに、良い人なんだろうな)

「リゼリアちゃんも初めて会うのよね。仲良く出来ればいいわねぇ」

「そうだね」

その後、リゼリアの家族とも話し合い、ヴァッシュたちが手合わせで使った広場で食事をすることになった。

俺とレリーナ、ミリが先に広場で準備していると――

「おーい」

声がかかる。

振り向くと、村長とローゼスがやって来ていた。

「あら、村長さんにローゼスさん。今日はお世話になります」

「ハッハッハッ、こちらこそだよ」

「そうですよ。もうすぐラミネとリゼリア、ノルドも来ますよ」

豪快に笑う村長と、柔らかく微笑むローゼス。

「あら? じゃあリゼリアちゃんとの初対面は済んだのね。どうだった? 二人の反応」

「そうじゃなぁ……なんというか」

「まぁ、悪くはなかったですよ。はい」

二人ともどこか歯切れが悪い。

(なんだろう……悪い感じではなさそうだけど)

準備が整った頃。

「お待たせしました〜」

ラミネさんの声が聞こえた。

――と同時に。

「やめてー! 離して!」

リゼリアの叫び声。

何事かと視線を向けると、リゼリアが見知らぬ少年に抱きかかえられていた。

「ハハッ、そう照れなくてもいいよ。お兄ちゃんだよー」

頬ずりまでしている。

(あれが……ノルドか)

「あら〜。リゼリアちゃんはなんとなく予想できたけど、ノルドくんはちょっとだけ予想外ね」

「ハハハッ、そうなんです。妹だから余計に可愛いみたいで」

ローゼスが苦笑する。

ノルドはリゼリアを抱えたまま、

「レリーナさん、お久しぶりです」

と丁寧に挨拶した。

「お久しぶりね。元気そうで安心したわ。頑張ってるみたいね」

「はい。ヴァッシュさんが稽古をつけてくれたおかげです。ところでヴァッシュさんは?」

辺りを見渡す。

「お父さんなら出かけてるよ」

「おっ、ミリちゃん! 大きくなったね」

「ノルド兄ちゃんもね!」

二人は楽しそうに笑い合っている。

――その一方で、抱えられたままのリゼリアの目は死んでいた。

やがてノルドはこちらへ向き直る。

「君がゼインくんだね。妹と仲良くしてくれてありがとう」

「いえ、僕の方こそリゼリアには仲良くしてもらってます」

「ハハッ、聞いていた通りしっかりした子だね。安心して任せられそうだ」

そう笑った瞬間――

「えい!」

リゼリアがノルドの腕から抜け出し、俺の背後へ移動した。

「えー、なんだか傷つくなぁ」

本気でしょんぼりしている。

「リゼリアは人見知りなので、少し時間はかかるかもしれませんが頑張ってください」

「そうだね。ゆっくり距離を縮めるとするよ。ありがとう、ゼインくん」

そう言ってノルドは輪の中へ戻っていった。

「ゼインくん、助けてくれなかった」

ぷくっと頬を膨らませるリゼリア。

「いや、まったく見知らぬ人なら助けるけど、お兄ちゃんだろ?」

「ぶー」

完全に不機嫌だ。

「でも良い人そうじゃないか。少しずつ歩み寄ればいいよ」

「……うん」

渋々ながら納得したようだった。

その時。

「おーい、待たせたな」

ヴァッシュの声が響く。

そちらを見ると、荷車を引いており、その上には大きな獲物が乗っていた。

近づいてきて、ようやくはっきり見える。

「 これは……イノシシ?」

立派な牙、硬そうな毛、形は確かにイノシシ。

だが、大きさが明らかに異常だった。

「ほー! アイアンボアかね? これだけ立派なのは久しぶりだ」

村長が少し興奮気味に言う。

「アイアンって、鉄だよね? どこに鉄の要素があるの?」

レリーナに尋ねると、

「アイアンボアはね、危険が近づくと毛を鉄に変化させる能力があるのよ」

と説明してくれた。

「じゃあ、剣なんか効かないんじゃない?」

「そうね。毛を変化されたらなかなか難しいわね。でも弱点もあるのよ。ここを見て」

指差したのは腹部。

「あっ! 毛がない!」

「そうなの。お腹側は毛がないから剣でも攻撃が通るのよ。もちろん弱点だから簡単には見せてくれないけどね」

(ということは、ヴァッシュも何らかの方法でそこを攻撃したのか)

「お父さんはどうやって倒したの?」

「ん? そうだなぁ……気合かな」

「え?」

「さすがヴァッシュさんですね」

呆れる俺とは対照的に、ノルドは妙に納得していた。

「ノルド! 元気にやってるか? ちゃんと見習い頑張ってるんだろうな?」

「ハハッ、ヴァッシュさんのおかげで、もうすぐ出世できそうです」

「ハッハッハッ、そうかそうか! ならお前がいるうちに手合わせして腕を見てやるよ」

「はい! お願いします!」

(良い師弟関係だな)


「うーん、これだと僕らだけでは食べられそうにないですね」

ローゼスが困ったように呟く。

「だったらみんな呼んじゃえばいいんじゃない?」

「おー、そうだな。来れる者に来てもらって振る舞おうじゃないか」

ラミネさんの提案に村長も乗り気だった。

そこから話が広まるのは早く、あっという間に宴会になった。

もちろん昼間一緒にいたヤド、カンジョウ、サシャも来ている。

サシャとリゼリアは時々何かを話しながら楽しそうにしていた。

――もっとも、時々こちらをちらちら見ていた気もするが。

やがて夜は更け、宴もお開、その時。

カンッカンッカンッ!

不穏な音が響いた。

真っ先にヴァッシュが反応し、駆け出す。

「僕も行きます!」

ノルドもその後を追い、村の出入り口の方向きになろうとしたへと消えていった。

残された村人たちは、すぐさま帰宅を始める。

「じゃあ、私も行くね」

「あぁ、気をつけて」

リゼリアと言葉を交わし、それぞれ家路についた。

――その夜。

ヴァッシュもノルドも、帰ってくることはなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

ノルドが加わり、ほんの少しだけ世界が広がってきました。

最後に鳴ったあの音。

そして帰ってこなかった二人はどうなるのか。

引き続きよろしくお願いします。

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